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三浦との面会

*****


「中国から報告は?」

コウがタニに聞く。


「まだ」タニも心配そうに答える。


当然、呉と三浦の件である。

呉とシキミが中国へ発ってから10日になる。

呉のことだから、慎重に進めているのだろう。

デリケートな問題なので、ちょっとでも間違いがあれば超超面倒くさいことになる。


しかし、こちらもナツの命運がかかっているので、悠長にもしていられない、というのが本音なのだ。


「じゃ『ソリマチ』の動きは?」

コウが更に聞く。


「うーん、こっちも怪しいんだよね。

殺し屋の引き抜きを始めたって噂が出ててさ…

ただ、噂だけで、引き抜きをされた殺し屋とかの名前も出てこんし…

なんか偽の情報ばらまいて煙に巻いてるというか、わざと混乱させてる感が否めん」

タニがぼやく。


「ユゲとかわかんないのかな」

コウが言う。


「調べてもらってる。公安の知り合いに探りを入れてみるって言ってた」


「そっか」

待つしかないか…とコウは呟く。



*****



呉とシキミは中国の北京にいた。


李の右腕とされていた三浦隼人は、李が日本を拠点にしてからは中国の事業を任されていたため、李が殺されても、すぐに困ることはなかった。

取引相手から足元を見られることはあったが、三浦は強気の取引で事業を上手く続けている様子である。


つまり、三浦がナツを欲しがる要素はなさそうに見える。

あとは直接確認をするだけだ。


呉は、昔から裏のつながりのある人物を使って、三浦と面会できるよう取り計らってもらった。

三浦の事務所へ行く。


北京の中でも高層ビルの立ち並ぶ一角、さぞや立派な事務所だろうと思っていたが、開発から忘れ去られたような、古い5階建てのビルの5階に、それはあった。

おそらくいくつかある拠点の中の1つだろう。


呉とシキミは身体検査をされたが、ここに武器を持ち込むほど愚かではない。

呉は三浦に面会の礼を述べ、自分の立場を正直に明かす。


三浦は事前に調べていたのだろう、呉を歓迎し、古いソファに座らせる。

シキミは呉の後ろに立っていた。


「単刀直入にお尋ねします。

李さん亡きあと、中国の事業は三浦さんが回しているとのこと。事業は完全に引き継がれたのでしょうか」

呉が尋ねる。


「はい、以前よりやっていたことは変わりません。

李会長は残念でしたが、事業は滞りなく回っていますよ」

三浦がはっきりと言う。


「では、誰かが持っている情報を欲している、ということはない、ということでしょうか」


三浦は少し間をおいて答える。

「…ナツ…のことですね」


「はい」


三浦は何かを思い出すように話し出す。

「ナツは李会長に気に入られていました。

いつも一緒にいたので、知らないことはないでしょう。

ただ、それは日本でのことです。中国での事業と日本のとでは違います。

中国の事業は、最近は李会長は関わることが減ってきていました。

日本の事業に力を入れたかったのでしょう。

ですから、はっきり申し上げて、ナツが持つ情報は中国では、私どもには、不要なのですよ」


三浦は続ける。

「しかしね…」

言い淀む。

「しかし、日本の事業にとっては、もしかしたらナツの情報は何としても手に入れたいもの、かもしれません」


「例えば、どんな情報でしょうか」

呉は、三浦が答えてくれるかどうか…と思いながら尋ねてみる。


「『武器』でしょう」

三浦が答える。


「麻薬、人身売買、不動産詐欺、これらは私たちのような者はみんなやってることです。

ただし、日本では武器の需要は少ない。

少ないが、他国から他国へ流すだけでも儲けは大きい。


しかしその事業は、李会長はおそらく個人でやっていた。

きっと、いずれナツにやらせるつもりだったんじゃないかと思います。

李会長が亡くなってから、日本の秦が、私に聞いてきましたよ」


そして三浦は、まるで大事なことを告げるかのように、ゆっくりと、

「中国では武器も扱かってるのか、ってね」


三浦は、ここで両手を広げた。

これ以上は言えないということだろう。


十分だ。

呉はすぐに社長に報告しなければ、と思った。


三浦に丁寧に礼を言い、事務所を後にしようとした時、三浦が言った。

「ナツはどうしてますか?」


シキミが警戒した。

呉がニコリと笑って「我々が守ってますよ」と言うと、三浦は「それはよかった」と一言言った。

2人は、その一言が、心からの気持ちのように感じた。


*****


呉がホテルから社長に電話をかけると、

「ちょっと待て」と言って、タニとコウを呼んだ。


呉は三浦とのやりとりを話した。

コウたちは黙って聞いていた。


「狙ってるのは、秦ということか」

呉が話し終わると、コウが言う。


呉は、

「三浦はそう考えているようでした。

鵜呑みにはできないですけどね」

と言う。


「ややこしいな、全く」

タニがまたぼやく。

皆が同意する。


「前にナツが済んでたマンションを襲って、コウが返り討ちにした奴ら、あいつらは秦の手の者だったんだよな」

タニが言う。


「あのタイミングだったら、そうだろうな」

コウが頷く。


「じゃあ、やっぱり秦がナツを狙ってるってことは間違いないんじゃねぇか」

タニがそう言うと、

「だな」

コウも同意する。


「タニ、秦の右腕って言ったら誰だ?」

社長が聞く。


「おそらく、椿原って奴でしょう。

李がいる時は目立ちませんでしたが、最近やたらと秦の横にいるようです」

タニが答える。


「そいつに聞いてみようか」

社長が言う。


「ザビにやらせますか?」

タニが聞く。


「そうだね、あと何人かつけてあげて」

社長がそう言うと、話は終わった。


*****


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