オレっ娘ヒカルちゃん9話:ファミリーレストランの女性専用トイレで男子にイジ悪してしまうヒカルちゃん
別の日曜日、またゆうまとヒカル、二人の母親の4人でファミリーレストランへランチをしに出かけた。
店内は広くて明るく、子供向けのメニューも豊富。
みんなでハンバーグやパスタを注文して、楽しく食べ進めていると、途中ですぐにゆうまとヒカルがほぼ同時に「おしっこ……」とつぶやいた。
ヒカルの母親が笑いながら言った。
「このお店、トイレは二つあったはずよ。女の子と男の子でも、幼馴染なんだから一緒にいってもいいわよ。行っておいで」
ゆうまは少し恥ずかしそうだったけど、ヒカルは「うん!」と元気に立ち上がる。二人は手を繋いで(いや、ヒカルがゆうまの手を引っ張って)トイレのある廊下へ向かった。
トイレの前に着くと、そこには二つのドア。
一つはピンクのプレートに「女性専用トイレ」。
もう一つは青と白のプレートに「男女共用トイレ」。
ヒカルは一瞬で状況を把握し、目をキラキラさせた。
「わぁ~!! また女子だけだよ!! 女性専用トイレがある!!」
ゆうまが「あ、じゃあ僕はこっちの共用の……」と男女共用トイレのドアに手をかけようとした瞬間――
ヒカルがニヤッと笑って、ゆうまの前を横切り、わざと「男女共用トイレ」の方を開けてスッと入ってしまった。
しかも、女性専用トイレのほうは明らかに空いているのに。
ゆうまが慌てて「え、ヒカル!? そっち共用だよ! 女性専用が空いてるのに、なんでそっち入るの!?」
中からヒカルの楽しそうな声が返ってきた。
「ふふっ、選べるのは女子の特権だもんね~! オレはどっちでも入れるんだよ。ゆうまって共用しか選べないでしょ? 可哀想~」
ゆうまは顔を真っ赤にしてドアをノックする。
「ちょっと! 早くしてよ! 僕も漏れそうなんだから!!」
でもヒカルはのんびり屋だ。
「ん~? まだ出そうなんだよね~。もうちょっと待っててね~」
トイレの中でわざと水を流す音を大きくしたり、手を洗う音を長くしたりして、明らかに時間を稼いでいる。
ゆうまは廊下で足をモジモジさせ、両手でお腹を押さえながら我慢の限界。
「ヒカル……ほんとにずるいよ……もう漏れちゃう……」
ようやくヒカルが出てきたときには、ゆうまは半泣き寸前だった。
ヒカルは満足げに手を拭きながら、ゆうまの肩をポンと叩く。
「ごめんごめん~。でもさ、女の子ってどっちのトイレも使えるんだよ? 更衣室も、女性専用車両も、レディースデイも、そしてトイレの選択権も! 今日も優越感たっぷり補充できた~!」
ゆうまはいそいそと共用トイレに飛び込んで、ようやく解放された。
席に戻ると、母親たちに「どうしたの? ゆうまくん顔真っ赤よ?」と聞かれ、ゆうまは「なんでもないです……」と俯くしかなかった。
一方、ヒカルはデザートのアイスクリームを食べながら、上機嫌で母親に小声で報告。
「ねえお母さん、今日も女の子でよかった~」
その日から、ヒカルはレストランやデパートに行くたび、トイレの表示を真っ先にチェックするようになった。
「女性専用があるか確認しなきゃ! 選択権は女の子の特権だもん!」
ゆうまのため息が、また一つ深くなったのは言うまでもない。




