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ファッションショーで仕事

*****


呉がシキミを連れて中国へ発った。

うまく情報が引き出せればいいのだが、皆がそう期待して待つ。


その間にも、依頼は来る。


タニが説明を始める。

「大手アパレル会社の社長が、パワハラで訴えられていた。

この女性社長は、取引先の男性営業マンを、仕事を餌に自分のペット化していた。

営業マンも最初は仕事のために我慢していたが、彼女ができて社長との関係を清算したいと考え、社長に伝えたところ、逆に脅された。

で、営業マンは社長をパワハラで訴えた、というわけだ」


「うん」

コウが全く興味なさそうに頷く。


タニは続ける。

「訴えられた社長は、怒りのあまり営業マンとその彼女を襲わせた。

殺すつもりはなかったんだろうが、彼女が運悪く死んでしまった。

営業マンは彼女の死を受け入れられず、精神科に入院している」


「うん」

コウがまだ話が終わらないのかとタニを見る。

タニはわざと話を長くしているのではないか、と思っている。


「で、ターゲットは当然、社長。依頼人は営業マンとその彼女の家族、です」

タニが締め括る。


「長いよ」

コウがうんざりした顔で言う。

「その情報、全部必要?」


「必要でしょう」

タニが当然、と言わんばかりに言い切る。


「社長って、ボディーガードとかいるの?」

コウが聞く。


「いる。その2人を襲った奴らだね」


「じゃあ、一緒に殺ってもいいんじゃないの」

コウがさらっと言う。


「まあ、依頼にはないけど、ダメじゃないよね」

タニも言う。


「何人?」


「4~5人かな」


「オッケー、じゃリクとやるわ」

コウがそう言って、タニとのやりとりを終わらせようとすると、


「コウさ、この前呉さんといいとこ行ったんだって?」

さすが情報通のタニだ。絶対呉からの情報ではないだろう。

コウはしれっと通信を切った。



リクを部屋へ呼び、打ち合わせをする。

ターゲットの社長と、おまけのボディーガード4~5人。

何故ボディーガードの人数がはっきりしないのかわからないが、まあどちらでも変わらないだろう。


どうやるか。

調査部からの情報では、アパレルブランドだけあって、頻繁に小規模なファッションショーは開催しているらしい。

その時にバックヤードや控室はごった返しているだろうから、狙い目かもしれない。


そこらへんの事情をよく知る者と話したいとタニに要請すると、すぐに紹介があった。

なんとボディーガードの中の1人が、実は国税庁の国税査察部、いわゆるマルサだったのだ。

だから4~5人か…本物のボディーガードは4人というわけか。


マルサの男は椿という。

当然、殺しのことは椿には言わない。

いずれわかるだろうが、証拠は何もない。


椿からの情報では、ファッションショーの間、社長は控室におり、ドアの外にボディーガードが2人立っている。

あとの2人はショーの会場が見渡せる場所にいるという。


リクと二手に分かれればちょうどいい。

「リク、会場の方の奴らを一人ずつそっと殺ってくれる? あまり血が出ない方がいいな」

コウが言うと、


「じゃあ、絞めます」とリクが答える。

リクは華奢だが、見かけによらず力がある。


「オッケー、抵抗されたら撃っていいから」

コウが言うと、

すぐに「はい」と答える。


「で、おれが控室でボディーガード2人と社長を殺る。

あ、俺の方が簡単だな、リク、いい?」


「大丈夫です」

リクは頼もしく頷く。


こうして段取りが終わった。


*****


ファッションショーが開催される日の3日前。

コウとリクは会場の下見に来た。

その日は会場は何も使われておらず、閑散としている。


入口と出口、会場、控室、通路などを確認し、頭に入れる。

当日は想定外のことが起こるものなので、臨機応変に対応すべく、予定にない場所も確認しておく。


一通り見終わって、外に出る。

通りはアパレルブランドの店舗が並んでいる。


「リク、当日はきちんとした服を着てた方が目立たないから、服を買ってやるよ」

コウが言い、メンズのスーツなどが置いてある店に入る。

リクは慣れない場所なので、少し挙動不審になりながらも、コウに続いて入って行く。


「リクはバランスがいいから、何でも似合うと思うんだよね」

コウが言いながら、服を見ていく。


店員がリクを見て、似合いそうな服を出してきてくれる。

リクは言われるがまま、何度か試着をし、やっと自分がしっくりくるものを選ぶことができた。

3セット買ってもらい、店員に頭をさげられながら店を出る。


「コウさん、こんなに買ってもらって、ありがとうございます」

リクが恐縮してお礼を言う。


「前から思ってたんだよ。買ってあげたいなって。

普段着や仕事着はいつものでいいけど、ちょっといい服も持ってたら何かの時に使えるからね。

今度はナツのも買ってあげような」

コウが言い、リクが嬉しそうにコクコクと頷いた。



ファッションショー当日。

コウとナツはおしゃれをして、まるでショーを見に来たかのように会場入りをする。

ショーは1時間ほどの予定なので、決行は始まってから30分と決めていた。


ショーが始まった。

予定通り、会場の後方の左右に1人ずつ黒いスーツを着たボディーガードが立っている。


25分経った頃、リクは席を立ち、トイレに行くふりをして会場のドアに向かう。

まず2人のうち、少し後ろに立っている奴の後ろに回り、腕を首に回して引き倒し、グイっと絞める。

男はリクの腕を振り払おうとするが、リクは締め続ける。

しばらくのち、男はぐったりと動かなくなった。

リクは男の鼻に指を近づけ、息をしていないことを確認する。


次に一度会場を出て、違う扉から入り、もう一人の男の後ろに回り、同じように絞める。

今度は少し大柄な奴だったので、リクも簡単にはいかない。

力では負けると判断し、リクは腕を外すと同時にサイレンサー付きのベレッタで男の心臓を撃つ。

音楽が鳴り響いているので、銃声には誰も気づかない。

男は動かなくなった。



コウは会場から出ると、控室へ続く通路を歩いていく。

途中、スタッフ証を首から下げた何人かとすれ違うが、コウがきちんとした身なりで堂々としているので、誰も部外者とは思わない。


控室の前にはやはりボディーガードが2人立っている。

他にもスタッフがたまに通りかかる。


通路でやるのは無理、と判断し、コウはボディーガードに話しかける。

「すみません、お約束はないのですが、以前社長と懇意にさせていただいた工藤という者です。

ご挨拶だけさせていただきたいのですが」

丁寧にお願いすると、社長に聞いてみると言ってボディーガードがドアを開ける。


ドアの隙間から、社長に微笑みかけると、社長が中へ入るよう言う。

ボディーガードの1人も一緒に入る。


まず、ボディーガードを撃つ。

次に笑みをまだ顔に貼りつかせたままの社長を撃つ。

ドアを開け、もう1人のボディーガードに部屋の中を見せ、驚いて入って来たところを撃つ。


瞬殺である。10秒ほどの仕事だった。


控室をそっと出る。幸い誰もいない。

通路を来た方向へ歩く。


会場の出口でちょうどリクと合流する。

リクの顔を見て、完了したとわかる。

コウが微笑み、2人は会場をあとにした。


*****


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