信頼
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闇カジノの襲撃の翌日。
リクとナツは、会社の自室でぼんやりしていた。
ナツが、思い切ったように口を開く。
「俺さ…昨日の仕事さ…」
しかし、言いかけて止める。
リクが、後を引き継ぐ。
「楽しかった?」
ナツがびっくりして、リクを見る。
リクが笑いながらナツを見ている。
「でしょ?」
リクが言うと、ナツが
「うん」と頷く。
「楽しかった、なんて言ったらまたリクに怒られるかと思ってさ」
リクは、
「たぶん、人を殺すのが楽しいんじゃなくてさ、仕事が…自分の仕事をしてるのが楽しいんだと思うんだ」
「自分の仕事…」ナツが呟く。
「そう、自分で選んだ仕事」
リクがそう言うと、ナツが
「そうか…そうかもな」
と呟いた。
今まで当然だと思っていた、いや思い込まされていた仕事は、自分で選んだものではなかった。
与えられて、それをやるのが普通だと思っていた。
いつの頃からか、感情を切り離さなければできなくなっていた。
でも、リクと再会してから、そしてこの会社の人たちと関わってから、
素のままの自分でいられるようになった。
仕事を選び、そのために訓練し、なんとかできるようになった。
それが嬉しくて、楽しくてたまらなかった。
「リクもそう?」
ナツが尋ねる。
「うん、同じだよ」
リクは嬉しそうに答えた。
リクは部屋を出て、コウの部屋をノックする。
コウがドアを開けてくれた。
ソファに座ると、コウがコーヒーを淹れてくれる。
「おつかれさん」
コウがそう言いながら、リクの前にカップを置く。
2人とも黙ってコーヒーを飲んでいる。
すると、リクが
「コウさん、前に俺が言ったこと、覚えてますか?」
と聞く。
コウが、「ああ」と答える。
リクは少し驚いてコウを見る。
リクは、自分が何のことを言っているのか、コウはわからないだろうと思っていたのだ。
コウが笑って、リクに近づくと、リクの髪を優しく梳いた。
「ナツが後輩になったから、リクも気を張ってるだろう。
ナツには、リクがいるから大丈夫だとわかった。
だから、リクには俺…俺がいるから大丈夫だ」
そう言って、コウはリクの頬をそっと撫でた。
リクは気持ちよさそうに目を閉じ、コウの手の感触を堪能した。
そう、仕事が終わった時、コウとのこんな時間が楽しみだと言ったことがあった。
コウはちゃんと覚えていてくれた。
コウはそんなリクを見ながら、思う。
あんな酷い目にあっていたのにも関わらず、なぜ俺にはこんなに身を任せられるんだろう。
俺に触れられるのは嫌じゃないって言ってたな…。
最初から嫌がっていなかった。
信頼か…
そういえば、染谷もそんなこと言ってたな…。
だとしたら、責任重大だな。
リクを傷つけないよう…ひいてはナツを傷つけないよう…。
いや、俺そもそも殺し屋なんだけどな…。
コウはちょっと複雑な思いを抱えながら、ナツの柔らかな頬の感触を堪能したのだった。
第二章 おわり
第二章が終わりました。
続けて第三章にも突入しますが、番外編で「アガタ」と「双子」のお話を作ってみました。
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