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李狙撃の日(前編)

*****


當間の時とは逆で、今度はコウが李を見張っていた。


いつ狙えば確実か、見極めなければならない。リクの仕事なので絶対に失敗はさせられない。



そうはいっても、こんなに外に出ないターゲットも珍しい。警戒しているのだろう。


「外では無理かもしれないな」コウはそう考えていた。

そうすると、オフィスか、ホテルか、駐車場…。


しかし近接戦だと、隙を狙って銃撃はできても、逃げるのが難しい。

人目がない場所となると、やはり地下駐車場か。


コウは李のオフィスビルの地下駐車場に車を停め、様子を窺った。



夜8時頃、李とその部下と思われる若い男が駐車場に現れた。


李の車は白のBMWで、専用の場所に停められている。


後部座席に乗り込むときに狙うとしたら、他の車が邪魔になる。


駐車場に入って来た時に狙えば、部下に反撃されるかもしれない。

部下を先に無効化するか…。


しかしそのやり方だと、チャンスは一度きりになってしまう。顔を合わせることになるからだ。


やはり遠方からの狙撃がいいか…ホテルの正面玄関かな。

コウはつぶやくと車を出した。




コウは自分の考えをリクに話した。


リクもホテルの正面玄関が狙える場所を探すと言い、探し始めた。


しかし、ホテルの前には高いビルが並んでおり、それが邪魔をして他の建物の屋上から狙うのは厳しいということがわかった。


そこでホテルの玄関の東側または西側に位置する建物の、途中の階から斜めに狙うことができないか、とリクは考えた。


その中に、オフィスビルで幸い全ての部屋が埋まっていない建物があった。

5階以上のホテル側にある空き室に入り込み、窓からの眺めを確認する。


すると、7階にある部屋から、ホテルの正面玄関が見え、しかも正面に停まっている車を避けて狙える場所が見つかった。


リクは望遠鏡で、ホテルの正面に車が停まって人の出入りがあるのを見ながら、シミュレーションを繰り返した。

建物の防犯カメラの位置、非常階段、他の部屋の人の出入りなどを確認する。


リクは成功を確信し、建物を後にした。



リクは会社に行き、コウの部屋を訪ねる。


コウに地図を見せながら狙撃場所について話すと、


「うん、いいんじゃないか」とコウが言ってくれた。


コウは続けて、

「一度で決めなくてもいい。タイミングが悪いと思ったらすぐに延期しろ。

人の流れもあるし、1日に朝と夜、2回のチャンスがあると思うんだ」


リクは素直に頷いた。



翌日、リクは狙撃練習場でライフルを撃っていた。

ライフルは、廃倉庫の時に撃っていたし、自信がないわけではなかった。


しかし、今回は前の時よりも少し距離がある。しかも引き金を引くのは1回だけ。

それを外すとしばらく機会はなくなる。


ターゲットの距離まで約200メートル。


(絶対に失敗するわけにはいかない…。)


リクはその日何度も引き金を引き続けた。


*****


決行当日の朝7時。リクは狙撃をする部屋で準備をしていた。



李がホテルを出て来るのは10時頃だが、ここはオフィスビルなので、早めに入り込まないと、他の通勤者と会うことになる。


人との無駄な接触を避けるために、早めに入って待機することにした。



ライフルは、コウが使っているロシア製VSS。


ここで大きな音を出すわけにはいかないので、消音性を重視した。距離も200メートルなら問題ない。



10時に近づく。


いつでも撃てるようにライフルを構える。




白のBMWがホテルの前に停まる。


運転手がわざわざ降りて来ないことは知っている。



李がホテルの玄関から姿を現す。


リクはライフルのスコープを覗き、引き金に手をかける。




その時、ホテルのドアマンが李のために車のドアを開けようと李の前へ出る。


ドアマンと李が重なる。




リクは何度もシミュレーションしていたので、これは想定していた。


車の停車位置やドアマンの動き、立ち位置など、微妙な違いで李と重なってしまうことがあることも。



今回は引き金を引くのを諦めた。


コウにメールする。



今日は一日ここで過ごして、李の帰りを狙うことにする。

集中力が途切れないようにしなければならない。


リクは一人、広い部屋に座り目を閉じた。



*****



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