蒲生芳樹
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前回、コウが依頼された仕事についての処理が完了した。
東海林は無罪放免となり、元の部署に戻った。
依頼をしてきた顧客は、罪のない者の命を奪わずにすんだことを感謝し、自分の浅はかな行為を恥じていた。
社長は気にしないよう顧客に言い、これからもよろしく、としっかり恩を売っていた。
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仮事務所に、初めてユゲが出社した。
「皆さん、大変だったね。
火事の時は役に立てなくてすまなかった」
ユゲが言い、差し入れをたくさん持ってきた。
酒、お菓子、たばこ、コーヒー豆、などなど。
皆、喜んで思い思いに欲しいものをぶんどって行った。
リクとナツは、ほとんどのお菓子を、コウはコーヒー豆を、それぞれもらい、ユゲに礼を言う。
「ユゲ、この前は助かった。ありがとうな」
コウが東海林のことで礼を言った。
「いや、私は大したことはしてないよ。
担当部署に繋いだだけだ」
ユゲが手を振りながら言う。
「しかし、コウさん、よく東海林が無実だとわかったね、勘?」
ユゲが聞く。
「まあな、それだけじゃないけどな」
コウが苦笑しながら答える。
リクが、そんな2人の様子をじっと見つめている。
ナツも気づいて、お菓子を食べながら、目の端でリクの顔を見ていた。
「リク…」ナツが呼びかけた。
リクはナツの方を見て、微笑み、
「コウさんてさ、やっぱりかっこいいよね」と言った。
ナツがそれを聞いて、
「えーそうかー? 俺はアガタの方がいいと思うぞ」
と言い、
「それはない」とリク、
「いや、クロもいい」とナツ、
お互いにお菓子をもぐもぐ食べながら言い合っているのを見て、タニが天井を見上げながら(殺し屋だよな…)とぶつぶつと呟いているのだった。
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会社に火をつけるよう鈴本に依頼した蒲生芳樹が、料亭で会っていた男、伊藤の正体が判明した。
本名も伊藤、伊藤幸燿といい、個人で不動産を扱っている。
地面師まがいのこともしているらしい、という。
「それで蒲生の住む、社長名義のマンションが簡単に契約できたんだな」
コウが言う。
「それで、そいつが蒲生と組んでるってことは…」
タニが答える。
「蒲生に聞くか」
コウが言い、
「だな、これ以上のことは調べてもはっきりせん」
タニが結論を出した。
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深夜、コウは蒲生が住むマンションの前にいた。
このマンションの鍵はスマートロックで、スマホのハッキングで開錠できる仕組みだ。
「コウさん、オッケーです。1分後に開けますね」
ザビから、コウのスマホにメッセージが入った。
コウはマンションへ侵入し、きっかり1分後には蒲生の部屋の玄関に立っていた。
鍵が開く時に、ガチャ、と音がしたので、蒲生に気付かれているかもしれないと思い、コウは玄関でしばらく息を潜めた。
どうやら気づいていないようだ。
コウは奥へ入って行く。
寝室と思われる部屋のドアをそっと開け、中を覗く。
思った通り、そこにはベッドがあり、誰かが横になっている。
コウはそっと近づき、横になっている者の顔を確認する。
確かに蒲生だ。
コウは一筋の灯りも入ってこないようにし、自らの目が暗闇に慣れるまで待った。
それからいきなり蒲生の布団を剥ぎ取り、腹を蹴る。
蒲生は寝込みを襲われ、何が起こったのかわからないまま跳ね起きた。
しかし、部屋は真っ暗で、ますます何が起きているのかわからない。
急に眩しい光が蒲生の目に突き刺さる。
コウが懐中電灯の光を蒲生の顔に向けたのだ。
「うわぁぁぁぁ」
蒲生が驚き、ベッドの端まで後ずさる。
しかし残念ながら後ろは壁になっており、それ以上は下がれない。
「だ、誰? 誰だ!」
はぁはぁと荒い息をしながら、蒲生が叫ぶ。
「あんたが燃やした会社のものだよ」
コウがこれ以上ないほど冷酷な声で言う。
「お、俺はそんなことしてない…何のことだ」
蒲生が無駄な足掻きをする。
大胆なことをするわりに臆病者のようだ。
「惚けてもムダだ。ネタは上がってる。
今さらそれが事実かどうかを聞きたいんじゃない。
それをお前の独断でやったのか、それとも組織ぐるみでやったのか、
そして、その、理由、だ」
コウが相変わらず冷たい声で言う。
「わ、わからない、本当に何のことだか…」
蒲生が相変わらず惚ける。
パシッ!
コウがサイレンサーのついたグロックを蒲生に向けて撃った。
耳を掠め、血が飛んだ。
「ひぃ…」
蒲生が気を失わんばかりにブルブル震え出す。
「後はないぞ、次は眉間だ」
コウが言う。
蒲生は震えながら、何をどこまで話すか頭の中で考えている様子だ。
「3、2・・・」
コウが考えさせないように、カウンドダウンを始めた。
「わ、わかった、話す、話すから撃たないでくれ、頼む」
蒲生が手をこちらに出し、コウを制する。
「早く話せ。
まずは組織ぐるみかどうかだ」
「あ、はい、そうです。私は教祖に従ったまでで…」
「理由は?」
「わかりません。教祖が言うことは絶対なので、私は従っ…」
「嘘はバレるぞ、ナンバー2のお前が理由も知らずに1つの会社を燃やすか。
オッケー、埒が明かない。お前を連れて行く。
俺は殺し専門だからな。拷問専門に任せるとする」
コウは蒲生の言葉を途中で遮り、そう告げた。
「わかってやったんだろ、あんたが燃やした会社のこと。
俺たちにあんなことをすれば、自分がどうなるのか、覚悟はあったんだろ」
コウが言い、蒲生の腕を掴んだ。
蒲生はやっと事の重大さが分かったのだろう。
「わ、わかった、話す、今度こそ全部話す」
コウは黙って蒲生を睨みつけた。
蒲生が覚悟を決めたように話し始めた。
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