仕上げ
ナツの涙はまだ止まっていない。
「真くん、何食べたい?」
リクが尋ねる。
「オムライス!」すぐに真が答える。
「じゃ、オムライス食べたら園に帰ろうか。
先生たちが心配してるよ」
「わかったー!」嬉しそうに真が答え、ナツも顔を上げた。
*****
少し前、ナツのマンション前で待機していたコウの目に、怪しい人影が数人映った。
「来たか」コウはニヤリと笑い、車を降りる。
怪しい人影はナツのマンションに入って行き、階段を上がっている。
コウは後をつけ、狙いがナツの部屋であることを確認すると、グロックを4発放った。
サイレンサーが見事な働きをし、何事もなかったかのように4人は音もなく倒れた。
それからコウは外に出ると、会社に連絡し掃除屋を手配したのだった。
*****
リクたち3人は、近くのファミリーレストランへ行った。
真はオムライスがついたキッズセットを頼んだ。
ナツは何も頼まなかったので、リクがフライドポテトを頼み、3人で食べた。
それから3人はひまわりの家の近くに戻り、真に手を振って別れた。
真がひまわりの家に入って行くのを確認して、しばらく見ていたが、女性の嬉しそうな声が聞こえてきたので、安心してその場を離れた。
コウはリクとの電話を切ると、ひまわりの家へ戻った。
ひまわりの家ではすでに真を探していないようだった。
本来なら警察に通報するところだろうが、久住がスタッフをなんとかごまかしていたのだろう。
レイとオキに合流すると、久住はまだひまわりの家にいた。
コウはひまわりの家に電話をし、久住を呼び出した。
「真は預かってる」コウが言うと、久住が息を飲む声がした。
周りに聞かれるので、下手なことは言えないようだ。
「オフィス久住…今からそこに行け。話がある」
コウはそう言うと電話を切った。
コウは、レイとオキに、久住を尾行して行動を逐一報告するよう頼み、一足先にオフィス久住へ向かった。
先ほどの駐車場に到着すると、コウは車のトランクからグロックの予備のマガジンを取り出し、ポケットに突っ込んだ。
おそらく援軍を連れてくるだろう。
コウは久住のオフィスの鍵を開けると、中に侵入し、すぐにまた鍵をかけた。
すぐに、レイから、久住が當間不動産のオフィスに寄って、すぐに出てきたというメールが届いた。
10分程すると、久住の車が停まる音が聞こえた。
その後、何台かの車が停まる。
コウはオフィスの久住の椅子に腰かけ、久住が入って来るのを待った。
久住が鍵を開ける音がした。
続いて電気のスイッチを入れる音がする。
しかし照明はつかない。コウがブレーカーを落としていたのだ。
久住はハッとして目を凝らす。
コウは十分暗闇に目が慣れていた。
「遅かったな」コウが呼びかける。
「真はどこよ」久住が答える。
「いなくなった方がよかったんじゃないのか」
コウが言うと、久住が高笑いした。
「何もわかってないのね」
馬鹿にしたような口調で久住が言う。
「あの子は必要なのよ。當間の跡継ぎとしてね。そうでなきゃ、引き継げない事業があるんだから」
「ふーん」コウが鼻を鳴らす。
「で、利用した後は? 殺す? 売る?」
コウが言うと、久住が黙り込んだ。
図星だ。
「そもそも、あなたに何の関係があるのよ。あの子を守るメリットは何?
依頼があったわけじゃないでしょう。そんなこと依頼する人なんていないもの」
久住はコウが言い返せないと思い、勝ち誇ったように言い放つ。
「メリットなんてないさ」コウが静かに言う。
その声は久住をぞっとさせるには十分な威圧感があった。
「たださ、あんたは間違えたんだよ。脅す相手をさ」
コウがゆっくりとグロックを構える。
廊下から『待ってました』とばかりにドタドタといかにもガラの悪い連中が入って来た。
コウは何の前置きもなしに、引き金を数回引いた。
3人倒れる。
向こうからも弾が飛んでくるが、暗闇に目が慣れていない連中はコウに当てることはできない。
コウは続けて引き金を引き続ける。
2人、3人、と次々に倒れていく。
その間にも、コウは久住が逃げないよう目を光らせる。
久住は真を取り戻したい一心で、その場から離れない。
これだけの人数で、コウを倒せないなどとは考えていないのだろう。
(馬鹿か、こっちはプロの殺し屋だぞ)
コウはそう考えながら、引き金を引き続けた。
何人いたのかわからないが、途中で1度マガジンを交換した。
ふと気づくと、久住しか立っている者がいなかった。
全く手ごたえがなかったことにコウががっかりしていると、久住が両手を上げて震えながら言った。
「た、たすけて…諦めるから…子供のことはあきらめるから…お願い…たすけて…」
コウが久住に近づく。
久住は入口付近で固まって動けないでいる。
(まったく、ホント厄介な女だ)
コウは、
「言ったろ、あんたは間違ったって」
そう言うと、久住の頭に銃弾を撃ち込んだ。
*****
コウは会社の自室に戻った。
なんだか長い一日だったような気がする。
コーヒーを淹れ、ソファに座って飲んでいると、ノックの音がした。
ドアを開けると、リクがいた。その後ろにナツが俯いて立っている。
「いいよ」コウが言うと、リクはナツを促すように一緒に入ってきた。
コウは二人分のコーヒーを入れると、カップをテーブルに置き、ソファに座るよう促した。
「終わったよ」コウが言った。
リクがナツの方を見ると、ナツは顔を上げてリクを見てから、コウの方を向いた。
コウはナツに優しく頷いた。
リクがやっと安心したように、
「コウさん…」と呟いた。
涙が頬を伝って流れている。
ナツがリクに抱きついた。
リクもナツを抱き締める。
(おい、おい…)コウが苦笑する。
(今日は触れないかー、仕方ない今日だけはナツに譲ろう、今日だけ…は…)
コウは二人を見ながら手をぎゅっと握りしめた。
第一章 おわり
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殺し屋たちの話、いかがでしたでしょうか。
第一章が終わりました。
続けて、第二章もお送りしますので、このあとの殺し屋たちの仕事や絆など、見届けてくだされば幸せです。




