乗っ取り
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リクとミヤがファイトクラブのあるジムに着いたのは夜9時頃だった。
ギャラリーに混じって中に入り込む。
リングの上では、今にも試合、いや殺し合いが始まりそうである。
リクは人混みを分けてリングに近づく。
ミヤも、リクと反対側からリングに近づいていく。
試合の始まりのゴングが鳴った。
同時に強い方が弾むように相手に近づく。
相手はビクビクしていて、逃げることしか考えていない体勢である。
その時、リクが天井に向けてベレッタを発砲した。
皆がはっとして静まり返る。
続けて、リクはリング上の強い奴に向けて撃った。
胸に1発、そしてリングに上がり、さらに一発撃ち、相手が起き上がらないことを確認する。
周りを見ると、案の定パニック状態で、ギャラリーが右往左往している。
そして、1人、また1人、リングの上に上がってきた者がいた。
(よし)リクがニヤリとして、ミヤの方を確認する。
ミヤも頷き返す。
有無を言わさず、リクが1人に向けて発砲した。
もう1人がリクに向かって来ようとしたが、ミヤの銃弾に倒れた。
あと1人…。
リクとミヤが周りを見る。
少し離れたところで、誰かを守るように立つボクシングパンツを履いた男が見えた。
庇っているのが胴元の田所のようだ。
リクとミヤがそちらに近づいていく。
ギャラリーたちは出口が見つからず、相変わらずパニック状態にある。
男が田所を置いて逃げようとした。
が、遅かった。
ミヤがまず男を撃った。
1度では倒れず、2度目は眉間を撃ち抜いた。
後ろに庇われていた田所が
「ヒーっ」と言って、立ちすくんでいる。
ここでギャラリーの注目を集めなければならない。
リクはポケットからあるものを取り出し、ライターで火をつけた。
それは、田所の近くの天井付近でキラキラと輝き、一瞬でパッと散った。
あたりは静まり返った。
皆、何が起きたかわからず呆然としている。
皆が注目している天井の下に田所はいた。
リクは田所に向けて、パン、パン、パン、パン、パン、と5発続けて撃った。
そしてリクとミヤは反対に向かって走り出し、塞いでいた出口を解放して出て行った。
逃げる途中でミヤが、
「花火?」とリクに聞いた。
「そう、きれいだったろ」
リクが答え、2人で笑い合い、グータッチをした後、二手に分かれて走り去った。
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レイが『真理の扉』の本部の駐車場から出てくる車を見張っていた。
蒲生の車は、鈴本に聞いて判明している。
ブルーのメルセデスベンツCクラス…ベンツのエントリーモデルと言われているが、30歳そこそこで乗り回すには上等な車だろう。
駐車場から蒲生が出てきた。
レイが連絡すると、すぐにオキが尾行を始める。
蒲生の自宅は、調査部が調べても出てこなかった。
他人名義の部屋か、ホテル住まいなのかもしれない。
オキはその蒲生の自宅を確定するべく、尾行をしているのだ。
蒲生が運転する車は、高級料亭の駐車場に入って行った。
誰かと待ち合わせなのか…。
次はミズキの出番である。
蒲生が料亭に入ってから15分後、ミズキが飛び込みの客のフリをして入っていく。
「申し訳ない、予約はしていなんだが、せっかく近くまで来たものでね。
こちらの土瓶蒸しが絶品だと聞いて…1人分いただくわけにはいかないだろうか」
美麗なミズキの、神がかった微笑みと巧みな話術で、頼まれて断れる人間などいない。
「どうぞどうぞ」
と女将がミズキを奥へ案内した。
ミズキは個室へ通され、注文をする。
女中が下がると、窓を開け、ザビを入れる。
ザビがそっと廊下を伺い、ずらっと並んだ個室を1つ1つ覗いていく。
個室の扉は襖なので、音は全くしない。
そして、ある部屋を除いた時、そこにいた。
蒲生と、もう1人の男。
ザビは男の顔を目に焼き付け、そっと外へ出た。
外ではオキが待っている。
オキの車に近づくと、
「俺は新顔の男が出て来るのを待って写真を撮ってから帰る」と言い、すぐに離れた。
やがて蒲生が1人で出てきた。
オキはそのまま蒲生を尾行した。
蒲生はしばらく運転すると、あるマンションの駐車場に車を停めた。
オキは蒲生が入っていった部屋を確認すると、タニに連絡した。
「その部屋の名義は…なに?…まさか…」
タニが動揺し、傍にいる社長の顔を見る。
近くにいた社長が、
「どうした? お前がそんなに動揺するなんて珍しいな」
と言って、タニのモニターを覗き込む。
「・・・・・ん?」
社長の頭の上にハテナマークが並んでいる。
「え?・・・・・」
ハテナマークが増えた。
「どういうこと?」
社長がタニに聞いた。
「いや、こっちが聞きたいですよ。
これって、社長の名義ってことですよね!」
タニが半分叫び声で言う。
「うん…そうだね…
で、どういうこと?」
相変わらず社長はとんちんかんだ。
そんな社長を目にして、タニが少し落ち着いてきた。
「社長のマンションじゃないってことで、いいですか?」
と聞く。
「うん、見覚えないね」
と社長が答える。
「じゃあ…名前乗っ取られてますよ」
タニが静かに伝えた。
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一方、蒲生が料亭を出てから30分後、蒲生と同席していた男が出てきた。
ザビが写真を撮る。
何枚か撮影し、すぐにその場を離れた。
男のすぐあとに料亭を出ようとしたミズキが、そこにいた料亭の女中に話しかけた。
「あの方、さっき帰られた…知り合いに似ているんですが、綾小路さんですよね」
女中はふふっと微笑み、
「そんなお名前じゃありませんよ。
確か、もっと普通の…伊藤さん…だったかしら」
と教えてくれた。
ミズキは、「なんだ、他人の空似だったか」と言って照れ笑いをし、女中を虜にして料亭を後にした。
「伊藤か…本名かどうかはわからんが、調べてみよう」
タニが調査部に伝え、ザビが撮影した写真と共に、『真理の扉』の関係者から「伊藤」という名前を調べ始めた。
そこへ社長の名前乗っ取りが発覚し、仮事務所は一時騒然となるのだった。
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