ナツを狙うもの
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コウとナツが2人でやった仕事の翌日、コウはリクを会社の自室に呼んでいた。
「昨日、ナツと話した?」
コーヒーを淹れながら、コウがリクに尋ねる。
「はい、仕事から帰ってくるまで起きて待ってたんですけど、
帰ってくるなり、話し始めて…」
リクが思い出して微笑みながら話す。
「『殺した後に、血が飛び散るのを見て、どうしようと思った』って。
『取り返しのつかないことをしたんじゃないか、とか間違ったことをしたんじゃないか、とか思った』って言ってました。
でも、コウさんが、
『気持ちを否定しなくていい』って、『甘んじて受け入れろ』って。
楽になったって言ってました。
ただ、まだその感情をコントロールできないって…」
リクは最後は少し心配そうに言った。
「そうか。そこまでリクに話したんなら、安心だな」
コウが言う。
「え?」リクが首を傾げる。
コウはリクの髪に手をかける。
そっと髪を梳いて、続ける。
「自分の感情を消化できない時は、俺かリクに話せばいいって言ったんだよ。
1人で抱え込んだら、先に進めないからな。
だから、リクにそこまで自分の気持ちを話せたんなら、上出来だ」
リクは嬉しそうに微笑んだ。
「ナツには続けては殺しはさせない。少しずつ慣れさせようと思ってる。
まだ傷が癒えてなさそうだからな。
リクは、ナツの話を聞いてあげてくれな」
コウがそう言うと、リクは「はい」と答える。
「リクは…無理してないか?」
コウがリクの目をじっと見る目て問いかける。
「俺は…大丈夫です。支えがあるので」
リクが珍しくニッコリと笑う。
そして、コウとのまったりした時間を堪能するのだった。
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数日後、ナツの案件の進捗があるというので、コウが会社に呼ばれた。
「どこまでわかったの?」
コウが尋ねる。
「大まかな組織図はわかった」
そういうと、タニがモニターに映し出す。
「李の後釜がこいつ、三浦隼人。もともと中国での李の右腕だった奴で、李が日本に滞在するようになってからは、中国の事業はほとんどこいつが任されてた。
ナツは日本での右腕みたいな扱いだったが、李にとっては三浦とナツでは扱いが違った。
ナツは可愛がられていたようだしな。いろんな意味で」
ここまで話すと、タニは苦々しい顔をして言葉を切った。
「当然、三浦はナツのことをよく思ってなかっただろうな。
そして、日本の事業はまた違う。
日本の事業内容をよく知る奴はこっち、秦啓介。
李はナツに指示を出し、ナツが秦にその指示を下していた。
実際に手足として動くのは秦だった。
だから、秦も当然ナツのことをよく思ってなかったはずだな」
「李はナツが孤立するよう仕向けてたんだな。囲い込んで…」
コウが表情を殺して呟く。
「直接ナツと接触していたのは、三浦と秦の2人。
ただし、任されていたのは『ほとんど』だ。『全て』じゃあない。
だからリクが欲しいんだろうさ」
「そして、おそらくその2人に指示を受けていた部下の何人かと、あとは護衛たちだな、ナツを知っていたのは」
タニがまとめる。
「さて、どう動く?」
コウが誰ともなしに問う。
「上からやるか、下からやるか…だな。
俺は先に上の2人を潰した方がいいと思う。
2人を殺れば、下は混乱するだろう。あとはまとめて一気にいけるんじゃないか」
コウが言う。
「うん…」
普段はコウの言うとおりにすぐ決断する社長が、珍しく考え込んでいる。
「まだ何かあるのか?」
コウが訝る。
「いや、そうじゃないんだ。
ただの勘というか、何と言うか…すっきりしないんだよ。
俺たちは、李の後釜がナツを狙っている、という情報を得たから動いていたが、それにしては奴らの動きがあまり見えない。
なあ、タニ」
社長がタニに問いかける。
「確かに。
実際、ナツの情報がなくても、事業はやっていけてるようだしな」
タニも答える。
「すまんな、今更ながらこんなこと言いだして」
社長が困ったように言う。
「いや」と言って、コウは考える。
もし三浦たちが何もしていないとすると、一体誰がわざわざそんな情報を流すか…。
ナツの情報を知っている、ということは…同業者か…。
俺たちに三浦たちを潰させたいのか、それとも俺たちを潰したい奴らがいるのか…。
「社長、俺たちを潰したい奴らがいるとしたら、誰?」
コウが尋ねる。
社長も同じ考えに行きついていたらしく、
「まあ、たくさんいるだろうが、『ソリマチ』だろうな。
あそこは腕が悪いって評判だからな、お前たちが欲しいんだろう」
社長が決断したように言う。
「じゃあ、とりあえず2本立てで行こうか。
ナツの監視は続けて、裏で三浦たちと接触を図ってみる。呉にやらせるのがいいかもしれないな。
『ソリマチ』が仕掛けてるのだとすると、俺たちがすぐに動かなければ、しびれを切らして動いてくるかもしれないしな」
社長がそう言うと、タニとコウは納得して頷く。
「それまではのんびり仕事でもしときますか」
コウが言い、会議は終わった。
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