表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
29/67

下衆教師とボクサー崩れ

*****


コウの部屋に呼ばれて、リクは軽い足取りでコウの部屋をノックした。

ただ、軽い足取りであることは、誰にも気づかれないように気を付けてはいた。


コウがリクに新しい依頼の話をする。

高校教師と、半グレのボクサー崩れの2人、だという。


本当は別々に狙う方が確実ではあるのだが、片方を先に殺ると、もう1人は警戒してしまうだろう。

また、半グレは集団で行動するので、少し厄介である。


コウは、リクに提案する。

「リクが高校教師を殺ってくれるか。


同時刻に俺が半グレをやれるよう段取りをする」

リクは頷いた。


高校教師の行動はある程度決まっている。

半グレが日々どういうルーティンで動いているのか、タニからの情報はあるが、コウが実際に自分の目で確かめることにする。


半グレは当然仕事はしていない。

たまに佐藤組の仕事を請け負い、恐喝や破壊行動をやる。


だからなかなか読めないのだが、夜はアジトとして使用している廃車置き場のプレハブに屯していることが多いようだ。


諸石も女のところにいない時は、そこにいる。

ただ、その日は必ずそこにいる、ということがないので、おびき寄せた方がいいのかもしれない、とコウは考えた。


うってつけの人材がいる。

コウは社長を通してその人物に依頼をした。


*****


里紗はキャバクラで働いている。

まあまあ顔もよく、稼ぎもそれなりにいいが、諸石に貢いでいるので、自分で自由になる金はあまりない。


そのキャバクラに、今夜は新しい客がきた。

里紗を指名してきたその客は、その店に来る他の客とは全く違う雰囲気を纏っていた。

高級そうな服を着こなし、髪は長く後ろでさり気なく結んでいる。

顔は女性的だが身長は高く、仕草は気品があり、その声は深く引き込まれるようだった。


(もしかして…)里紗は思った。

(客ではなく、スカウト…いやまさか店に来るなんてことはしないか…でも…)


ただの客とは思えなかったが、とりあえず里紗はいつものように接客をした。

「お仕事は何をされているんですか?」

「仕事?そうだね、会社を経営しているんだ」

「このお店はどなたかからの紹介ですか?」

「うん、里紗さんの話を聞いて会ってみたくてね」


その客はミズキと名乗った。

名字なのか、下の名前なのかわからない。


「アフターも付き合ってくれる?」

ミズキはさりげなく里紗を誘うと、バーの名前の入ったカードを置いて出て行った。


里紗は浮足立っていた。

諸石がただのチンピラに思えてくる。

自分にもチャンスが巡ってきたのかも、そう思うと、仕事が終わる時間が待ち遠しくてたまらなかった。


*****


コウは諸石の取り巻きに、里紗が浮気しているという情報を流させ、諸石の耳にも入るよう仕組んだ。

今から、ある店でその男と会うらしい…そう吹き込むと、諸石は頭に血が上った。


諸石は取り巻きたちを引き連れて、聞いた店に殴り込む準備をしている。

コウは諸石たちのアジトが見える場所から、その様子を見て、引っ掛かった、とほくそ笑んだ。


リクに、今夜実行すると連絡する。


リクは夏焼に張り付いている。

夏焼は今夜は自宅へ帰り、家族と過ごしている。


里紗が店を出る。

諸石の取り巻きの一人が諸石に連絡する。


諸石たちは、しかし聞いた店を探せずにいた。

当然だ。諸石たちに流した住所は、以前麻薬取引の現場に使用され、コウとリクが全滅させた場所だった。


諸石たちは、もしかしたら先鋭的な店なのかも、と思い、恐る恐る廃工場を覗いてみた。

中にはコウがいた。


「おうっ、やっと来たか」

そう言うと、コウはスマホでリクに合図を送った。



リクはコウの合図を受け取ると、夏焼に生徒のふりをして電話をかけて呼び出した。

夏焼は、慌てて家族に「コンビニに行く」と言って外に出た。


リクは300メートルほど離れた小さな公園で夏焼を待つ。

夏焼がはあはあ息を切らせて走って来る。


待っているリクを見て、首を傾げる。

「君は…誰かの代理かい?」

呑気に夏焼が尋ねる。


リクは「いいえ」と答える。

夏焼が訳がわからないという顔をし、リクの右手に目を向けた。


「はっ」と息を飲む。

「な、なぜ…君はいったい…」


「獣には相応の最後でしょう」


リクはそう言うと、ベレッタの引き金を引いた。




コウは、先頭に立つ諸石に向かって、

「里紗は他の男と一緒にいるよ」と言った。

諸石はますます頭に血が上っている。


みんな半グレらしく、鉄パイプやらチェーンやらを手に持っている。

7人か…思ったより少なかったな。


諸石はボクサー崩れということでもあり、メリケンサックを嵌めているのが見える。


「うーん」コウは考える。


銃の方が早いんだけど、少し相手してやった方が、諸石を殺ったあとの奴らの報復の気が削がれるかもしれないか。


コウはそう決めると、最初に諸石以外の取り巻きたちに向かって行った。

打ち下ろされた鉄パイプを払い、相手の腹に拳をめり込ませる。


チェーンを振り回している奴には、勝手に振り回させておき、他の鉄パイプ集団から先にやる。

鉄パイプ集団は、鉄パイプが最強の武器だと信じているらしく、思い切り打ち下ろしてくる。

他の角度から攻めるとか、足を狙うとか、いくらでもやり方はあるだろうに。

なんとかの一つ覚えのように、頭から打ち下ろす。


コウは笑いをこらえながら、一人一人の顔、首、腹を次々と拳で撃つ。

遠慮はしていないので、みんな一発で動けなくなっていく。


チェーンの奴と諸石が残った。

チェーンの奴は、チェーンを振り回しているが、何をしたいのかわからない。

コウに近づくことができず、ただ振り回している。

コウが一歩近づくと、一歩後ずさる。



コウはチェーンの奴は無視することにして、諸石と向かい合った。

コウもゆっくりとメリケンサックをつける。


諸石がニヤリと笑い、手の平を上に向けて「来い」というジェスチャーをする。

コウはいかない。

構えもしない。


しばらく睨み合ったあと、諸石が痺れを切らしてコウに向かってきた。

コウの顔を目がけて、右ストレートを打ち出した。


遅い。

コウは左へ避けた。


避けながら左手で諸石の顎を打つ。


諸石が後ろへ吹っ飛ぶ。


ボクサー崩れは、どこまでもボクサー崩れだ。


コウが見ていると、何とか立ち上がろうとしているが、顎は既に砕けている。

他の奴らを見回す。


意識はあるが、動こうとする者はいない。

諸石が何か言いたそうにしているが、顎が砕けているのでしゃべることができない。


コウはグロックをホルスターから取り出すと、諸石に狙いを定める。

「悪いな、お前は殺らねえといけないんだよ」


あちらこちらで息を飲む声がする。

諸石の目に涙が溢れる。


コウは引き金を引いた。


*****


里紗はミズキからもらったカードを見ながら店を探している。

だが、どうしても見つからない。


しばらくウロウロしたが、諦めて近くのバーに入ってみた。

カウンターに座り、カクテルを頼む。


バーデンダーにカードを見せて聞いてみると、その店は、以前ここでやってて、もう閉店していると教えてくれた。


あんな紳士に騙されたのか…。

悪意はなかったように思うけど…。


しかたなく一杯だけ飲んで店を後にした。



諸石が死んだと知ったのは、翌日だった。


*****




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ