仮事務所
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とにかく依頼も来ているので、仕事もこなさなければならない。
ということで、新人たちを中心に依頼ができるよう、仮の事務所を設営した。
街外れのテナントビルの最上階である7階が空いていたため、1フロアを借りてそこを事務所とした。
必要な機材はタニが手配した。
それぞれの武器は各自が持ち出していたため、弾丸と防弾チョッキを注文した。
ライフルなどが必要な時は、その都度クロが調達してくることになった。
とりあえず仕事ができる状態になる。
タニは、イサ、セリ、カン、ミヤにそれぞれ依頼を振り分け、必要な時はオキやレイ、ザビを使うよう言った。
キムはまだ訓練中のため、そのまま訓練を続けさせた。
さて、あの男の行方はまだわからない。
ただ、少しずつだがカメラの映像が見つかりだした。そして…
会社から離れた場所では大丈夫だと考えたのか、とうとう県境の国道のガソリンスタンドに映っているのを確認できた。
車のナンバーまでは見えなかったが、車種はわかった。
黒のJeep CONPASS…よく見る車ではないので探しやすいだろう。
隣県で、今度は車を目指して探していく。
今までよりも見つかる頻度が数段高くなった。
最終的にある駐車場に止まったその車を発見した時は、皆歓喜した。
前進だ。
「よし、行ってくる」
コウが言い、シキミが「俺も」と続く。
「アガタはいい」
「俺も」という前にアガタは却下された。
「えーなんでよ、面白そうなのにー」
アガタが文句を言いながら、ついて行こうとする。
「お前、騒がしいからな、逃げられる」
シキミが言い、みんなでアガタを取り押さえた。
その隙に2人はそそくさと出かけて行った。
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午後8時。
目の前の駐車場には、カメラの映像で見た、あの車があった。
コウとシキミは建物の陰から周囲を見回した。
この近くにいるはずだが、どこに行ったかまではわからなかった。
しかし、ナンバーがわかったので、車の持ち主が判明した。
七隈彩。女か…。
映像に映っているのは確かに男だったが。
その名前に思い当たりがある者はおらず、
調べても何も出てこない。
「とにかく張るしかないな」
コウが言い、シキミが頷いた。
自分たちの車に戻り、目標がよく見える位置に停車させた。
あとは待つのみ。
一晩交代で寝ながら張り込んでいると、朝6時、動きがあった。
シキミが寝ているコウを起こした。
「奴だ」
コウもすぐに目を覚まし、車の方を見る。
男が車のドアに手をかけている。
「よし、出かけるぞ、つけよう」
シキミがエンジンをかける。
車はコウたちが止めている場所と反対方向へ向かって走り出した。
シキミも少し間を置いてついて行く。
市街地を走り、県境を超える。
「おい、こっちは…」
「ああ、戻ってるな」
車はコウたちの拠点があった街へ近づいていく。
しばらく行くと、車はある建物の地下駐車場へ入って行った。
シキミも慎重に入って行く。
目標が空きスペースを探して走行しているのを、別の列から死角になるよう追尾する。
車が停まった。
男がエレベーターホールへ向かう。
コウが1人で何気なく後を追う。
男がエレベーターに乗り込み、ドアが閉まるのを確認してから近づく。
エレベーターは上へ上っていき、9階で止まった。
コウは車へ戻り、
「9階だ。何がある」
と聞く。
既にタニが調べを始めている。
「おい、9階は何もないぞ」
「なに、釣られたのか」
「いや、10階かもしれない。
10階に、ある組織が入っている」
タニが少し慎重な声を出す。そして、
「『真理の扉』」
と言った。
「『真理の扉』って、あの宗教団体か」
コウが言う。
「ああ、最近よく聞くだろ、怪しさ満載の新興宗教団体だ」
タニが言う。
「それがなんでうちを狙う…?」
「わからん。その男が本当にそこに行ったのかどうかもわからんし、とにかく調べる。
そいつはどうする」
「そうだな…まだ俺たちが気付いてることは隠してた方がいいな。
レイに任せられるか」
「わかった、手配する。
レイと交代するまで張り付いといてくれ」
タニとの電話が終わると、2人はまた男が出て来るのを待った。
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「やはりあの宗教だ。
車の持ち主の七隈彩と『真理の扉』が繋がった」
コウとシキミが仮事務所へ戻るなり、タニが興奮したように報告してきた。
「七隈彩はまだ18歳、しかし『真理の扉』の幹部、七隈征爾の娘だ」
タニが続けて言う。
「男が動いた。レイが追ってるから、もしあそこが自宅近くの駐車場なら男の身元も割れるんだがな」
「ああ、しかしなんで奴らが会社を狙ったんだ?
今まで何の関りもなかったよな」
コウがタニに聞く。
「そうなんだ。顧客にも聞いてみたが、関わりのある人たちはいない。
社長も首を傾げている」
「何か目立つことをしたくて、たまたまここを狙ったとか…」
シキミがぼそっと言う。
「うん、ありかもな」
コウも頷く。
「他に考えようがない」
「少し様子を見て、あの男に接触してみるか」
「そうだな」
皆が同意し、レイの報告を待つことにした。
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レイは男の車を尾行していた。
車はコンビニやドラッグストアに立ち寄ると、先日の駐車場に戻ってきた。
男が車から降りる。
レイが車の中から慎重に男を見守る。
しかし、レイは男に何か違和感を感じていた。
男は、先ほど寄ったコンビニやドラッグストアで買ったものを持っていないのだ。
「ヘイ、ヘイ、俺を騙そうったってそうはいきませんよ」
レイは男に向かって呟き、ニヤリと笑う。
「頼む」
レイが助手席に向かって言う。
「オッケー」オキがするりと車を降り、男の尾行を始めた。
レイはそのまま残ると、車を見張り続けた。
すると、数分後、周りに警戒しながら、女が車に乗り込むのが見えた。
車が発進する。
レイもあとを追った。
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