リクが組む者
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オキが男を尾行する。
オキは尾行のプロなので絶対に気付かれない。
男はアパートの敷地に入り、外階段を上がって2階の一番奥の部屋へ入っていった。
部屋の明かりが灯る。
男の自宅なのだろう。
古く、見たところ1DKほどの広さのアパートのようだ。
あんな高そうな車に乗っている奴の部屋ではない。
オキはタニに連絡して、男の自宅と思われるアパートを突き止めたことを報告した。
部屋のドアにも、郵便受けにも名前はない。
タニのシステムで住所から割り出せればいいのだが。
レイの連絡があるまでそこで待機することにし、オキは不審に思われないような場所を探して落ち着いた。
一方レイは、女が運転する車を追っていた。
女の年恰好から、七隈彩本人と思われる。
写真を撮り、タニに送っていたがまだ確認はできていない。
女が運転する車は『真理の扉』のある方向とは違う方へ向かっていた。
そして到着したのは…。
「大学?」
レイは虚を突かれた。
確かに、年齢的に大学生でもおかしくはない…いやむしろ当然かもしれない。
しかし宗教団体というバックグラウンドに気をとられていたため、少し呆然となる。
レイはタニに報告し、オキを拾って一旦仮事務所へ戻ることにした。
大学に籍を置いているなら調べるのも簡単だろう。
「お疲れさん」
2人が仮事務所へ帰ると、タニとコウ、シキミが出迎えた。
「男と女の身元が割れたよ」
タニがレイとオキに言う。
他の2人は既に聞いていたようだ。
「男の名前は鈴本シイナ、女はやはり七隈彩、青葉国際大学の1年だ」
「で、2人はお嬢様と使用人って感じですかね」
オキが言う。
「そう見えるよな。聞いてみないとはっきりはしないが…」
「じゃあ、聞きにいきますか」
コウが言う。
「コウ、少し休め」
タニが止める。
「みんなもだ。2人は他の奴らに見張らせる。
明日再開だ」
「確かに、少し休んだ方がいいな」
シキミが言い、コウも同意した。
「オッケー、じゃ明日奴とおしゃべりだな」
そう言って、皆解散した。
仮事務所は以前の会社ほど広くはないが、部屋がいくつかあり、コウとシキミの部屋はそれぞれ確保してもらっていた。
コウはその一室に入ると、用意してくれていたソファに身を投げ出した。
横になってみると、やはり疲れていたことを体が教えてくれた。
コウはそのまま目を瞑ると、すぐに眠りについたのだった。
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リクは、会社が炎上した後、コウたちと一緒に防犯カメラの解析をしていた。
会社に火をつけた男が判明したため、別の仕事をタニに依頼されていた。
ターゲットは、ある会社員。
一見普通の会社員に見える。
朝出社し、朝礼のあと営業に出かける。
取引先を何件か訪問した後会社に戻り、事務仕事をして退社する。
その繰り返し…。
だがその会社員にはその後の顔があった。
男は毎週金曜日の退社後、ボクシングジムに行く。
そこは通常の営業時間は普通のボクシングジムであり、プロを目指す者もいれば、ダイエット目的で通う女性もおり、普通の営業をしている。
しかし、金曜日の夜だけは様相が変わっていた。
『ファイトクラブ』に変わるのだ。
そのファイトクラブを運営するのが、その会社員、田所弥一である。
そして、それはファイトクラブとは名ばかりの、殺人ゲームの場であった。
強い者と弱い者を戦わせ、弱い者が息絶えるまで殴らせる。
賭けるのは、その時間。
当然弱い者は、借金のカタに連れてこられた者や、騙されて連れてこられた者、拉致された者など。
強い者には相手を殺す時間が短ければ短いほど報酬が高く、強者がこぞって応募してくる。
そしてその胴元である田所の懐にも、多額の賭け金が入ってくるというわけだ。
「でも、田所だけ殺っても、だれかが後を引き継ぐんじゃないですか」
リクがタニに聞く。
「その通りだな」タニが答える。
「だから、加害者を皆殺ってもらう。
しかも、後を引き継ぐ者が出ないよう、ギャラリーの前で殺る必要がある」
「加害者って何人ですか?」
リクが聞く。
「えっと、いつも参加している殺人マシンは4人、こいつらを殺ってほしい。
が…もちろんリク1人にやらせはしない。
そんなことしたら、俺がコウに殺される」
タニが言うと、リクが苦笑した。
「否定できません」
「リクは誰と組みたい?」タニが聞く。
「俺は…」
リクは言い淀む。
以前コウに「俺以外とは組むな」と言われていた。
どうしよう…ナツとは組んだことがあるが、それは別だ。
リクは言った。
「1回、コウさんと相談してもいいですか」
タニが一瞬間をおいて答える。
「ああ、そうだな、いいよ」
その後に「まったく、あいつは…親か、兄か、恋人か、いやそれ以上だな」
とブツブツ呟いているのに、リクは気づかなかった。
リクがコウの部屋をノックした時、コウは深い睡眠から目覚めたところだった。
髪が乱れている。
「コウさん、今大丈夫ですか? お疲れ、ですよね」
リクがおずおずと入ってくる。
「いや、今よく寝て起きたところだ。絶好調だよ。どうした?」
コウが自分の髪を片手でワシャワシャとかき混ぜながら、微笑んでリクを迎える。
コウさんはいつも俺を全力で迎えてくれる。
リクは嬉しくて、コウのすぐ近くまで行くと、タニとの会話を話した。
「誰と組みたいかって聞かれて、組みたいのはコウさんだけですけど、他の人とも組んでみた方がいいのかな、とも思ってて…」
コウは少し考えて答えた。
「うん、前は俺以外とは組むなって言ったけど、あの頃よりリクもだいぶ成長してるからな。
いつまでも俺専用にしてちゃ、リクの成長が止まってしまうな」
「コウさんと一緒に仕事する方が、一番成長してる気はしますけど」
リクが言う。
コウが笑う。
「じゃ、違う成長をみせてくれるか。
そうだな、リクは俺とナツ以外だったら、誰と組んでみたい?」
「うーん…」
とリクはしばらく考えたあと、
「ミヤさんかな」と答えた。
「どうして?」
コウが聞くと、
「ミヤさんは同じくらいの歳だし、なんだか重いものを背負っているようで気になります。
少し、横に並んでみたい、というか…うまく言えませんけど」
リクは躊躇いがちにそう答えた。
コウは理解できた。
ミヤが一家殺人の生き残りで、5年間意識不明だったあと、犯人をその手で殺したという過去をもっていることを知っている。
リクは知らないうちにそういうものを感じ取り、ミヤを気にかけていたのだろう。
「ああ、いい組み合わせだ」
コウが言った。
リクが嬉しそうに頷く。
「今日は金曜日か、今夜決行だな。
くれぐれも油断するなよ」
「はい!」
リクは答えると、部屋を出てタニに報告に行くのだった。
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