ナツの制服
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ナツが道路にフラフラと出て来て、護送車の前で倒れた。
護送車は急ブレーキをかけて停止した。
「なんだ、あの子、具合悪いのか…」
「わからんが、用心しろよ」
運転手と助手席の拘置所職員が話し合い、助手席の男が車を降りる。
倒れている人間は全く動かない。
制服を着ている…高校生か…。
「おい、大丈夫か」
職員が声をかける。
とたん、倒れていた人間が跳ね起き、瞬間的に運転席の外まで行き、運転手に銃を向けた。
制服を着ているが、顔は仮面で隠している。
車から降りた職員が、あっと思ったときには、後ろの方で誰かが叫ぶ声と、銃声が聞こえた。
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「はぁ、なんだよこれ! バッカじゃねぇの!」
ナツがコウに向かって吠えている。
隣でリクが笑いを堪えている。
「何って、まあ衣装っていうのかな…」
コウがしれっと答える。
「俺が、なんで、学生服を、着なくちゃ、いけないんだ!」
相変わらずナツが吠え続ける。
「わかるだろ、その方が警戒されないじゃん。
ちゃんと人気のブレザーにしたんだぞ。
あ、それと、今回は顔出しNGだから、この仮面ね、これは俺もつけるから」
コウが続ける。
「リクがやればいいじゃん」
ナツが不貞腐れて言う。
「いや、たまにはナツとも仕事したいじゃんよ」
コウがにっこりと微笑む。
ナツはこれ以上言っても無駄だと悟ってはいた。
しかし、最後にあと一言言いたかった。
「じゃ、高級アイスおごれよ」
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ナツが運転席に向けて銃を構えるのを確認すると、コウは後ろのドアを開け、中に入った。
そして、同乗している警察官が腰を浮かす前に、ターゲット3人に向けて1発ずつ、眉間に銃弾を撃ち込んだ。
3人の位置を把握すると同時の発砲だった。
警察官が何か叫んだが、その時にはコウの仕事は終わっていた。
車を降りると、ナツを見た。
ナツはすぐにコウの方へ向かって走ってきた。
2人で用意してある車に走り、すぐに発進した。
あっという間の出来事で、拘置所職員も警察官も、2人が去って行くまで誰も動くことができなかった。
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「はい、ご褒美のアイスね」
コウが、買ってきたゴディバやハーゲンダッツなどのアイスをナツに差し出した。
「わーい」
ナツとリクが嬉しそうに飛びつく。
「これ、俺んだからな」
ナツがリクに言う。
「はい、はい、でもくれるんでしょ」
リクがわかってますよ、という風にあしらいながらアイスを選んでいる。
コウがそれを見て笑う。
そして、それを見てタニがまた悩む。
(殺し屋のご褒美がアイスかよ…いやご褒美って何だよ)
「あ、タニ、その後伊藤はどんな感じ?」
コウがタニに尋ねる。
「あ…ああ、少しわかってきたぞ」
気持ちを切り替え、タニが資料をモニターに映し出す。
「こいつ、地面師が本業だな。日本中を渡り歩いてるようだ。
その土地、その土地でチームを組む奴らを選んで、自分は表に顔を出さない。
だから尻尾もつかみにくい。
今回選ばれたのが、蒲生だったんだろうな、おそらく他にもいるだろうが」
「思った通りだな。
じゃ教会は関係ないのか」
「いや、それはまだわからん。
教会ナンバー2に声を掛けたってのは、それなりのメリットを狙ってるんじゃないか」
「なるほどな、じゃやはり土地狙いってのが濃厚なのか…しかし…」
コウが考えながら言葉を切った。
「何が引っ掛かる?」
タニが尋ねる。
「いや、土地狙いと言っても、たまたま俺たちの会社だったってのもな。
蒲生は俺たちの仕事を知ってたようだしな」
「まさか一石二鳥を狙ったとか」
タニが疑わしそうに言うが、コウは、
「いや、そうかもしれない。
伊藤は日本中で地面師詐欺を働いて成功してるんだろ、調子に乗っても不思議じゃない。
ここらでもっと大きいことをしようと考えててもおかしくはないだろ」
と言った。
「大きいこと…」
「例えば、他人の金と、他人の事業を手に入れる、とか」
タニがはっとした顔をした。
「会社の乗っ取りか? しかしどうやって…普通の会社だったら株を操作するなり株主を懐柔したりするだろうが、うちは普通の会社じゃないからな」
「しかし、奴は文書の偽造は得意なんだろ。
実際、社長の名義で蒲生はマンションを借りている。
会社の名義もどうとでもできるだろ」
「…いや、まだあるぞ。
いくら会社の名義が社長以外の者になったとしても、誰もついて行かんだろう。
事業自体が立ち行かないさ」
「そこはさ、きっと俺たちのことを知らないんだよ。
殺し屋なんぞは金でどうにでも動かせる、くらいに思ってるんじゃねぇか」
コウが冷ややかに言う。
タニも認めざるを得なかった。
コウが今言ったことが正解だとすると、しっくりくる。
「オッケー、その線で調べる。
会社の登記の確認、それと会社の焼け跡に不審な者が出入りしていないか、まあこちらは一応見張らせてはいるがな」
タニは焼け跡を老人たちに散歩がてら見張るよう頼んでいたのだった。
数日後、呉がある情報を持ってきた。
「うちの会社の土地、中国の市場に売りに出されてるよ」
「マジかー、そうきたか」
タニが頭を抱えた。
「入札かな?」
「そうだね、入札に参加する企業を調べるよ」
「呉さん、頼むよ」
タニが言い、社長とコウに報告した。
「動き出したね」
コウが言い、ニヤリとする。
「私は落札価格が知りたいね」
楽しそうに社長が言う。
俺も楽しむ余裕が欲しい…タニが2人を羨ましそうに見ていた。
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