第二十四話ーこんな壁があったなんて僕は知らない。ー
こんばんは、こんにちは。梅木仁です。
今週も無事に投稿の運びとなりました( *´艸`)
それではどうぞ!
さて、黒髪の少女にそう言ってみたものの、小生の言葉が続かないまま、体感にして5秒ほど経った。
「えっ…小畠くん、それはどういう…」
彼女が話し始めたときだった。
校舎の階段のほうから複数人の声が聞こえ始める。そこで五組の教室の時計を確認してみれば、時間は八時になろうとしていた。その音は形容するならば、遠くのカサカサという音がやがて階段の反響で増幅されてガヤガヤという喧騒へと変わり始める。
小生としてはこの状況は少し分がよろしくないように思えた。
というのは、「リア充応援」の計画は一部の仲間で内密に進めたいと考えていたからだ。タイミング的に芦湯さんには話したけれど、基本的に人に聞かれることを是とはできない。そして、それは今の段階で言えば、俊や九条さん、みっちゃんでも同じことである。そのくらいに今の「リア充応援」の計画は概念的なものに過ぎない。
それに、「リア充応援」の計画は学校を実質的に支配している教職や、生徒会長からどのように見られるか、今の段階でははっきりしていない。となれば、できる限り信頼できる筋だけに、とどめておきたい。
「ま、まあ、とりあえずまた後で話そうよ!」
「ええ、いいわ。それでいつにするのかしら…」
「夜でいいからさ、ヤブミでどうかな?」
「いいわ。あなたに任せるわ」
芦湯さんは微笑んで小生に言った。その顔には少し安心というか、安堵が見えた。
その会話の直後である。
「やっほ~!お二人とも朝から熱いですなぁ~!」
誰かと思い、振り返れば三人組が階段から登ってくる。九条さん、俊、そして少し遅れてみっちゃんである。
「お!おはよう~三人ともめっちゃ早いじゃん。」
「おは~コバ!しっかり話はできたのか?」
俊は開口一番、本題に触れてくる。この男はいつもまっすぐだ。
「どうにもこうにも、まあまあってところかな~」
「そうね、あなたたちが来るまでもう少しこうやって二人の熱い時間を過ごすのも悪くなかったのだけれどね。」
芦湯さんは笑顔で九条さんに向かって言う。その表情は先ほどまでと変わらず明るく、そして得意げである。
「そ、そうなんだぁ~…ふ~ん。熱い時間を…ね…」
九条さんは予想にもしていなかった芦湯さんの返答に少し詰まりながらも返す。
「ま、私は芦湯さんがこんな朝っぱらから熱い女の子だとか思ってませんけれど~」
みっちゃんがぷいっと小生に見せつける形でそっぽを向く。
「そ、そうだね…」
やばい、うまい返しがないぞ…。心の中で小生はそっとつぶやく。
「まあ、私が熱い話よりも、九条さんたちは実際、テストの結果が気になっているんでしょう?そうでしょう?」
芦湯さんは反復法を用いながら、九条さんに追い打ちをかける。
「あ、芦湯さん…ひどいよ…せっかく忘れようとしてたのに…(グスン)」
「あら、昨日までの勢いはどこへやら。確か満点取るとかなんとか…?」
芦湯さん、破竹の勢いで攻め立てる。
「あーーーあーーー私の記憶には何もなーーーい!」
九条さんは現実逃避気味に記憶を消去しようとする。
「で、コバくんはなんだったっけ?カンニングで零点だっけ?それで、まあ、太森くんは、大丈夫だもんね~めでたしめでたし~」
さりげなく、みっちゃんが言ってくる。
いやいや、みっちゃん、全然めでたしじゃないよ!!
「俺は無難に八割目標だった…けどよ…正直不安だぜ…」
いつもは強気の俊も少したじろいでいる。野球部出身の俊も、やはりテストは怖い存在みたいだ。
「え、それじゃあ、めっちゃ寂しいじゃん…ていうかアイスのおごり決定じゃん。」
「んん?違うよ。零点のコバくんには土俵にも立てていないんだから、次回からがんばってやりましょうってことで『哀れみのアイス』をおごってもらえるんだよ??笑」
今日のみっちゃん、なんでか知らないけれど、あたりが強い。どうした?
「え、そんなルールあるの?笑」
「ね?別にあってもいいよね、九条さん?芦湯さん?」
みっちゃんはさっそく味方を作ろうとする。
「ええ。いいわ。」
「そうだね…特別ルールだ…残念。」
え、そんな…小生の意見も聞かずに決定されるのかよ…っていうか俊にも聞いてあげろよ…笑
そんなこんなで気が付けば、始業時間の10分前になっていた。
廊下で話していたから、多くの生徒が教室に入っていくのは目に入っていたが、思いのほか話していると、楽しい時間なせいか、過ぎるのが早く感じる。
「ん、それじゃあそろそろいこーか、九条さん。」
「そうだね~それじゃあ、また三限終わりに~」
九条さんと俊が5組の教室へと入っていく。
「さて、そろそろこっちも。」
そういって小生たちも6組の教室に入る。
席は昨日と同じ、左隣が芦湯さん、右隣がみっちゃん。
それぞれがリュックやらカバンから荷物を出して机の整理をしていると、あっという間に始業時間になる。
チャイムが鳴って、佐伯先生が入ってくる。
「はい、みなさんおはようございます。今日は晴れてよかったですね。今日の連絡は時間割の変更です。とりあえず、早めにクラス人事等を決定することにしたので、今日も一日学級の時間とします。そして、この後はまず、オリエンテーションテストの結果を配りますので、各自受け取ってもらいます。」
「せんせー!」
聞きおぼえのある声がする。小生の両隣からではない。
これは藤原希海さんの声だ。
「なんでしょうか、藤原さん。」
「オリエンテーションテストの成績ってぇ~何か公表されたり、いろいろな評価に影響したりんですかぁ~?」
クラスが少し騒がしくなる。
そして小生は、この質問の仕方、否、聞き方、言い方には少し違和感を覚える。知っていることを、公知の事実をあえてもう一度繰り返し聞くような…。
「はい、そうですね。藤原さん、いい質問です。このオリエンテーションテストの結果は、総合得点の上位50名、各教科上位25名は廊下の掲示板にて掲示します。そして、オリエンテーションテストで、半分の順位、つまり、320人中160位内の生徒については…」
佐伯先生はわざとためを作ったうえでまるで誰かに宣言するように言った。
「生徒会への参加権限が認められます。」
「え…それってどういう…」
「まじで?」
「そんなの聞いてないよ!」
クラスが喧騒に包まれる。そりゃあ、こんな事実、小生でも初耳である。
続けて先生は言う。
「つまり、161位以下の皆さんは、この学校の生徒でありながら、その自治組織である生徒会への入会ができません。したがって、現在の生徒会での皆さんの地位は仮であり、これが正式なものになるのが、このオリエンテーションテストなのです。そして、名誉挽回、いいえ地位挽回のチャンスは、一年後となります。残念だった皆さん、それまでにしっかりと実力をつけてくださいね。」
小生は動揺と焦りとかで汗が止まらなかった。
昨日のテストの答案を脳内でリロードして検証する。それでも脳内で出される答えは、半分の順位に届くか否かという微妙なラインを推移していた。でも肌感覚としては、昨日のテストの手ごたえは壊滅的だった。
ああ、こんな感じでスタートラインにも立てずに小生の青春も、かなえたかった夢も、リア充応援も終わるのか…。俊、芦湯さん、九条さん、みっちゃん、そして小生でなんとかしたかったんだけどな…まさかな…こんな後出しトラップに引っかかるなんてな…世の中ってこんなもんか、足元を見すぎても、空を見すぎても結局のところ、罠にはまって、終わってしまうんだろうな…。
制裁委員会の話を、芦湯さんから聞いたばかりだということもあって、動揺の波が意識の堤防を破壊しようと押し寄せる。
くらくらしてきた。視界が揺らぎ始める。周りの喧騒が聞こえなくなる。あ、やばいかも、倒れる…。
「ちょっと!しっかりしなさい!」
「コバくん!まだ始まってないよ!」
ああ、この声…教室内が騒がしい中優しく、芯のあるはっきりとした声は…。
少しずつまた視界が固まり始める。そして、耳が再び集音を始める。
「あの、佐々木さんの言う通り、何も始まっていないの。それにさっき、小畠くんにした話は生徒会とは関係ないわ。」
芦湯さんの声がだんだんと理解できるようになってくる。
「コバくん、テストの時とおんなじ顔してるよ。大丈夫、私はいつもコバくんの味方だからね!」
みっちゃんの声がはっきりと聞き取れる。
二人のおかげでなんとか意識が回復して安定化させることに成功する。
「そ、そうだね。二人ともありがとう。」
のどが乾ききって、かすれそうな声しか出なかった。それでも二人は笑顔でうなづいてくれた。
「はい、皆さん静かに~。とりあえず、もうすでに結果は決まっているので、このあと、10分休憩の後に配布します~。はい~それじゃあ朝礼おわり~。」
それだけ言うと佐伯先生は教室をさっさと出て行ってしまった。
一部の生徒は先生に真意を問おうとしたみたいだが、それよりも早く先生は出て行ってしまった。
休憩時間になって、すぐに小生は鏡を求めてトイレに向かった。
正直、今の自分がどんな顔をしているか、不安になったからだ。
トイレに駆け込むと、鏡をのぞき込む。今日はいつもよりも早起きだったが、それにしては顔色は良好であった。うす暗いトイレでも、鏡に映る自分の顔は普通だった。
そのことに安心して、トイレを出る。
すると、同じくトイレから出てきた藤原さんと一緒になる。
「あれ、一昨日話したよね、確か…小畠くん!」
彼女には満面の笑みが浮かんでいるが、なにぶんさっきの朝礼での発言ゆえに小生は怪訝そうな顔をしてしまう。
何も答えない小生に彼女は言う。
「ふふふふ、小畠くんったら~。そんなに怖がらなくてもいいんだよ。だって、もう決まったことなんだもん。」
一瞬、微笑みながら話す彼女の顔が、佐伯先生にされたあの得体のしれない笑顔を重なる。不敵な笑み、とでも表現できようか…。小生は心から恐ろしさを覚える。一昨日の入学式での会話とはまるで違う。
「じゃ、せいぜい健闘を祈ってるよ、じゃあね~。」
そう言って彼女は一足先に教室へと戻っていった。
最後までお読みいただきありがとうございました。
今話では、新しく、というわけではないですが、久しぶりに希海ちゃんが来ました。
まあ、今後の展開がどうなるのか、ますます気になってくるところです。無論、作者である小生自身もいろいろ考えながら、流動性に満ち溢れた構想の中で執筆しています。そんな感じで書いていますので、ところどころぐちゃぐちゃになってしまいそうです(笑)
ですが前向きに書いて行きます。
最後に、台風などの自然災害が大きな爪痕を残しています。読者の皆さんの無事と、この「リア充応援計画」が少しでもそんなつらい時間の暇つぶしになればと思います。
今後とも精一杯書いて参りますので、よろしくお願いします。




