↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
11/112

リク初の殺し

*****


リクは、仕事がない時は基本トレーニングをしている。


朝の10キロのランニングに始まり、社長に紹介してもらったボクシングジム。


ここには一日中でもいることが多く、黙々とメニューを繰り返していた。




この仕事に就く時に、専門家について、銃やライフルの撃ち方は教えてもらっていた。


しかし練習する場所がなかなか確保できなかったり、ナイフの使い方など、知りたいことも多く、焦る気持ちがあった。


早くコウさんのように一人前になりたい。



コウに会う前から、社長にコウの話は聞いていた。


実際に会うと、穏やかな物腰に関わらず圧倒的な強者の雰囲気があり、コウの前では自我を保つのに一苦労だった。




早く次の仕事をしたい。リクはそう思いながらサンドバッグを打ち続けていた。



*****



コウとリクに次の仕事の話がきたのは、それから一週間ほど経った夜だった。



「麻薬取引現場での一掃…ね」


コウがニヤリとしながらタニの説明を聞いている。



「前もこういうのあったけどさ、本当にどっち側も()っちゃっていいってこと?」


「はい」タニが答える。




「意味がわかんないんだけど、依頼主って誰よ」


「第三者です」




「うわー、横取り? いいの? これって公序良俗に反しないの?」


「今さら、ですね」



「そうだけどさ、なんかイヤな感じだね」



「やりませんか?」


「やるけど…だって何人いるの? 俺しかできないっしょ」




「およそ20人というところでしょうか」


「…」コウが黙り込む。




20人、という数字に恐れはない。今までもそれくらいこなしてきたし、やれるだろう。




ただ…。




今度こそリクの手を汚すことになるかもしれない。


そう考えて、コウは自分の手のひらを見つめた。




「オッケー、リクを呼んで」


コウはそう言うと通信を切った。




*****




コウとリクはコウの部屋でソファに座っている。


コウは仕事の内容をリクに説明したところだった。




「で」コウが言う。


「リク、銃の腕前ってどの程度?」


コウが尋ねる。




リクは、少し考えてから答える。


「30メートルくらいの距離だと100パーセント、ただ動く標的は経験がありません。


それ以上の距離は射撃場で50メートルまでしか撃ったことがなくて…的には当たりますが…」


リクは自信なさげだ。




(出来ないことはないが、経験不足か…仕方ないよな)


コウは考える。




「ライフルは?」


 更にコウが尋ねる。




「銃と同じ感じです」


「オッケー」


コウが軽く返事をすると、リクは少し安心したようにコウを見た。




「じゃ、こうしよう」


それからコウは細かい作戦をリクと話し合った。




*****




当日。午後10時。麻薬取引の現場。廃倉庫。



「まんま、かよ」コウは苦笑する。




いかにも麻薬取引に使われそうな場所。


こんな場所、警察だってマークしてるだろうに…そう考えながら配置につく。




リクは既に自分のいるべき場所にいる。


コウは廃倉庫の閉ざされた大きなドアを少し離れた場所から眺める。




外に見張りが3人。入口は1か所だけなので、見張りもそこだけのようだ。


「楽勝」コウは呟き近づく。




廃倉庫の左側から回りこみ、1人目に近づく。1人目は廃倉庫を背にしてスマホを覗き込んでいる。


コウは全身黒のスポーツウエアを着ているため目立ちにくい、というのもあるが、相手は全く警戒していない。




腰を屈めながら近づき、後ろに回ると立ち上がり、一瞬で相手の首に手を回しぐっと締める。


3秒で落ちた。音がしないように寝かせ、後の2人に近づく。




2人は向かい合って雑談している。


こちらを向いている1人の死角に入るよう、もう1人の背後に回る。




1人目と同じように後ろから手を回し2人目の首を絞めながら、「あっ」という顔をしているもう1人の腹を蹴る。




首を絞めた1人はすぐに意識を失う。


腹を蹴られたもう1人は、腹を抑えながらも顔をこちらに向け、懐に手を入れている。


ナイフでも出すつもりだろう。遅い。




コウは間髪いれず相手の顔に廻し蹴りを食らわす。男は「グエッ」と言ったまま動かなくなった。




コウはすかさず廃倉庫の右側へ回った。


汚れた窓が一つあり、中の様子が伺える。汚れているので、暗い外の方は中からは見えにくい。




中を覗くと、情報通り10人ほどの集団が2つ、向かい合っている。




「いるいる」コウがニヤリと口元を歪める。




窓をそっと開ける。あらかじめ鍵を開け、音がしないよう準備しておいたのだ。


70センチほど開けると、コウはヒラリと中へ忍び込む。




まず狙うのはどちらかのボス。どっちがどっちがわからないので、どちらでもいい。


どうせ向かい合った集団の一番前にいる奴だろう。




狙いやすい方にグロックを向ける。その距離約20メートル。そんなに広くない倉庫でよかった、と考えながらコウは唇をなめた。




「パン!」


グロックがボス(おそらく)の頭を貫く。




それが合図だった。




すぐにもう一方のボス(たぶん)の頭が吹っ飛ぶ。




リクがライフルで狙撃したのだ。




リクは麻薬の取引が始まる前から廃倉庫内に潜んでいた。


廃倉庫の奥に3メートル四方のコンテナが横に3列、縦に2列と高く積み上げられている。


その高さはマチマチで、隠れるスペースなどいくらでもあった。




双方のどちらかにでもブレーンとなる者がいれば、あらかじめ調べることもできただろう。


全く日本の悪党は危機管理がなっていない。




急襲に辺りがパニックになる。


リクが見つからないよう、コウが飛び出し集団を引き付ける。




グロックが1人、また1人と頭や胸を撃ち抜いていく。


その間にもリクがライフルでコウに注意を向けている奴らを撃つ。


2か所から攻撃されていることに気づく者はいない。


集団がコウの近くまで来る。




コウはグロックを左脇のホルスターに収めると、今度は尻のホルスターからナイフを取り出す。


集団の中に銃を持っている者は少ないようだ。




相手もナイフを構えてコウに向かってくる。


コウは左方から振りかざされたナイフを躱し、相手の首の左から右にスッとナイフを引く。


一瞬ののち、相手は首から血を吹き出し声もなく倒れる。


次に来る者も同じように躱しながら首めがけてナイフを払う。


辺りがあっという間に血の海と化す。




リクは相変わらず、淡々と狙撃を続けている。


さすがに、コウがナイフを持っているにも関わらず銃撃を受けているのに気付いた者が、リクに気づいてそちらへ銃口を向ける。


コウがその背中にナイフを投げる。


ナイフは相手の肺に突き刺さり、「ゴボッ」と血を吐いて倒れる。




リクが一瞬コウを見て、すぐにライフルを握り直す。


銃を持っている者はリクの方へ、持っていない者はコウの方へ向かおうとしているが、血の海の中へ入る勇気がないのか、動きが止まってしまっている。


コウは再度グロックを取り出すと、生き残った者たちを一掃するべく引き金を引いた。




「思ったより早く終わったね」


廃倉庫の外でコウがリクに話しかける。




コウの顔は返り血を浴びて赤く汚れている。


「何人撃ったか覚えてる?」


コウが煙草に火をつけながら尋ねる。




「たぶん8人です」


「そう…助かったよ」




それからしばらく、二人の息をする音だけが聞こえていた。




*****

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。