リクの技量
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目的地に着いたらしい。
リクは車を降りた。
周囲を見回すと、漁村のような雰囲気だ。
海と、係留されている船が見える。
海の反対側は山になっていて、山にそって、住宅の灯りが点々と見える。
車は1軒の家の前に着けられている。
その家は、ごく普通の2階建ての一軒家で、車が乗り入れたところは庭になっており、ところどころ芝生が剥げている。
運転手が入って来た低い鉄の門を閉めた。
背の低い男が、家の鍵を開けてみんなを入れる。
入ってすぐまっすぐに伸びた廊下があり、左右に部屋がある。
一番手前のドアを入ると、そこはリビングダイニングで、対面式のキッチンと割と広いリビングがある。
リビングにはソファとテーブル、テレビが置いてあった。
リクは入口で待たされた。
背の低い男が、厳つい男に「奥に」と言い、厳つい男がリクを奥の方へ連れて行く。
廊下の途中に、2階へ上る階段があった。
リビングの隣のドアを開けると、6畳より少し狭い感じの洋間があり、マットレスが床に直接置かれている。
男はリクをそのまま置いて出て行こうとし、
「逃げるなよ。やってほしいことがある」
と言うと、ドアを閉め、外から鍵をかけた。
外側に鍵がついているということは、初めから監禁するための部屋なのだろう。
リクは部屋を見回した。
窓がある。開けてみると鉄格子がついていた。
家具はマットレス以外何もない。
リクはとりあえずストレッチをした。
ずっと車に乗りっぱなしで体がこわばっていた。
これじゃ、いざという時に動けない。
手は前で拘束されたままだが、できる範囲で体を伸ばした。
「やってほしいこと、ってなんだろう」リクは考えた。
殺しかな…だったら絶対断ろう。
コウさんに叱られる。
リクはコウのことを考え、ホッと力を抜いた。
大丈夫、なんとかなる。
リクはどこまでもポジティブだった。
*****
その頃、コウたちの車は海が見えるところまで来ていた。
念の為、結束バンドのことはシキミたちにも報告している。
シキミの班は、既に目的地のヨットハーバーに到着して、捜索していた。
そこは割といい船が係留されている、見たところ高級なヨットハーバーのようだ。
車をゆっくり走らせながら、左右に目を配る。
怪しい車や人影、灯りがついている船がないか、人が乗っていそうな船がないか、監禁できそうな建物がないか、など目を凝らして探していた。
イオリたちの班もそれから数十分で目的地に着いた。
イオリたちが着いたのは、隣に水族館があるリゾート的な趣の場所だった。
なんだか雰囲気が監禁とはかけ離れている気がする。
そう思いながらも、皆同じように目を凝らして捜索を始めた。
コウはずっと、自分たちが探している場所に近づいている気がしていた。
車を走らせていくうちに、少しずつ町が寂れた雰囲気になってきている。
やがて海に出た。
ヨットハーバーと呼ぶには少しおこがましいような、漁船に近い船が20艇ほど係留されている。
車を目立たない場所に停め、双眼鏡で船を観察する。
灯りがともっている船が1艇だけある。
他には、人が乗って揺れているような船はない。
あれか…。
コウたちは車を降り、周囲に気を配りながら、灯りのともる船に近づいていく。
2人に物陰に隠れるよう指示を出し、コウだけ船の様子を見に行く。
その時だった。
コウを狙ったかのように、コウの足元1メートル先にライフルの銃弾が撃ち込まれた。
アガタが「大丈夫か」と叫ぶ。
「大丈夫だ」と答え、コウはすぐにどこから狙われたのかを探す。
あの家か…コウが目を向けた先に、ライフルを上に向けて撃つ者が見えた。
コウは笑った。
さすがだな。
「みつけたぞ!」
コウがナツに向かって叫びながら走り出す。
ナツとアガタもコウに続いた。
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15分程遡る。
背の低い男がリクのいる部屋へ入ってきた。
「ここから狙ってもらいたい奴がいる」
リクは、やっぱりか、と思い、
「お断りします」
と言った。
「殺さなくてもいい。ライフルをぶち込んで脅すだけでいいんだ」
男は言う。
「それなら、俺じゃなくてもできるんじゃないんですか」
リクが言う。
男は黙ってリクを見る。
本当はリクの腕前を試したかったのだが、そう言うとかえってこじらせそうなので言わずにいた。
どうすれば、リクに撃たせることができるだろうか…。
「ナツっていったかな、君の仲間」
リクは表情を殺す。
「あの子、きれいな顔をしているよね」
リクは必死で我慢する。
「今、あのマンションにいるのかな」
リクは考えた。
俺が拉致されたとわかった時点で、ナツが保護されていないわけがない。
はったりだ。
リクは相変わらず表情を変えない。
「まあ、いいさ、これからいくらでもチャンスはある。
君が今言うことを聞くだけでそれが回避されるんだけどね」
男がそう言うと、やっとリクが顔を上げた。
「いいですよ。やります」
リクには考えがあった。
拘束を解かれ、ライフルを持たされるのであれば、こちらの方が有利だ。
男たちはリクを2階のベランダへ連れていく。
そこから海に係留されている船が見える。
船までは100メートルくらいか、暗いので肉眼では見えにくい。
「あの中に、1つだけ灯りがついてる船があるだろ。
あれを狙ってほしい。
人が見えれば、人を撃つ。見えなければ窓を割ってくれればいい」
リクを拘束していた結束バンドを切り、ライフルを渡す。
厳つい男がリクの後ろから銃でリクを狙っている。
変な動きをしたらすぐに撃たれるだろう。
リクがライフルのスコープを覗きこむ。
船に狙いを定めようとしたその時、船の手前に何かが動くのが見えた。黒っぽい何か…。
リクはニヤリとした。
リクは腰を落とし、狙いを定め、ライフルの引き金を引いた。
「あ」と後ろで声がした。
「すみません、外しました」
リクが言い、立ち上がりざまに銃を持った男にぶつかる。
そして空へ向けてライフルを一発発射したのだった。
「こいつ!」
男がリクに向かって毒づく。
しかし、リクはその時はもう階段へ向かっていた。
リクが通り過ぎたところへ銃弾が飛んでくる。
リクはすぐに玄関に向かう。
するとリビングから運転手の男が出てきて、驚きながらもリクの腕をつかんだ。
リクは掴まれた腕をひねり、反対の腕を男の首に巻き付ける。
そのまま玄関の方へ後ずさる。
2階から男たちが降りてきて、厳つい男が銃を構えている。
リクは運転手を盾にして、後ずさる。
その時、玄関が開き、厳つい男と背の低い男の2人があっという間に倒れた。
そして、リクは後ろから抱きかかえられ、運転手と引きはがされる。
運転手もすぐに撃たれて倒れた。
リクが振り返ると、コウの顔があった。
「リク…大丈夫か、怪我はないか」
コウが心配そうに聞く。
すぐにナツが来て、リクを抱き締めた。
アガタは「あれ、もう終わってる」と言って、残念がっている。
リクは震えていた。
今まで大丈夫だったのに、みんなの顔を見たら震えが止まらなくなった。
ナツがリクを離さない。
リクが「大丈夫だよ」と言っても、ナツはリクを離すことができなかった。
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