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蒲生芳樹

*****



前回、コウが依頼された仕事についての処理が完了した。

東海林は無罪放免となり、元の部署に戻った。


依頼をしてきた顧客は、罪のない者の命を奪わずにすんだことを感謝し、自分の浅はかな行為を恥じていた。

社長は気にしないよう顧客に言い、これからもよろしく、としっかり恩を売っていた。



*****



仮事務所に、初めてユゲが出社した。


「皆さん、大変だったね。

火事の時は役に立てなくてすまなかった」

ユゲが言い、差し入れをたくさん持ってきた。


酒、お菓子、たばこ、コーヒー豆、などなど。

皆、喜んで思い思いに欲しいものをぶんどって行った。


リクとナツは、ほとんどのお菓子を、コウはコーヒー豆を、それぞれもらい、ユゲに礼を言う。


「ユゲ、この前は助かった。ありがとうな」

コウが東海林のことで礼を言った。


「いや、私は大したことはしてないよ。

担当部署に繋いだだけだ」

ユゲが手を振りながら言う。


「しかし、コウさん、よく東海林が無実だとわかったね、勘?」

ユゲが聞く。


「まあな、それだけじゃないけどな」

コウが苦笑しながら答える。


リクが、そんな2人の様子をじっと見つめている。

ナツも気づいて、お菓子を食べながら、目の端でリクの顔を見ていた。


「リク…」ナツが呼びかけた。

リクはナツの方を見て、微笑み、

「コウさんてさ、やっぱりかっこいいよね」と言った。


ナツがそれを聞いて、

「えーそうかー? 俺はアガタの方がいいと思うぞ」

と言い、


「それはない」とリク、

「いや、クロもいい」とナツ、

お互いにお菓子をもぐもぐ食べながら言い合っているのを見て、タニが天井を見上げながら(殺し屋だよな…)とぶつぶつと呟いているのだった。



*****



会社に火をつけるよう鈴本に依頼した蒲生芳樹が、料亭で会っていた男、伊藤の正体が判明した。


本名も伊藤、伊藤幸燿といい、個人で不動産を扱っている。

地面師まがいのこともしているらしい、という。


「それで蒲生の住む、社長名義のマンションが簡単に契約できたんだな」

コウが言う。


「それで、そいつが蒲生と組んでるってことは…」

タニが答える。


「蒲生に聞くか」

コウが言い、


「だな、これ以上のことは調べてもはっきりせん」

タニが結論を出した。



*****



深夜、コウは蒲生が住むマンションの前にいた。

このマンションの鍵はスマートロックで、スマホのハッキングで開錠できる仕組みだ。


「コウさん、オッケーです。1分後に開けますね」

ザビから、コウのスマホにメッセージが入った。


コウはマンションへ侵入し、きっかり1分後には蒲生の部屋の玄関に立っていた。

鍵が開く時に、ガチャ、と音がしたので、蒲生に気付かれているかもしれないと思い、コウは玄関でしばらく息を潜めた。


どうやら気づいていないようだ。

コウは奥へ入って行く。


寝室と思われる部屋のドアをそっと開け、中を覗く。

思った通り、そこにはベッドがあり、誰かが横になっている。


コウはそっと近づき、横になっている者の顔を確認する。

確かに蒲生だ。


コウは一筋の灯りも入ってこないようにし、自らの目が暗闇に慣れるまで待った。


それからいきなり蒲生の布団を剥ぎ取り、腹を蹴る。


蒲生は寝込みを襲われ、何が起こったのかわからないまま跳ね起きた。

しかし、部屋は真っ暗で、ますます何が起きているのかわからない。


急に眩しい光が蒲生の目に突き刺さる。

コウが懐中電灯の光を蒲生の顔に向けたのだ。


「うわぁぁぁぁ」

蒲生が驚き、ベッドの端まで後ずさる。

しかし残念ながら後ろは壁になっており、それ以上は下がれない。


「だ、誰? 誰だ!」

はぁはぁと荒い息をしながら、蒲生が叫ぶ。


「あんたが燃やした会社のものだよ」

コウがこれ以上ないほど冷酷な声で言う。


「お、俺はそんなことしてない…何のことだ」

蒲生が無駄な足掻きをする。

大胆なことをするわりに臆病者のようだ。


「惚けてもムダだ。ネタは上がってる。

今さらそれが事実かどうかを聞きたいんじゃない。

それをお前の独断でやったのか、それとも組織ぐるみでやったのか、

そして、その、理由、だ」

コウが相変わらず冷たい声で言う。


「わ、わからない、本当に何のことだか…」

蒲生が相変わらず惚ける。


パシッ!


コウがサイレンサーのついたグロックを蒲生に向けて撃った。


耳を掠め、血が飛んだ。


「ひぃ…」

蒲生が気を失わんばかりにブルブル震え出す。


「後はないぞ、次は眉間だ」

コウが言う。


蒲生は震えながら、何をどこまで話すか頭の中で考えている様子だ。


「3、2・・・」

コウが考えさせないように、カウンドダウンを始めた。


「わ、わかった、話す、話すから撃たないでくれ、頼む」

蒲生が手をこちらに出し、コウを制する。


「早く話せ。

まずは組織ぐるみかどうかだ」


「あ、はい、そうです。私は教祖に従ったまでで…」


「理由は?」


「わかりません。教祖が言うことは絶対なので、私は従っ…」


「嘘はバレるぞ、ナンバー2のお前が理由も知らずに1つの会社を燃やすか。

オッケー、埒が明かない。お前を連れて行く。

俺は殺し専門だからな。拷問専門に任せるとする」

コウは蒲生の言葉を途中で遮り、そう告げた。


「わかってやったんだろ、あんたが燃やした会社のこと。

俺たちにあんなことをすれば、自分がどうなるのか、覚悟はあったんだろ」

コウが言い、蒲生の腕を掴んだ。


蒲生はやっと事の重大さが分かったのだろう。

「わ、わかった、話す、今度こそ全部話す」


コウは黙って蒲生を睨みつけた。


蒲生が覚悟を決めたように話し始めた。



*****


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