復讐依頼
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社長がどうやったかはわからないが、というか知りたくないが、根回しが終わり、森戸を殺っても佐藤組は手を出さないという。
佐藤組は森戸を切った、ということか。
まあ、代わりはいくらでもいるからな。
コウは、リクと打ち合わせをする。
そしてリクだったらどう殺るか、聞いてみた。
リクは、ある程度考えていたのか、すぐに
「ここ2日、アークファイナンスを見ていたんですけど、昼時は交代で昼食を食べに外に出てるみたいで、森戸ともう一人だけ事務所に残る時間があるようなんです。
俺は貧乏そうに見えるから、客として金を借りに来たふりをして、1人を倒せば森戸もすぐに殺れるんじゃないかと思います」
「うん、ちゃんと考えてたんだ」
コウが笑いながら言う。
「でも、そこは『貧乏そうに見える』じゃなくて『若いから』でいいんじゃないの」
「ただ、出前とかとったらその日は無理だね」
「はい、1人ではちょっときついかもしれないです」
リクが素直に頷いた。
「俺の場合は客に見えないから、別の方法なんだけどね」
コウが言う。
「1日尾行して、森戸が1人になった時を狙う、ってことも確実ではあるんだけど…スマートじゃないよね、疲れるし。
で、考えたんだけどさ、これって会社員の復讐でしょ。同じように、ビルの上から落とすっていうのがいいんじゃないかと思うんだよね…どう?」
コウがリクに問う。
「あ、そうですね、考えてませんでした」
「俺も今思いついたんだけどね」
コウが笑う。
「会社員が勤めてた会社のビルに屋上あるかな」
リクがすぐに調べる。
「あります」
「じゃあ、そこにおびき寄せて突き落とすってことにしようか。
社員を連れてくれば、二手に分かれよう」
「はい」
これで決まった。
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翌日すぐにコウは森戸に電話をかける。
「あんたがあの会社員を突き落としたとこ、動画でとれてたんだよね。
1千万でどう?」
「は?何言ってんだ? 何のことだよ。
俺を脅してただで済むと思ってんのか」
テンプレートのような返しをする森戸に対し、コウは、
「まあ、いいや。あの会社の屋上で今夜22時待ってる。
1分でも遅れたら動画バラまくから」
と言って電話を切った。
必ず食いついてくるとコウは思っていた。
リクが夕方から事務所を見張っていると、社員のうち2人が出かけて行った。
コウに連絡する。
コウは既に待ち合わせの会社の近くで張っていた。
森戸のところの社員が、建物に入って行くのを確認した。
下見だろう。
(無駄なことを…)コウはニヤリと笑う。
しばらくすると2人は建物が出て、事務所へ戻って行った。
やはり全員で来るつもりか。
社長が根回ししてるので、佐藤組からの応援はないと考えていいだろう。
相手が4人ではコウたちの相手ではない。
コウはリクに電話し、21時に集合しようと伝え、一時解散した。
21時。
待ち合わせの場所にコウとリクはいた。
屋上に出る扉の前にコウ、1階下の非常口の内側にリクが待機する。
21時半、案の定早めに相手も到着する。
足音からして3人しかいないようだ。
社員の3人なのか、3人の中に森戸がいるのか…わからないが、まあいい。
とにかく3人は、リクが待機している扉に近づいてくる。
3人が扉の前に来た時、ふいに扉が勢いよく開いた。
3人は驚き、先頭の1人は扉で押されて後ろに下がり、2人目にぶつかる。2人目は3人目…3人目はぶつかる人がおらず、階段の下の踊り場まで転げ落ちた。
面白いほど計画通りだ。
落ちたのは森下ではないようだ。
1人目の腹をリクが殴って倒した。
2人目は1人目の体が邪魔で、どうしようかと迷っている。
森戸はいない。
社員を先に潜り込ませて先手を打つつもりだったのだろう。
それにしては準備が遅い。
こちらを素人だと思って、甘く見ていたのだろう。
リクは2人目を睨みつけながら、1人目を非常口の中へ引きずり込む。
1人目が消えたので、2人目がリクに殴りかかってきた。
リクが華麗に避けたので、そのまま非常口の中へ倒れ込む。そこへリクが顔めがけて足蹴りをして倒す。
2人を拘束し、踊り場へ落ちた3人目を見に行く。
意識を失っているようだ。
リクは襟首を掴んで踊り場から更に下まで引きずっていき、そこの非常口の中に入れて拘束した。
階段の上を見ると、隙間からコウが親指を立ててこちらを見ている。
リクも頷き、最初に待機していた場所へ戻る。
22時、2分前、やっと森戸が屋上に来た。
余裕のある所を見せようと思っているのだろうが、内心は連絡の取れない部下たちのことが気になっていた。
屋上で待っていたのが、長身の落ち着いた男だったのが意外で、森戸は少したじろぐ。
もっとチンピラのような奴だと思っていたのだ。
動揺を隠し、森戸が口を開く。
「動画があるってのは嘘だろ」
コウは余裕のある顔で答える。
「ああ、嘘だ」
「何っ! てめぇ、タダで済むと思うなよ」
「あ、それ電話でも言ってたよね。タダで済まないのはどっちだろう。
あんたの部下は? どこ行った?」
コウはニヤリとして森戸の顔を見る。
森戸はやっと自分が追い込まれていることに気づいた。
「お前、何者だよ」
もう声が震えている。
「殺し屋ですよ、森戸さん」
「殺し屋…まさか…」
「あんた、ここで会社員殺したでしょ。復讐してって依頼受けたの」
「あれは…成り行きで…殺すつもりはなかったんだ…あいつの上司ってやつの借金を取り立てに来ただけで…」
「でもさ、カタギを殺しちゃ駄目でしょ。今日のことはさ、佐藤さんにも了解を得てるんだよね。諦めて」
「え、佐藤組に…」
森戸は絶句した。それ以上は何も言えなくなってしまった。
コウがグロックを見せながら、森戸に近づく。
森戸は後ずさりしながら、屋上の端に近づいていく。
とうとう柵にもたれかかるまでに追い詰められた。
「自分で飛び降りる? それとも俺がやる?」
コウが冷たい声で言い放つ。
「いやだ、助けてくれ、頼む、何でもするから…」
森戸はひざまづき、手を合わせている。
コウは森戸の目の前に一発撃ち込んだ。
森戸は「ひぃっ」と言って、立ち上がり、柵の方へ身を乗り出す。
コウは森戸の足を掴み、そのまま上へ持ち上げた。
森戸は声を出すこともできず、下へ落下していった。
「面倒かけやがって」
コウが呟いた。
屋上の入口にリクが立っていた。
コウは微笑み、
「ごくろうさん」と言った。
リクは、ただホッとした様子でコウを見ていた。
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