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リクの捜索④

*****


リクが乗せられた車は東へ走り続けていた。


2時間ほど走り続けた頃、道の駅らしき駐車場に入って停まった。

「休憩な」

そう言って運転手は車を出た。


あとの2人も交代でトイレにいこうとしている。

「俺もトイレに行きたいんですけど」

リクが言うと、

「ああ、俺が連れて行く」と厳つい男が言った。


車を降りた時に、リクが

「これ、せめて前にしてくれませんか」

と、拘束されている手を示した。


男は何も言わず車から結束バンドを持ってきて、後ろのバンドを切り、前で拘束し直した。

「ありがとうございます」

リクが礼を言うと、男は意外そうな顔をしてリクを見た。

そりゃそうだ、拘束されているのに礼を言うなんて、リクくらいのものだ。


みんながトイレを済ませて、運転手が煙草を吸い終わってから、また発車した。


リクは、今逃げようと思えば逃げられた。

前で拘束されている結束バンドは、膝を使うとすぐに切ることができるし、3人と比べたら足の速さはリクの方が上だろうという自信はあった。


しかし、ここで逃げてもコウたちに連絡する手段はない。

ここがどこかもわからない。

もう少し待つか、目的地まで行った方がいいかもしれない。

リクはそう判断した。


*****


調査部がめぼしいヨットハーバーをピックアップした。

3時間で行ける場所はいくつかあるが、方角がバラバラなので絞り込むのが難しい。


外国人の男の名前はグエン・ティ・ズンという。

発音が難しく聞き取りにくかったので、ズンと呼ぶことにした。


ズンには、コウが撃った足のケガもあるので、しばらくここにいて協力してもらうことになった。


ズンのような、日雇いの見張りを雇うくらいなので、実際ソリマチは人手不足なのだろう。

リクの能力があれば、喉から手が出るくらいほしいことがわかる。


ズンにリクが乗った車の車種やナンバーを覚えていないか聞いてみたが、車は黒でセダン、ということしかわからなかった。


しかし、拉致して連れ去っても、リクが言うことを聞くはずがない。

そこをどう考えているのか、どういう策があるのか、どうせ卑怯な手を使うに決まっているが、それゆえに対応が難しい。


とにかく場所を特定することが先決だ。

社長が最終手段ということで、海外出張中のユゲに連絡を取った。



ユゲから折り返しがあったのは、1時間ほどしてからだった。

「私、マジで懲戒処分かも」

そう言いながら送ってくれたデータは、爆破前にあの建物から出て行った車の衛星写真だった。


「おおーっ」

とみんなが叫ぶ。


「ユゲ、お手柄だ!

懲戒処分を受けないよう、全力を尽くすから」

社長がそう言うと、

「頼みます」

と言って、ユゲはあっさり電話を切った。


衛星写真は何枚かあり、ところどころで同じ車が撮られていた。


「東だな」

タニが言うと、調査部が東方面にあるヨットハーバーを絞り込む。


「ヨットハーバーだとしたら、この中のどれかだ」


「とにかく向かおう。

ここらへんまで一緒に行って、あとは3班に分かれる。

いいか」

コウが言うと、皆が頷く。


車3台で出発した。


リクがあの建物を出てから、すでに3時間は経っている。

予定通りなら、向こうは既に目的地に到着しているはずだ。


リクを傷つけるとは考えられないし、リクも訓練を重ねてきている。

いざとなれば自分の身は守れるだろう。


それよりも…とコウは思う。

囚われている、ということがとにかく気に入らない。

リクがやっと自由を手に入れた矢先にこんなこと、決して許さない。


ナツも同じ気持ちなのだろう。

ずっと拳を握り続けている。


「もう少しだ、もう少しでリクに辿り着くからな」

コウは微笑みながら、ナツに言葉をかけた。


ナツはふっと力を抜いて、

「そうだな、みんながいるからな」

そう言うと、ニカッと笑った。


1時間ほど経って、最初の目的地に着き、3台が停車する。

コウがタニに電話する。

「どのヨットハーバーか、見当は?」


「船を調べてみたが、ソリマチに関係した船はどこにもない。

ヨットハーバー近くの建物も探ったが、何も出てこない」


「周辺の防犯カメラはどうだ」


「ああ、それも今片っ端から見ていってる。

老人会も総動員だ」


「そうか、頼む」

コウは電話を切ると、シキミに向かって、

「どう思う?」と尋ねる。


「うん、防犯カメラのどれかには映っているだろうが、時間がかかるな。

やはり手分けするか」


「ああ」コウが答え、予定通り3班に分かれて出発した。

コウの車に、ナツとアガタ

シキミの車に、オキとレイ

イオリ、タマキとザビ


コウがしばらく運転していると、珍しくアガタが交代すると申し出た。

ありがたく交代することにして、駐車場に停まる。


コウが車を降りた時、何かが目についた。

何か、大事なもの…見過ごすべきではないもの…。

「あっ」とコウが小さく叫ぶ。


アガタが、どうした、とコウを見る。

コウが何かを拾うのを見ている。


「これ、結束バンドを切ったやつだよな。

リクが拘束されてやつかもしれねぇ」

コウが言うと、アガタが

「あー、そうかもしれねぇけど、よくあるやつだしな。

そうとは限らねぇんじゃないか」と言う。


「いや、ここでトイレをするのに、一旦切らせたのかもしれない」

コウは、こじつけかもしれないことは重々承知していた。

しかし、今は何でもいいから手掛かりが欲しかったのだ。


「わからんが、もしもそうだとしたら、俺たちが行く場所が合ってるということだ。

よし、出発するぞ。

アガタ、飛ばせ」


「オッケー!」

アガタは水を得た魚のように、車を急発進させた。


*****


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