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芦塚の正体

*****


調査部に芦塚の居所を探らせて、数日が経過した。




何故か芦塚については正体がわからず、調査部も苦戦していた。


「芦塚って偽名じゃないの」

コウがタニに言う。



「それも考えて當間の周辺を探らせてるんだけどさ、それらしい女は見当たらないんだよな」


タニが渋い顔で言う。



「タニ、ひまわりの家に出入りしている奴の顔写真、準備できるか。

あと、交流会のあと女が入っていったスナックの関係者」


「ああ」


コウは唯一芦塚の顔を見ている。コウが片っ端から当たっていくのが早いかもしれない。




翌日、タニが写真のデータを送ってきた。


コウがそれらを見ていく。


「いた」コウが呟く。


「見つけたぞ」コウがものすごく悪い顔になり、頭の中で計画を立てていった。




*****




コウとリクは顔が知られているので、尾行がうまいオキに、ひまわりの家の張り込みをさせた。

写真の女がひまわりの家に出入りしたらその後をつける。



なかなか現れなかったその女が現れたと連絡が入ったのは、オキが張り込みを初めて1週間たった日だった。


オキは女がひまわりの家から出て来ると尾行を始めた。


女は自分で車を運転していたが、警戒しているのか、何度も車線変更を繰り返し、迂回し、Uターンをし、やっと目的の建物らしき駐車場に停車した。



オキが尾行に気づかれることはなかった。


オキは女の車の後ろをついて行くだけではなく、行き先を予測し、先回りをし、途中で合流しては追跡する。

警戒しているとはいえ、尾行されることに慣れていない奴のすることはお見通しだった。



オキはコウに女の居場所をメールし、そのまま待った。


コウがオキと合流する。


「このビルの4階ね。会社名は『オフィス久住』」

オキがコウに掴んだことを知らせる。


「このビルの出入り口は、ここと裏の非常階段のとこに1つ。


女の車はあれ、シルバーのプリウス。この駐車場は窓から見えないから、ここから見張ってても大丈夫だよ。


絶対気づかれてないから、わざわざ裏口から出ていくはずはないしね」

オキは自信たっぷりに言うと、車を降りて「バイバイ」とコウに手を振ると去って行った。



コウはオキの仕事に感心し、頭の中で計画を練り直した。


こんなにあっさりと女の拠点が見つかるとは思っていなかったので、ひまわりの家に出入りする際に実行しようかと考えていた。


今、このビルにいるのであれば、すぐにでも実行できる。


そう考えて、一度ビルの中を見ておこうと思い、車を降りかけたところに電話が鳴った。


タニからだ。

「コウ、當間の息子がいなくなった」


「は?」コウは目の前のビルを見上げて言った。




「どういう状況?」コウが尋ねる。


「ひまわりの家を張ってる奴から連絡があって、なんか慌ただしい感じがして何気に近づいたら、『まーくんがいない』って言ってみんなで探してるらしい」


「まーくん?」


コウは今さらながら、當間の息子の名前を初めて聞いた。


「真、マコトで、まーくん、だと」タニが言う。


「うむ…」コウは考える。



はっきり言って、真の居場所はどうでもいい。


今の俺の狙いは、あの女…芦塚と名乗っていたが、本名は「久住由香」…ひまわりの家の運営者だ。


そう、盲点だったのだ。



久住は當間真の近くにいた。いつでもどうとでもできる立場にいたのだ。


當間はきっと久住のことを信頼していたに違いない。

まさか自分亡き後、息子を殺して事業を乗っ取るとは考えてもいなかったのだろう。


それにしても、久住がひまわりの家を訪問した後に、都合よく真が行方不明?


どういうことだ。


そこに、慌てた様子で久住がビルから出てきた。

車に乗り込み急発進させる。



コウも10秒後に続く。


真の行方不明に関係していないのであれば、ひまわりの家から連絡を受けて、慌てて戻って行っているのかもしれない。


逆に真の行方不明に関係しているのであれば、あんなに慌てるはずがない。


コウはリクに連絡し、ひまわりの家の様子を探るよう言った。


案の定、久住はひまわりの家方面へ車を走らせている。

コウはそのまま追っていく。



*****



リクはコウから連絡を受けて、すぐにひまわりの家へ向かった。

ひまわりの家に着くと、以前から張っている者、レイと目くばせを交わし、ひまわりの家の門をくぐった。


交流会に潜り込んだように、OBのフリをして何気に入っていく。

「こんにちは」

園庭でキョロキョロしているスタッフに声をかける。


「交流会にお邪魔した者ですけど…何かあったんですか?」

リクが親切そうに声をかける。


スタッフはリクを疑いもせず、

「園児が一人、姿が見えなくて、探しているところなんです」と不安そうに話す。

「それは心配ですね、一緒に探しましょうか。その子の名前は?」

リクが尋ねると、

「真くん、まーくん、です」

スタッフが答える。


「わかりました。周辺を探してみますね」

リクはそう言うと、園の外に出て子供を探すフリをしながらその場を離れた。


しばらくすると、車が急停車し、久住が降りてきた。

リクは向こうから見えない場所でコウを待った。


すぐにコウの車が近くに停車し、コウが降りて来る。

「久住の仕業じゃないようだな」

コウが言う。

リクが頷く。


その時、以前から張っていたレイが声をかけてきた。

「そういえばさ、ひまわりの家から出てきたように見えなかったから気にしてなかったんだけど」


コウが目で先を促す。

「少年っていうか、リクくらいの男が子供の手を引いて歩いて行くのを見たんだよ。

少年は無表情だったけど、男の子は嬉しそうな顔でスキップとかしてたからさ、怪しいとは感じなかったんだけど…関係あっかな…」

レイは最後は申し訳なさそうに締め括った。


「男の子の服装は?」リクが尋ねる。

「えっと、青のTシャツにベージュの短パン…だったかな…」

「園の人に聞いてきます」

リクはそう言うと走り出した。


リクはすぐに戻ってくると、

「その子、きっと真くんです」

「誰が連れて行ったんだ…」


コウとレイが考え込んでいると、リクが

「まさか…」と呟いた。


コウが「リク、心当たりあるの?」と尋ねる。

リクは、

「わかりません。でも…俺くらいの歳の男で、最近会った奴で、関係があるとしたら…」


「ナツ…か?」コウが後を引き取る。

「ナツ?」レイが首を傾げる。


コウはすぐにタニに電話し、

「タニ、李の運転手、たぶん名前はナツ、住所わかるか」


コウが尋ねると、タニは

「ああ」と答え、住所を言う。


「リク、行こう」

コウが言うとリクは強く頷き返した。


レイはそのまま残ってもらい、オキに久住が動いたら尾行するよう伝えるよう指示をした。


*****


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