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国の機密データ

*****



「面白いな、それ」

コウが楽しそうに言う。


「いや、笑い事じゃないからな」

タニが憮然とした顔で答える。


「社長に成りすまして何かやるつもりってことか」

コウが考えながら言うと、


「そう考えるのが妥当だろうな。

会社を燃やし、社長名義のマンションで暮らし…次は社長の排除か」

タニが言う。


「社長になりたいなら整形も必要だな。似ても似つかないし年齢も違う。

なんで社長なんかになりたいんだ?

ミズキになりたいってんならわかるけどな」

コウが言う。


「お前たち、俺がここにいること忘れてないか」

社長が口を挟む。

「言いたい放題だな、まったく」


一応、仮事務所で今後の打ち合わせをしている最中だ。


『真理の扉』のナンバー2である蒲生芳樹が、鈴本を使って会社を燃やし、なおかつ社長名義のマンションで暮らしていることまでは判明した。


先日、その蒲生と料亭で会っていた男についてはまだ不明のままだ。

鈴本に聞いたが知らなかった。


あとは動機も不明だが、結局蒲生本人に直接口を割らせる方が早い、という結論に達しつつあった。


「たださ」

コウが言う。

「それが蒲生単独の企みなのか、『真実の扉』の組織的な企みなのか、そこを先にはっきりさせた方がよくないか。

組織的なものだとして、蒲生が自分を犠牲にして自分だけの犯行だと言ってしまえば、トカゲの尻尾切りになりかねん。

俺は組織が関係していると思うんだがな」


皆が考える。


「確かにそうだな」

タニが言う。

「結構大きなバックグラウンドがあるにも関わらず、単独犯てことはねぇよな」


「じゃあ、引き続き、動機と伊藤という男の正体を調べてみるか」

タニが言い、その日の打ち合わせは終わった。



*****



コウは久しぶりに依頼を受けていた。


古株の顧客からの直接の依頼であり、コウをご指名だった。


タニから説明を受ける。

「ターゲットは東海林敦。総務省勤務、ノンキャリだが仕事ができるため、それなりの仕事を任されている」


「へー、悪いことしなさそうに見えるがな」

コウが、何枚か隠し撮りをされた写真を見ながら言う。


「見た目はな…いや、実際善良な人間なんだろうとは思うよ、環境さえ合ってればな。

ノンキャリっていうのはさ、キャリア組と自分を比べて劣等感を感じる者が多いんじゃないかな。

キャリアよりも実務はできるのに、待遇が違う。

そうなれば不満も嫉妬も出て来る。そしてそこに付け込む下衆も這い出て来る」

タニが残念そうに言う。


「珍しく同情してんな」

コウが言う。


「いや、そうじゃない。

どういう事情があれ、国の機密を盗んだんだ。重罪だよ」

タニが言う。


「そういうことか。公安は動かないのか」

コウが聞く。


「動かない。

今回は証拠もあるんだが…うちの顧客が許さないらしい」


「直接関係してんのか。

よっぽど手痛い目に遭わされたか」


「顧客が開発したもののデータらしい。

詳しくは知らん。聞いてもどうせわからんしな。

それを持ち出されたことにより、結局その計画がおじゃんになるそうだ。

一度外に出てしまったものは使えない、とさ」


「そうか、仕方ないな。

そのデータを渡す相手は放っといていいのか」


「ああ、結局相手には渡っていないらしい。

穿ると藪蛇になる可能性もあるからな」


「しかし、そいつはとっくに逃げてんだろ、居場所はわかるのか」

コウが聞くと、


「ああ、母方の実家に匿われているらしい。

そこがかなりの名家らしくてな、敷地がとにかく広い。

敷地の中に、屋敷が5棟、蔵が10棟、山の中に山小屋あり、馬小屋あり、犬小屋あり…


その中のどれかにはいるらしい。

どうだ、だいぶ絞れてるだろ」

タニがわざと得意そうに言う。


コウが答える。

「じゃ、まず犬小屋からだな」


「頼むから犬や馬は傷つけないでくれよ」

タニが言う。


「ああ、俺は犬好きだからな、そこは気をつけよう」

コウが高らかに宣言して、タニの説明は終了した。



*****



早速、コウは東海林の母方の実家とやらに向かった。

そこはコウたちが拠点とする場所から、車で半日かかる田舎にある。


今回、コウはキムを連れて来ていた。

キムはまだ訓練中だが、たまに実践を経験した方がいいだろうとうことで、

また、今回東海林を探す場所が広いため、コウ1人では時間がかかるだろうということもあって、

キムに白羽の矢が立ったのだ。


「コウさん、何でもしますから指示をお願いします」

キムはやる気満々でコウに言う。


「ああ、こき使うから安心しな」

コウも答え、早速2人で東海林が隠れていそうな場所に当たりをつけていく。


「これだけ広いと、普通に屋敷の一室にいてもわからんだろうがな…。

むしろ山小屋の方が見つかりやすいよな」


ということで、まずは屋敷から見ていくことにする。

コウたちは敷地の図面を見て、屋敷に番号を振った。


「俺が1番から見るから、キムは5番からな。

途中で鉢合うだろうから、その次は蔵だな」

コウが段取りを伝える。


「はい」

キムが答え、


「くれぐれも見つかるなよ。向こうは武器など持ってないはずだが、油断はするな」

コウが言うと、キムはしっかり頷き、2人は分かれていった。



コウがまず最初の屋敷に忍び込む。平屋だ。

人の気配はない。

場所的に見て、誰も住んでいない家屋かもしれない。


コウは少し埃っぽい廊下を進んでいき、少し進む度に耳を澄ます。

誰も住んでいない家屋だからこそ、匿うには最適かもしれない。


そっと一部屋ずつ見ていくが、ここには誰も潜んでいないようだ。


次の屋敷も同様だった。


3つ目の屋敷に入りかけて、キムが見えた。

キムは「何もなかった」というように、首を横に振った。


コウがキムに蔵の方へ行くよう、手で合図をすると、キムはすぐに理解し、蔵の方へ去って行った。


コウは3つ目の屋敷に入った。

何となく人の気配がする。

今までの屋敷とは違う空気があった。


そっと廊下を進む。

耳を澄ますと、廊下の先の右側の部屋から灯りが漏れ、そこから人の話し声が聞こえた。


隣の部屋に入り、壁に耳をつける。

話し声が聞こえやすくなる。


「ええ、そうね、うまくいっているわ。

誰かが来ても、絶対にわからないもの」


年配の女性の声だけが聞こえる。

どうやら電話で話しているようだ。


しかし、話の内容から察するに、匿っている東海林のことのようだ。


『絶対にわからない』場所…コウは考えた。

隠し部屋的な場所があるのだろうか。


(仕切り直そう)そう考え、キムに合図を送った。



*****


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