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芦塚の動き

*****



調査部は、ひまわりの家と交番勤務の木場の監視を続けていた。



李亡きあと、裏の方で目立った動きはないらしい。


今はどこも様子を見ている状況なのだろう。



会社としては、依頼はないが、當間不動産の関係者である芦塚という、まだ姿を現さない男と木場という警察官、更にその上にいるかもしれない警察関係者をマークしている。


この警察官というのが、笠松の上にいる警察官と同一人物だとしたら、今のうちに叩き潰した方がいいに決まっている。



もちろん会社は正義の味方ではないので、依頼がないと基本動かないが、これらの人間が目の上のたん瘤というか、目障りなのだ。



コーディネーターの染谷は、警察官については木場のことしか話していない。


とりあえず会社としては李の排除をもって、一旦棚上げということになっている。



*****



リクはナツのことを考えていた。


李の側近ということは、李がいなくなれば次の代表の下につくのだろうか。

それとも不要とされるのだろうか…。


リクは、コウが話してくれた「生まれつき持っているものと、環境によって手に入れるもの」について考えた。



ナツはどうだったのだろう。


今、ナツは何を手にしているのか。


これから先、自分たちはもう交わることはないのだろうか。

生きる世界が違ってしまったのなら、自分がナツに干渉してはいけないのだろうか。


いつまでも頭の中がまとまらないまま、リクは考え続けていた。



*****



久しぶりにコウは、あのバーで酒を楽しんでいた。

今夜は誰にも邪魔されませんように、そう祈りながら。



1時間半ほどバーテンダーとの会話を楽しみつつ酒を飲み、バーを出たのは夜11時半頃だった。

路地を抜け、通りに出てタクシーを拾い、運転手に自宅マンションの途中の住所を告げた。


運転手は女性だった。


「それで?」コウが口を開く。


運転手は「ひまわりの家から手を引いて」と言った。


「ひまわりの家?」コウがとぼけて聞き返す。



「當間の息子を殺したいの?」

運転手が脅しをかける。


「うちらには関係ないんでね。

あ、ここでいいですよ」



運転手はタクシーを停めた。


「當間の事業はそんなに魅力的ですか、芦塚さん」

コウはタクシーを降りながら言った。



(あのバーはもう有名なんだな…残念だ)


コウはそう心の中で呟いた。




*****




芦塚が女性であり、コウに接触してきたことは、翌日社長に話した。


社長は「面倒臭いねー」と言いながら、コウの話を聞いていた。




ちょうどその日、調査部が公安からの情報を掴んでいた。


裏社会と警察官との癒着。


よくある話だが、暴力団とは違い、一見健全な企業が持つ裏の顔、というのが厄介で、なかなか尻尾が掴めない。


しかし今回は、公安がマークしていた李が殺され、関係が疑われていた當間不動産の社長、子飼いの藤宮、と立て続けに殺されていたということで、本腰が入ったらしい。



調査部はそこに関わる警察官が誰なのかを探りだした。


やはり木場だった。


木場は、動きやすいように交番勤務を続け、上にコネがあると見せかけて、全て自分が回していたらしい。



翌日、早速木場が公安に拘束された。


木場は全てを自供することはないだろう。特に李の後継者がどう出るか、また芦塚もまだ生きている。




あっけなく終わったかに思えた一連の事件だが、しかし、会社を訪れていたコウと社長に向かって、タニが面白そうに言う。


「木場の9桁の預金さ、見事になくなってるんだよね」




「芦塚か…」コウが呟く。


しかし、これ以上は会社にもコウにも関係のない話だった。


ひまわりの家に住む當間の息子に、芦塚が何をするつもりなのかわからないが、こちらから手を出す筋合いではないのだ。




誰もがそう考えていた。


芦塚がコウに脅しをかけてくるまでは。



「社長、俺に脅しかける奴、野放しでいいんですかね」

コウが煙草を吸いながら、何気ない口調で社長に問う。



社長は苦い顔をしている。


「タニ、どう思う?」社長がタニに聞く。


「社長、なんで俺に振るんですか。困った時だけ俺に頼るの止めてくださいよ」

タニが呆れた顔で社長に言う。


「どうせ止めたって殺るんでしょ、コウは」

タニが結論を出した。




コウが煙草の火を消し、立ち上がる。


「身の程をわからせてやりますよ。

リク、連れて行きますね」


そう言って、コウは部屋を出ていった。



*****


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