闇カジノ襲撃
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ナツは、アメリカでも一応銃の訓練はしていた。
しかしなかなか体幹が弱く、衝撃に耐えうる銃が定まらなかった。
コウは自分が愛用しているグロックやリクのベレッタもいいが、より反動が少ないものだと、スミス&ウェッソンの小型リボルバーなどがいいのでは、と考えていた。
至近距離から狙えれば致命傷を負わせることもできるだろう。
早速、3人で射撃場へ行き、銃を試してみた。
ナツはやはり撃つ瞬間に体がブレてしまう。
コウは丁寧に、スタンス、グリップの持ち方、トリガーの操作等教え込んだ。
特に引き金を引くときに力が入らないよう注意させた。
しばらく練習していると、だいぶ良くなってきた。
本人もスミス&ウェッソンがよさそうだということで、それに決定した。
1週間で、20メートルの的を外さないことを目標に決めた。
それから3時間ほど練習をし、その日は3人で居酒屋へ行った。
リクもナツもよく食べた。
飲むよりも食べる方がいいらしく、次々に注文しては平らげていった。
コウはそれを見ながら、複雑な思いだった。
このまま普通の仕事をさせてやりたい。しかし、本人たちはそれでは生きていけないのだろうな、とも思う。
俺も同じだな…そう考えていると、隣に座っていた40代くらいの男が、こちらの席にからんできた。
「お兄ちゃん、かわいいねー」
男と同席している奴らもニヤニヤしながら黙って見ている。
ナツはビクっとして男を避けた。
コウがすかさず間に入り、睨みつける。
男はコウの迫力に気圧されて、すごすごと席へ戻って行った。
リクが小声で「大丈夫?」とナツに聞く。
ナツは顔色が悪く、出会ったときのような無表情になっていた。
タクシーで2人をマンションまで送り、コウも自分のマンションへ帰った。
さっきのナツの表情が頭にこびり付いていた。
殺しを…させていいのか…ナツが壊れないか、コウは考え続けていた。
闇カジノ襲撃の前日。
コウはナツと2人で射撃場へ来ていた。
練習の成果を確認するためだ。
ナツは1週間前とは見違えるように、軽々と的の中心に当てていった。
「おう、がんばったな」
「まあな」
ナツは照れくさそうに言うと、銃をしまった。
「後で具体的な話はするが、明日の仕事、いけそうか」
コウが聞く。
「もちろん。そのために練習したんだからな」
ナツが意気込んで言う。
コウがナツの目を見る。
「殺す奴と殺さない奴がいる。一瞬で判断しなければならない。
躊躇ったらやられる。自分も、仲間も。
一番大事なことは、冷静でいられるか、だ」
ナツは少し考えて、
「そう言われると自信ない」
と言った。
コウは、
「それでいい。今、自信満々って言われてもかえって信じられないからな」
笑って言い、更に
「常に仲間を意識するんだ。リクを、シキミを、ミズキを、俺を…そしたら落ち着くさ」
「わかった」
ナツは言い、満面の笑みを浮かべた。
「リクが言ったとおりだ。コウさんの言うことは、何故か全部信じられるって…へへっ」
そう言って、照れくさそうに下を向いた。
闇カジノ襲撃当日。
夜23時、ミズキはカジノを楽しんでいた。
会社からたっぷりと軍資金をもらい、ルーレット、ポーカー、バカラ…ほぼ負けているが、これも計画のうち…ご機嫌で次のゲームに行こうとする。
すると、運営者側の男に声をかけられた。
「お客さん、今日はツイてないようですね」
ミズキが困った顔で答える。
「ええ、でもこういう日もありますよ」
運営者側の男が、ミズキに耳打ちする。
「よかったら少し融通できますよ。奥のVIPルームにご招待も可能です」
「へー奥の部屋があるんだ。見てみたいな」
無邪気そうに…世間知らずのお坊ちゃま風に、ミズキが言う。
「では…」と男が案内し、奥の扉を開けた時だった。
ダダダダダダダダダッ……
マシンガンの音が部屋中に鳴り響いた。
「動くな! じっとしてろ!」
悲鳴を上げて逃げ惑う客たちに向かって、シキミが怒鳴る。
ただでさえ悪人顔のシキミがマシンガンを持って怒鳴るものだから、客たちはパニックになっている。
シキミの後ろから、コウ、ナツ、リクが奥の方へ走る。
奥の扉を開けて固まっていた男が、ミズキのことも忘れ、自分だけ奥に逃げ込む。
コウがミズキに銃を渡し、4人で奥の部屋へ走り込む。
奥の部屋はVIPルームになっており、状況を理解していない客たちが右往左往している。
運営者側の男が、更に奥の扉を開け、入っていくのが見えた。
コウたちは、そのまま奥へ行き、扉を少し開け、中の様子を窺う。
途端に銃撃を受け、客の一人に流れ弾が当たり倒れた。
皆悲鳴を上げて、我先にとVIPルームから出て行く。
ミズキが扉の陰から銃を撃ち続け、その隙にコウが中へ入る。
中にはターゲットの2人とカジノの関係者が3人と護衛が3人。
カジノの関係者は丸腰のようだ。
ターゲットのうち若頭の右腕である塔屋が、若頭の嵯峨野を裏口から逃がそうとしている。
コウが護衛の一人を撃つ。
残りの2人もコウに向かって銃を撃ってくる。
1発が防弾チョッキに命中した。
コウは胸を押さえて動けなくなる。
リクとナツが同時に部屋へ滑り込み、2人を一気に撃つと、相手はすぐに倒れた。
カジノの関係者は両手を上げて降参している。
「コウさん、大丈夫ですか」
リクが駆け寄ってくる。
「ああ、このくらい平気だ。それより裏口だ」
コウが言い、走り出す。
コウの後をリクとナツが追う。
裏口を出たところは細い路地になっており、どちらに逃げたかわからない。
「二手に分かれよう。無理をするなよ」
コウは言い、左へ走る。
リクとナツは右の方へ走っていく。
嵯峨野と塔屋は、金がぎっしり詰まったボストンバッグを1つずつ抱えて必死で逃げている。
「誰だよ」息を切らしながら、嵯峨野が言う。
「わかりません。強盗でしょうか」
塔屋が答える。
「ちくしょう…」
嵯峨野が呟きながら路地を左へ曲がる。
ここらへんの通りは碁盤の目のようになっており、どこで曲がっても鉢合わせする可能性がある。
嵯峨野たちがいくつかの角を曲がった時、ちょうど横から曲がって来たリクと目が合った。
塔屋がリクに向かって銃を構える。
しかし横の路地にいたナツが塔屋を撃った。
塔屋が倒れ、嵯峨野が後ずさりながら、銃を構えた。
しかし遅かった。リクが嵯峨野を撃つ。
リクとナツが顔を見合わせて頷き合う。
そこへコウが到着した。
コウは、塔屋の眉間に一発撃ち込んだ。
「生きてた」
コウが「こらっ」というように、ナツに肩パンする。
「すみません」
ナツが素直に謝る。
「オッケー、終わったよ」
インカムで報告を受けながら、コウが言う。
「シキミとミズキはもう引き上げたから、俺たちもすぐ離れよう」
そう言って、3人は車の方へ走り出した。
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