三浦との面会
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「中国から報告は?」
コウがタニに聞く。
「まだ」タニも心配そうに答える。
当然、呉と三浦の件である。
呉とシキミが中国へ発ってから10日になる。
呉のことだから、慎重に進めているのだろう。
デリケートな問題なので、ちょっとでも間違いがあれば超超面倒くさいことになる。
しかし、こちらもナツの命運がかかっているので、悠長にもしていられない、というのが本音なのだ。
「じゃ『ソリマチ』の動きは?」
コウが更に聞く。
「うーん、こっちも怪しいんだよね。
殺し屋の引き抜きを始めたって噂が出ててさ…
ただ、噂だけで、引き抜きをされた殺し屋とかの名前も出てこんし…
なんか偽の情報ばらまいて煙に巻いてるというか、わざと混乱させてる感が否めん」
タニがぼやく。
「ユゲとかわかんないのかな」
コウが言う。
「調べてもらってる。公安の知り合いに探りを入れてみるって言ってた」
「そっか」
待つしかないか…とコウは呟く。
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呉とシキミは中国の北京にいた。
李の右腕とされていた三浦隼人は、李が日本を拠点にしてからは中国の事業を任されていたため、李が殺されても、すぐに困ることはなかった。
取引相手から足元を見られることはあったが、三浦は強気の取引で事業を上手く続けている様子である。
つまり、三浦がナツを欲しがる要素はなさそうに見える。
あとは直接確認をするだけだ。
呉は、昔から裏のつながりのある人物を使って、三浦と面会できるよう取り計らってもらった。
三浦の事務所へ行く。
北京の中でも高層ビルの立ち並ぶ一角、さぞや立派な事務所だろうと思っていたが、開発から忘れ去られたような、古い5階建てのビルの5階に、それはあった。
おそらくいくつかある拠点の中の1つだろう。
呉とシキミは身体検査をされたが、ここに武器を持ち込むほど愚かではない。
呉は三浦に面会の礼を述べ、自分の立場を正直に明かす。
三浦は事前に調べていたのだろう、呉を歓迎し、古いソファに座らせる。
シキミは呉の後ろに立っていた。
「単刀直入にお尋ねします。
李さん亡きあと、中国の事業は三浦さんが回しているとのこと。事業は完全に引き継がれたのでしょうか」
呉が尋ねる。
「はい、以前よりやっていたことは変わりません。
李会長は残念でしたが、事業は滞りなく回っていますよ」
三浦がはっきりと言う。
「では、誰かが持っている情報を欲している、ということはない、ということでしょうか」
三浦は少し間をおいて答える。
「…ナツ…のことですね」
「はい」
三浦は何かを思い出すように話し出す。
「ナツは李会長に気に入られていました。
いつも一緒にいたので、知らないことはないでしょう。
ただ、それは日本でのことです。中国での事業と日本のとでは違います。
中国の事業は、最近は李会長は関わることが減ってきていました。
日本の事業に力を入れたかったのでしょう。
ですから、はっきり申し上げて、ナツが持つ情報は中国では、私どもには、不要なのですよ」
三浦は続ける。
「しかしね…」
言い淀む。
「しかし、日本の事業にとっては、もしかしたらナツの情報は何としても手に入れたいもの、かもしれません」
「例えば、どんな情報でしょうか」
呉は、三浦が答えてくれるかどうか…と思いながら尋ねてみる。
「『武器』でしょう」
三浦が答える。
「麻薬、人身売買、不動産詐欺、これらは私たちのような者はみんなやってることです。
ただし、日本では武器の需要は少ない。
少ないが、他国から他国へ流すだけでも儲けは大きい。
しかしその事業は、李会長はおそらく個人でやっていた。
きっと、いずれナツにやらせるつもりだったんじゃないかと思います。
李会長が亡くなってから、日本の秦が、私に聞いてきましたよ」
そして三浦は、まるで大事なことを告げるかのように、ゆっくりと、
「中国では武器も扱かってるのか、ってね」
三浦は、ここで両手を広げた。
これ以上は言えないということだろう。
十分だ。
呉はすぐに社長に報告しなければ、と思った。
三浦に丁寧に礼を言い、事務所を後にしようとした時、三浦が言った。
「ナツはどうしてますか?」
シキミが警戒した。
呉がニコリと笑って「我々が守ってますよ」と言うと、三浦は「それはよかった」と一言言った。
2人は、その一言が、心からの気持ちのように感じた。
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呉がホテルから社長に電話をかけると、
「ちょっと待て」と言って、タニとコウを呼んだ。
呉は三浦とのやりとりを話した。
コウたちは黙って聞いていた。
「狙ってるのは、秦ということか」
呉が話し終わると、コウが言う。
呉は、
「三浦はそう考えているようでした。
鵜呑みにはできないですけどね」
と言う。
「ややこしいな、全く」
タニがまたぼやく。
皆が同意する。
「前にナツが済んでたマンションを襲って、コウが返り討ちにした奴ら、あいつらは秦の手の者だったんだよな」
タニが言う。
「あのタイミングだったら、そうだろうな」
コウが頷く。
「じゃあ、やっぱり秦がナツを狙ってるってことは間違いないんじゃねぇか」
タニがそう言うと、
「だな」
コウも同意する。
「タニ、秦の右腕って言ったら誰だ?」
社長が聞く。
「おそらく、椿原って奴でしょう。
李がいる時は目立ちませんでしたが、最近やたらと秦の横にいるようです」
タニが答える。
「そいつに聞いてみようか」
社長が言う。
「ザビにやらせますか?」
タニが聞く。
「そうだね、あと何人かつけてあげて」
社長がそう言うと、話は終わった。
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