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ナツを狙うもの

*****


コウとナツが2人でやった仕事の翌日、コウはリクを会社の自室に呼んでいた。


「昨日、ナツと話した?」

コーヒーを淹れながら、コウがリクに尋ねる。


「はい、仕事から帰ってくるまで起きて待ってたんですけど、

帰ってくるなり、話し始めて…」

リクが思い出して微笑みながら話す。


「『殺した後に、血が飛び散るのを見て、どうしようと思った』って。

『取り返しのつかないことをしたんじゃないか、とか間違ったことをしたんじゃないか、とか思った』って言ってました。

でも、コウさんが、

『気持ちを否定しなくていい』って、『甘んじて受け入れろ』って。

楽になったって言ってました。

ただ、まだその感情をコントロールできないって…」

リクは最後は少し心配そうに言った。


「そうか。そこまでリクに話したんなら、安心だな」

コウが言う。


「え?」リクが首を傾げる。


コウはリクの髪に手をかける。

そっと髪を梳いて、続ける。

「自分の感情を消化できない時は、俺かリクに話せばいいって言ったんだよ。

1人で抱え込んだら、先に進めないからな。

だから、リクにそこまで自分の気持ちを話せたんなら、上出来だ」


リクは嬉しそうに微笑んだ。


「ナツには続けては殺しはさせない。少しずつ慣れさせようと思ってる。

まだ傷が癒えてなさそうだからな。

リクは、ナツの話を聞いてあげてくれな」


コウがそう言うと、リクは「はい」と答える。


「リクは…無理してないか?」

コウがリクの目をじっと見る目て問いかける。


「俺は…大丈夫です。支えがあるので」

リクが珍しくニッコリと笑う。


そして、コウとのまったりした時間を堪能するのだった。


*****


数日後、ナツの案件の進捗があるというので、コウが会社に呼ばれた。


「どこまでわかったの?」

コウが尋ねる。


「大まかな組織図はわかった」

そういうと、タニがモニターに映し出す。


「李の後釜がこいつ、三浦隼人。もともと中国での李の右腕だった奴で、李が日本に滞在するようになってからは、中国の事業はほとんどこいつが任されてた。

ナツは日本での右腕みたいな扱いだったが、李にとっては三浦とナツでは扱いが違った。

ナツは可愛がられていたようだしな。いろんな意味で」

ここまで話すと、タニは苦々しい顔をして言葉を切った。


「当然、三浦はナツのことをよく思ってなかっただろうな。

そして、日本の事業はまた違う。

日本の事業内容をよく知る奴はこっち、秦啓介。

李はナツに指示を出し、ナツが秦にその指示を下していた。

実際に手足として動くのは秦だった。

だから、秦も当然ナツのことをよく思ってなかったはずだな」


「李はナツが孤立するよう仕向けてたんだな。囲い込んで…」

コウが表情を殺して呟く。


「直接ナツと接触していたのは、三浦と秦の2人。

ただし、任されていたのは『ほとんど』だ。『全て』じゃあない。

だからリクが欲しいんだろうさ」


「そして、おそらくその2人に指示を受けていた部下の何人かと、あとは護衛たちだな、ナツを知っていたのは」

タニがまとめる。


「さて、どう動く?」

コウが誰ともなしに問う。


「上からやるか、下からやるか…だな。

俺は先に上の2人を潰した方がいいと思う。

2人を殺れば、下は混乱するだろう。あとはまとめて一気にいけるんじゃないか」

コウが言う。


「うん…」

普段はコウの言うとおりにすぐ決断する社長が、珍しく考え込んでいる。


「まだ何かあるのか?」

コウが訝る。


「いや、そうじゃないんだ。

ただの勘というか、何と言うか…すっきりしないんだよ。

俺たちは、李の後釜がナツを狙っている、という情報を得たから動いていたが、それにしては奴らの動きがあまり見えない。

なあ、タニ」

社長がタニに問いかける。


「確かに。

実際、ナツの情報がなくても、事業はやっていけてるようだしな」

タニも答える。


「すまんな、今更ながらこんなこと言いだして」

社長が困ったように言う。


「いや」と言って、コウは考える。

もし三浦たちが何もしていないとすると、一体誰がわざわざそんな情報を流すか…。

ナツの情報を知っている、ということは…同業者か…。

俺たちに三浦たちを潰させたいのか、それとも俺たちを潰したい奴らがいるのか…。


「社長、俺たちを潰したい奴らがいるとしたら、誰?」

コウが尋ねる。


社長も同じ考えに行きついていたらしく、

「まあ、たくさんいるだろうが、『ソリマチ』だろうな。

あそこは腕が悪いって評判だからな、お前たちが欲しいんだろう」


社長が決断したように言う。

「じゃあ、とりあえず2本立てで行こうか。

ナツの監視は続けて、裏で三浦たちと接触を図ってみる。呉にやらせるのがいいかもしれないな。


『ソリマチ』が仕掛けてるのだとすると、俺たちがすぐに動かなければ、しびれを切らして動いてくるかもしれないしな」

社長がそう言うと、タニとコウは納得して頷く。


「それまではのんびり仕事でもしときますか」

コウが言い、会議は終わった。


*****


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