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リクが組む者

*****


オキが男を尾行する。

オキは尾行のプロなので絶対に気付かれない。


男はアパートの敷地に入り、外階段を上がって2階の一番奥の部屋へ入っていった。

部屋の明かりが灯る。


男の自宅なのだろう。

古く、見たところ1DKほどの広さのアパートのようだ。

あんな高そうな車に乗っている奴の部屋ではない。


オキはタニに連絡して、男の自宅と思われるアパートを突き止めたことを報告した。

部屋のドアにも、郵便受けにも名前はない。


タニのシステムで住所から割り出せればいいのだが。


レイの連絡があるまでそこで待機することにし、オキは不審に思われないような場所を探して落ち着いた。



一方レイは、女が運転する車を追っていた。

女の年恰好から、七隈彩本人と思われる。


写真を撮り、タニに送っていたがまだ確認はできていない。


女が運転する車は『真理の扉』のある方向とは違う方へ向かっていた。

そして到着したのは…。


「大学?」

レイは虚を突かれた。


確かに、年齢的に大学生でもおかしくはない…いやむしろ当然かもしれない。

しかし宗教団体というバックグラウンドに気をとられていたため、少し呆然となる。


レイはタニに報告し、オキを拾って一旦仮事務所へ戻ることにした。


大学に籍を置いているなら調べるのも簡単だろう。



「お疲れさん」

2人が仮事務所へ帰ると、タニとコウ、シキミが出迎えた。


「男と女の身元が割れたよ」

タニがレイとオキに言う。

他の2人は既に聞いていたようだ。


「男の名前は鈴本シイナ、女はやはり七隈彩、青葉国際大学の1年だ」


「で、2人はお嬢様と使用人って感じですかね」

オキが言う。


「そう見えるよな。聞いてみないとはっきりはしないが…」


「じゃあ、聞きにいきますか」

コウが言う。


「コウ、少し休め」

タニが止める。

「みんなもだ。2人は他の奴らに見張らせる。

明日再開だ」


「確かに、少し休んだ方がいいな」

シキミが言い、コウも同意した。


「オッケー、じゃ明日奴とおしゃべりだな」

そう言って、皆解散した。


仮事務所は以前の会社ほど広くはないが、部屋がいくつかあり、コウとシキミの部屋はそれぞれ確保してもらっていた。


コウはその一室に入ると、用意してくれていたソファに身を投げ出した。

横になってみると、やはり疲れていたことを体が教えてくれた。

コウはそのまま目を瞑ると、すぐに眠りについたのだった。



*****



リクは、会社が炎上した後、コウたちと一緒に防犯カメラの解析をしていた。

会社に火をつけた男が判明したため、別の仕事をタニに依頼されていた。


ターゲットは、ある会社員。

一見普通の会社員に見える。


朝出社し、朝礼のあと営業に出かける。

取引先を何件か訪問した後会社に戻り、事務仕事をして退社する。

その繰り返し…。


だがその会社員にはその後の顔があった。

男は毎週金曜日の退社後、ボクシングジムに行く。


そこは通常の営業時間は普通のボクシングジムであり、プロを目指す者もいれば、ダイエット目的で通う女性もおり、普通の営業をしている。


しかし、金曜日の夜だけは様相が変わっていた。

『ファイトクラブ』に変わるのだ。


そのファイトクラブを運営するのが、その会社員、田所弥一である。

そして、それはファイトクラブとは名ばかりの、殺人ゲームの場であった。


強い者と弱い者を戦わせ、弱い者が息絶えるまで殴らせる。

賭けるのは、その時間。


当然弱い者は、借金のカタに連れてこられた者や、騙されて連れてこられた者、拉致された者など。

強い者には相手を殺す時間が短ければ短いほど報酬が高く、強者がこぞって応募してくる。


そしてその胴元である田所の懐にも、多額の賭け金が入ってくるというわけだ。


「でも、田所だけ殺っても、だれかが後を引き継ぐんじゃないですか」

リクがタニに聞く。


「その通りだな」タニが答える。


「だから、加害者を皆殺ってもらう。

しかも、後を引き継ぐ者が出ないよう、ギャラリーの前で殺る必要がある」


「加害者って何人ですか?」

リクが聞く。


「えっと、いつも参加している殺人マシンは4人、こいつらを殺ってほしい。

が…もちろんリク1人にやらせはしない。

そんなことしたら、俺がコウに殺される」

タニが言うと、リクが苦笑した。


「否定できません」


「リクは誰と組みたい?」タニが聞く。


「俺は…」

リクは言い淀む。

以前コウに「俺以外とは組むな」と言われていた。


どうしよう…ナツとは組んだことがあるが、それは別だ。

リクは言った。

「1回、コウさんと相談してもいいですか」


タニが一瞬間をおいて答える。

「ああ、そうだな、いいよ」

その後に「まったく、あいつは…親か、兄か、恋人か、いやそれ以上だな」

とブツブツ呟いているのに、リクは気づかなかった。



リクがコウの部屋をノックした時、コウは深い睡眠から目覚めたところだった。

髪が乱れている。


「コウさん、今大丈夫ですか? お疲れ、ですよね」

リクがおずおずと入ってくる。


「いや、今よく寝て起きたところだ。絶好調だよ。どうした?」

コウが自分の髪を片手でワシャワシャとかき混ぜながら、微笑んでリクを迎える。


コウさんはいつも俺を全力で迎えてくれる。

リクは嬉しくて、コウのすぐ近くまで行くと、タニとの会話を話した。


「誰と組みたいかって聞かれて、組みたいのはコウさんだけですけど、他の人とも組んでみた方がいいのかな、とも思ってて…」


コウは少し考えて答えた。

「うん、前は俺以外とは組むなって言ったけど、あの頃よりリクもだいぶ成長してるからな。

いつまでも俺専用にしてちゃ、リクの成長が止まってしまうな」


「コウさんと一緒に仕事する方が、一番成長してる気はしますけど」

リクが言う。


コウが笑う。

「じゃ、違う成長をみせてくれるか。

そうだな、リクは俺とナツ以外だったら、誰と組んでみたい?」


「うーん…」

とリクはしばらく考えたあと、

「ミヤさんかな」と答えた。


「どうして?」

コウが聞くと、


「ミヤさんは同じくらいの歳だし、なんだか重いものを背負っているようで気になります。

少し、横に並んでみたい、というか…うまく言えませんけど」

リクは躊躇いがちにそう答えた。


コウは理解できた。

ミヤが一家殺人の生き残りで、5年間意識不明だったあと、犯人をその手で殺したという過去をもっていることを知っている。


リクは知らないうちにそういうものを感じ取り、ミヤを気にかけていたのだろう。


「ああ、いい組み合わせだ」

コウが言った。


リクが嬉しそうに頷く。


「今日は金曜日か、今夜決行だな。

くれぐれも油断するなよ」


「はい!」

リクは答えると、部屋を出てタニに報告に行くのだった。


*****


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