あおり運転の制裁
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あおり運転で相手を死亡させた真犯人が、拓馬だとはっきりした。
証拠隠滅に金を出す、と言った時点で罪は確定した。
ということで、やっとコウたちの出番がきた。
ターゲットは拓馬1人なので、コウだけでも、またはリクだけでも大丈夫なのだが、ナツにも経験をさせたいので、今回はコウとナツの2人でやることにした。
調査部の調べにより、拓馬の行動はある程度把握できている。
しかし、今は警察を警戒しているためいつも通りの行動ではない。
簡単なのは、呉が呼び出したところを殺るのがいいが、父親も一緒に来る可能性が大きいので、これは没にした。
拓馬が必ず1人になる時、やはり車を運転する時だろう。
さすがにあおり運転は控えているだろうが、運転はいつも通りしている。
全く、どういう神経をしているのか…。
拓馬が運転して、たまに行くところがある。
山の中腹にある車寄せで、自販機が置いてあるだけの場所だ。
少し景色がよく、そこに車を停めて煙草を吸っている。
夜は通る車はほとんどなく、人気もない。
今は他に行くところもないだろうから、近々そこに行く確率は大きい。
コウたちはそこに絞って、拓馬を張ることにした。
すると2日後、夜0時、拓馬が車に乗り込んだ。
その時張っていたナツがコウに連絡する。
もしあの場所に行くならと、コウと待ち合わせしている場所がある。
ナツはそこまで拓馬を尾行し、コウを拾う。
やはりその方面へ車を走らせている。
「当たりだな」
コウが言う。
目的地がわかっているので、すぐ後ろにつける必要はない。
ナツは目立たないように、うまく拓馬の車について行っている。
山道に入ると、他に車がいなくなるので、だいぶ離れて走らせた。
目的地には、拓馬の車が1台停まっている。
ナツはゆっくりと、少し離して横に停めた。
エンジンを切り、しばらくしてナツは車を降りて自販機でコーヒーを買う。
煙草を取り出し、火を探すふりをする。
拓馬の車に近づき、運転席の窓に顔を寄せ、火をくれないか、というジェスチャーをする。
ナツは綺麗な顔をしているので、微笑むと悪だくみをしているようには決して見えない。
窓を開けて琢磨がライターの火を近づけてきた。
ナツは煙草を持った左手を引っ込め、右手に持ったスミス&ウェッソンを拓馬の右側頭部に向けて撃った。
左の窓に血しぶきが散った。
車に戻ると、コウが運転席に移っていた。
すぐにエンジンをかけ、山を下りる。
ナツは興奮を自分で落ち着かせているように見えた。
コウはしばらく放っておいた。
ナツのマンションまであと半分くらいの場所まで来た時、コウは車を停めた。
「大丈夫か」
コウが優しく尋ねる。
ナツはコウを見て、
「たぶん」と答えた。
「無理するな。普通は大丈夫じゃない」
コウが微笑んで言う。
「リクはどのくらいで慣れたのかな」
「そうだな、まだ慣れてないかもな」
「そうは見えないけど」
「見えないな」
コウが笑う。
「あいつは表情を隠すのがうまいからな」
「でもな、殺しには慣れなくていいと思うぞ。
その現場でどう立ち回ればいいか、どんなに準備をしてても想定外のことは起こる。
その時にどんだけ冷静に判断できるか、それが大事だ」
コウはゆっくりと続ける。
「それは、現場に慣れるってことだ。
誰かを殺って、それに対して何の感情も湧かないってことはないさ。
それはそれでいい。ただその感情を引きずらないように、自分でコントロールする必要はある」
「ってぇ、とこかな」
コウが軽く言うと、ナツの様子を窺った。
「…じゃあ、今の自分のこの気持ちは…否定しないでもいいのか?」
ナツが心細そうにコウに尋ねる。
「ああ、否定しなくていい。甘んじて受け入れろ。
消化できなければ、俺にでも、リクにでも話せばいい」
ナツはかすかに頷いた。
「帰ろうか」
コウは言うと、リクの待つマンションへ向かった。
車はナツのものだったので、そのまま駐車場に入れると、コウはタクシーを拾い自分のマンションへ向かった。
コウは今日の仕事を振り返る。
ナツは1人でやった。
しかし、まだ感情がうまくコントロールできていないように感じる。
リクは最初から落ち着いていた。
各自の資質なのだろう。
コウは、ナツには触れない。
触れてはいけないと思っている。
ナツの心を癒すことができるのは、きっとリクだけだろう。
リクが待つ家に帰って、リクに自分の思いを話すことができれば、きっと大丈夫だろうと思う。
明日、リクに聞いてみよう、と思いながらコウは目を瞑った。
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