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【番外編】双子の殺し屋



タマキとイオリは双子だ。

一卵性双生児なので、慣れるまでは皆どちらがどちらかわからないが、一応タマキが兄で、イオリが弟だ。


2人はわりと裕福な家に生まれ、育った。

中学までは。

高校に入ると、親の事業が傾き始め、父親は出稼ぎと称して逃げて行った。


2人はアルバイトをしながら高校に通ったが、私立だったため授業料も高く、母親のパートと2人のアルバイトでは生活が厳しくなってきた。

それで2人は自分たちの容姿を生かして、年齢を偽り、ホストクラブで働き始めた。


イケメンの双子がいる、ということですぐに注目され、指名も入るようになり生活は安定してきた。

しかし、やはり学校にバレると、そのまま続けることができなくなった。


イオリのほうは天真爛漫で、そのままホストを続けることを選んだが、タマキは真面目で頭が良かった。

イオリはタマキに大学まで行くよう勧めた。


タマキはそれよりもと、どうせなら海外で勉強すると言って、貯めたお金を持ってアメリカへ留学した。

しかし、タマキは勉強よりも違うことにはまってしまった。

サバイバルゲームだ。


イオリをアメリカへ呼び、2人でゲームをし、射撃の腕を磨いていった。

そうしていると、今の会社の社長との出会いがあり、日本に帰ってきて2人して殺し屋になったのだった。


2人が別々に依頼を引き受けることはない。

2人で1セットなのだ。

それは最初からの会社との契約であり、2人にとっては譲れない条件なのだった。


殺し屋は危険な仕事だ。

だからこそ、別々にはやらないと決めていた。


2人には家族であるという理由以上に固い絆があった。

逆共依存とでも言おうか、お互いがお互いを高め合うことを生きがいとしていた。

もしも1人に何かあったら、もう1人もきっと生きてはいけないだろう。




そんな2人に依頼がきた。

ターゲットは、テロを仕掛けようとしている奴。


「テロ未遂で殺っちゃうの?」

イオリがタニに尋ねる。


「ああ、未遂っても具体的な計画でな。

これ実行されると大学が丸ごと1つなくなる」


「へー大学生なんだね」

今度はタマキが尋ねた。


「いや、助教だ。教授のパワハラに耐えかねてってやつだな。

学生にも馬鹿にされてるらしい。

子供かってんだよ、そんな理由で」


「まあ、既に病んでるんだろうな。

殺るより病院送りにしてあげた方がいいと思うけどな」

イオリが優しいことを言う。


タニが少し黙る。


「あ、ごめん、仕事はちゃんとやるよ」

イオリが慌てて言う。


しかし、タニは

「いや、お前の言う通りだと思った。

これ、ちょっと保留な」

タニはそう言うと、通信を切った。


イオリとタマキは顔を見合わせる。

「もしかして、仕事なくなっちゃう?」

ま、いいかと2人で笑い合う。



翌日、タニが2人に告げる。

「昨日の案件は、公安に渡した」


双子は「イェーイ」とハイタッチを交わした。


「で、違う仕事だ」

タニが続ける。

「今度のは正真正銘のクズだ」



双子はある古い一軒家の裏口にいた。

勝手口の鍵は簡単なもので、ピッキングですぐに開けることができた。


そっと中に入り、様子を窺う。

中はすぐ台所で、ダイニングテーブルと椅子、床にはダンボールに入った野菜やインスタント食品が雑多に置かれている。

整理する人間はいないようだ。


足元に気をつけながら台所を抜けると、廊下があり、右手が玄関、その前に2階へつづく階段がある。

廊下の左手にはトイレ、浴室と思われるドアがあり、その奥は突き当り、そして台所の向かい側に襖で閉ざされた部屋が1つある。


襖を3センチほど、そっと開けてみる。

布団がいくつか並んでおり、誰かが寝ているようだ。

気配がないので、もう少し開けてみると、3つの布団に大人が4人寝ている。


襖を閉じ、2階へ行こうとタマキが指で示す。

オッケーとイオリも応じ、2人は2階へ続く階段を登っていく。


かすかに音と声が聞こえる。

ベッドが軋む音、そして…。


2人はうんざりした顔をして、

「どうする?」とジェスチャーで問い合う。


イオリが小声で、

「きっとあいつだよね」と言うと、

タマキも

「ああ、そう思う」と答える。


「女が出て行くまで待つか」タマキが言うと、

「出て行くかな」とイオリが答える。


2人で「うーん」と首を捻り考える。


その時、音と声が止んだ。

2人はその部屋のドアから死角になる場所で待機する。


すぐにドアが開いた。

裸の女が服を抱いて出て来る。

女というよりも、中学生くらいに見える。

その子は何の表情もなく、階段を下りて浴室へ向かった。


双子はやるせない気持ちでそれを見送ると、

すぐに気持ちを切り替えた。


「行こうか」

タマキが言う。

「殺りましょうか」

イオリが答え、ドアを開けた。


2人が部屋の中へ入り、ドアを閉めると、部屋の中には饐えた匂いが充満していた。

30代の男がベッドから身を起こし、驚いてこちらを見る。


「だ、誰だ!」

男は大声で叫ぶ。


「殺し屋でーす」

イオリが言う。


「は? 何を言って…」

男は半笑いで否定しようとしたが、タマキの手に銃があるのを見て、黙り込む。


「あんたさ、この家の人、洗脳してるんでしょ。

今、見てたよ。あの子中学生くらいでしょ。

親は知ってて下で寝ててさ、普通じゃないよね」

タマキが無表情で言う。


「いや、みんな合意の上だし、別に無理矢理やってるわけじゃなくてだね…」

男が苦し紛れの言い訳をする。


「無駄だよ、そんな言い訳。君にはもう助かる道はない」

「じゃあね」

と言うと、タマキが男の眉間を撃ち抜いた。


続けてイオリが男の股間を撃つ。

「ざまみろ」

イオリはニヤリとしてタマキを見る。


タマキがあきれ顔でイオリをみて、ふーっと息を吐く。

「まったく」


2人は階段を下りて裏口へ向かう。

廊下で女の子と会う。

女の子は驚いた顔をして2人を見たが、イオリが指を口に当てて「シーッ」と言うと、そのまま襖を開けて入っていった。


翌日のニュースで、ある家族の歪な関係と、女の子が児童相談所に保護されたことを伝えていた。


イオリが

「俺ら、ヒーローって感じじゃね?」と言うと、

タマキが

「殺し屋だ」

と答える。


タマキは殺し屋という職業に誇りを持っているようだ。


次から第三章です。

ナツが…リクが…とかなんとかあります。

最後までお読みください。

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