表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
32/64

コウの存在

*****


コウが仕事を終え、会社に戻ると、コウの部屋の前でリクが待っていた。

コウは苦笑し、リクを部屋へ通す。


「言いたいことがあるんでしょ」


コウが微笑んで言うと、リクが

「コウさん、怪我をしています!」と言って、自室に戻りすぐに救急箱を持ってきた。


「大したことないのに」コウが言うと、

「まだ血が出てます」と言って、リクは手当を始めた。


縫うほどではないが、少し深かったのか、血がまだ少し滲んでいた。

コウは手当をリクに任せて目をつぶった。


「今日の仕事の内容は聞いた?」

コウが尋ねる。


「いいえ、聞いていません」

リクが答えた。


「どうしてもさ、リクには見せたくなかったんだよ。俺の我儘」

コウが言うと、リクが複雑そうな顔をした。


「…俺が…まだ子供みたい…だから…」

リクが寂しそうに呟く。



手当が終わり、コウが目を開ける。

「違うよ」


コウはふっと笑うと、リクの顔をじっと見る。

「リクがどうこうじゃなくてさ、ホントに俺の我儘なんだよ」


リクが何か言う間を与えず、コウはリクの前髪をわしっと後ろへ撫でつける。


部屋の電話が鳴った。

コウは動かない。


リクがコウに頭を押さえられえた形になったままで電話の方をちらっと見る。

「いい。リクとの時間を邪魔する奴は殺す」


冗談なのか本気なのかわからないが、コウがニヤッと笑って言う。

リクも思わず笑った。


リクは思う。

(コウさんにはコウさんのルールがある。自分が何か言うことはできない)


*****



先日コウたちが拘束した、人身売買の見張りの1人に、会社の尋問者がボスについて聞き出そうとしたが、何も得るものはなかったという。

彼らはただの見張りで、実際に移送に関わる人間はいなかった。


時間があれば、移送の現場を捉えることもできたかもしれないが、依頼は娘の奪還だったので、とりあえず依頼は完了した、ということになる。


当然、この仕事に関わった者たちの胸には、消化しきれない者が残ってはいる。

しかし、あの場で人身売買が行われていたことは警察も把握できたのだから、後は警察の仕事である。


*****


ある日、コウはいつものようにホテルに女を残し、会社に来ていた。


廊下で、先日一緒に仕事をした双子の殺し屋、タマキとイオリに会った。

「あ、コウくん、女の匂いがする」

イオリが言う。


「するか」

コウがそっけなく答えると、


「イオリ、コウくんは女のことはすぐ忘れるんだよ」

今度はタマキがからかう。


「お前たち、いつも一緒にいるんだな」

コウが不思議そうに言う。


「そうだね、生まれた時から一緒だからね。

顔も才能も似てるから楽なんだよ」

タマキが言うと、イオリも頷く。


「そんなもんか」コウが言い、続けて

「とにかく前回の仕事は楽だったよ。またよろしくな」

と言って、自室へ入って行った。


双子は顔を見合わせて、嬉しそうに笑い合った。



この会社でのコウの存在は大きい。


殺し屋としても一流だが、一緒に仕事をすると、的確な段取りや指示に、皆が全幅の信頼を置く。

日頃の人当たりの良さも相まって、一緒に仕事をしたい奴らは多い。


今は大きな仕事以外は、ほとんどリクと2人でこなしているので、他の人間が入る余地はないのだが。



そんなコウのもとへ、新たな依頼がきた。

依頼内容は「復讐」である。


1か月ほど前、ある会社員が会社の7階から飛び降りて自殺した。

会社員の妻は「自殺するはずはない」と警察に何度も訴えたが取り合ってもらえず、興信所に会社員の身辺を調べさせた。


すると、その会社員の上司と闇金との間にトラブルがあり、会社員が巻き込まれて闇金の人間に殺された、ということがわかったという。

その上司は自分も殺されると言って、行方をくらましてしまった。


証拠がないので警察は動いてくれない。だから直接手を下した闇金の者を殺してほしいという依頼である。


ターゲットは街の闇金「アークファイナンス」の森戸猛。


アークファイナンスは、一見小さな闇金だが、闇金の例に漏れず、バックには暴力団の佐藤組がついている。

森戸を殺った場合、それだけでは終わらないケースである。


ここは社長に根回しをしてもらうことになる、とタニが言い、コウが面倒臭そうに頷いた。

「アークファイナンスって、何人くらいいるの?」

コウが尋ねる。


「社員は3人」タニが答える。

「その3人は外に出る時、森戸を囲んでるのかな」

「1人はいるみたいだけどね」


タニの答えにコウが頷き、

「じゃ、根回しが終わったら教えて」

と言って、通信を切った。



リクの部屋にもデータを転送し、2~3日中に動くから待機をするよう指示をした。

リクとの仕事は、最初から結構スムーズだったが、最近は特にそう感じる。


ナツがアメリカから帰ってきたら、リクが独り立ちして、コウがナツの面倒を見ることになるのだろうか。


コウはぼんやりとそう考えた。


*****




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ