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あおり運転の制裁

*****


あおり運転で相手を死亡させた真犯人が、拓馬だとはっきりした。

証拠隠滅に金を出す、と言った時点で罪は確定した。


ということで、やっとコウたちの出番がきた。

ターゲットは拓馬1人なので、コウだけでも、またはリクだけでも大丈夫なのだが、ナツにも経験をさせたいので、今回はコウとナツの2人でやることにした。


調査部の調べにより、拓馬の行動はある程度把握できている。

しかし、今は警察を警戒しているためいつも通りの行動ではない。

簡単なのは、呉が呼び出したところを殺るのがいいが、父親も一緒に来る可能性が大きいので、これは没にした。


拓馬が必ず1人になる時、やはり車を運転する時だろう。

さすがにあおり運転は控えているだろうが、運転はいつも通りしている。

全く、どういう神経をしているのか…。


拓馬が運転して、たまに行くところがある。

山の中腹にある車寄せで、自販機が置いてあるだけの場所だ。

少し景色がよく、そこに車を停めて煙草を吸っている。

夜は通る車はほとんどなく、人気もない。


今は他に行くところもないだろうから、近々そこに行く確率は大きい。

コウたちはそこに絞って、拓馬を張ることにした。


すると2日後、夜0時、拓馬が車に乗り込んだ。

その時張っていたナツがコウに連絡する。


もしあの場所に行くならと、コウと待ち合わせしている場所がある。

ナツはそこまで拓馬を尾行し、コウを拾う。

やはりその方面へ車を走らせている。


「当たりだな」

コウが言う。


目的地がわかっているので、すぐ後ろにつける必要はない。

ナツは目立たないように、うまく拓馬の車について行っている。


山道に入ると、他に車がいなくなるので、だいぶ離れて走らせた。

目的地には、拓馬の車が1台停まっている。


ナツはゆっくりと、少し離して横に停めた。

エンジンを切り、しばらくしてナツは車を降りて自販機でコーヒーを買う。


煙草を取り出し、火を探すふりをする。

拓馬の車に近づき、運転席の窓に顔を寄せ、火をくれないか、というジェスチャーをする。

ナツは綺麗な顔をしているので、微笑むと悪だくみをしているようには決して見えない。


窓を開けて琢磨がライターの火を近づけてきた。

ナツは煙草を持った左手を引っ込め、右手に持ったスミス&ウェッソンを拓馬の右側頭部に向けて撃った。

左の窓に血しぶきが散った。


車に戻ると、コウが運転席に移っていた。

すぐにエンジンをかけ、山を下りる。


ナツは興奮を自分で落ち着かせているように見えた。

コウはしばらく放っておいた。


ナツのマンションまであと半分くらいの場所まで来た時、コウは車を停めた。


「大丈夫か」

コウが優しく尋ねる。


ナツはコウを見て、

「たぶん」と答えた。


「無理するな。普通は大丈夫じゃない」

コウが微笑んで言う。


「リクはどのくらいで慣れたのかな」


「そうだな、まだ慣れてないかもな」


「そうは見えないけど」


「見えないな」

コウが笑う。

「あいつは表情を隠すのがうまいからな」


「でもな、殺しには慣れなくていいと思うぞ。

その現場でどう立ち回ればいいか、どんなに準備をしてても想定外のことは起こる。

その時にどんだけ冷静に判断できるか、それが大事だ」


コウはゆっくりと続ける。


「それは、現場に慣れるってことだ。

誰かを殺って、それに対して何の感情も湧かないってことはないさ。

それはそれでいい。ただその感情を引きずらないように、自分でコントロールする必要はある」


「ってぇ、とこかな」

コウが軽く言うと、ナツの様子を窺った。


「…じゃあ、今の自分のこの気持ちは…否定しないでもいいのか?」

ナツが心細そうにコウに尋ねる。


「ああ、否定しなくていい。甘んじて受け入れろ。

消化できなければ、俺にでも、リクにでも話せばいい」


ナツはかすかに頷いた。


「帰ろうか」

コウは言うと、リクの待つマンションへ向かった。


車はナツのものだったので、そのまま駐車場に入れると、コウはタクシーを拾い自分のマンションへ向かった。



コウは今日の仕事を振り返る。

ナツは1人でやった。

しかし、まだ感情がうまくコントロールできていないように感じる。


リクは最初から落ち着いていた。

各自の資質なのだろう。


コウは、ナツには触れない。

触れてはいけないと思っている。

ナツの心を癒すことができるのは、きっとリクだけだろう。


リクが待つ家に帰って、リクに自分の思いを話すことができれば、きっと大丈夫だろうと思う。

明日、リクに聞いてみよう、と思いながらコウは目を瞑った。


*****



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