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リア充応援計画  作者: 梅木 仁
始まりの始まり。
23/28

第二十三話ー芦湯成美’s history(2)ー

こんにちは、こんばんは。

梅木仁です。

今話もよろしくお願いします。

少なくとも芦湯成美の兄には、この宝南高校での深く、そして黒い過去があるようだ。それは小生ごときでは測るに及ばず、そしてそれを話す芦湯成美ですらもところどころ戸惑いを見せている。小生が彼の真意を芦湯成美からしか得られないのは、今のところ仕方ないことである。それでも何か手掛かりはないか、と小生の中で思案は続く。

一方で、彼の過去にポジティブな視点を加えてみるという試みも小生は同時にしている。芦湯成美を慰めるため、というような意味はそれこそなくて、彼女の兄が何故そのような行動をしたのか、という真意を探るためである。

さて、彼が制裁委員会の委員長まで上り詰めるまでに幾度となく苦渋の決断をしてきたことだろうと思う。その上で彼がそこまでして、『学生の青春、リア充を守る』というだけの目的に価値はあっただろうか。確かに、当時を経験していない人間が、その当事者の心情を完全なるままにあるいは少なくとも8割ほどまで理解できるか、という命題について、小生の解答は偽である。しかし、制裁委員会の委員長ともなれば、およそ学内の成績選抜でも優秀な成績であっただろうから、『学生のため』だけに止まらない、その先までも見据えるだけの理由と千里眼はあったのではないかという推測は立ちそうである。


つまり、芦湯成美が読んで、今小生に伝えているところの遺書だけは、真意の理解は足らず、その先に何かしらの大義名分や大きな目標があったのではないか。


そのカギとなるのが、『彼の行為が植民地としてのその国家体制に牙をむいた』という事実につながるということにあると小生は思う。そもそも、この『制裁委員会』も当初は植民地政策の一環として各学校に導入されたものであり、それを否定するような行動は、それすなわち、国家体制への反逆につながりかねない。

また、けだし、単純に頭のいい人間ならば、自分の身分が危なくなるまでのことをして、自分の理想をかなえようとはしないからだ。それのいい例として、官僚があげられる。官僚は実質的に国家の軸であり、言い換えれば牛耳っているとも言える。賢くあれば、そのことに気づき、逆に制裁委員会の委員長などには就任せずに、下っ端として爪を隠してもおかしくはない。だが、彼女の兄そうではなかったのだ。ということになると、何か他に真意があるはずだ。


ただ、真意はともかく、彼の行為の結果として彼が実際に休学に追い込まれた事実は変わらない。彼の消息は小生が察するに、自殺か、幸い行方不明かといったところだろう。しかし、今ここに芦湯成美という存在が、涙を頬に伝わせながらもこの宝南高校の地に足を着けている。これは兄が残していった大きな軌跡であると考えていいだろう。


小生は、多くの先人たちの資料を脳内に保存しているが、人の上に立って何か物事を進めようという時、必ず壁がある、ということを芦湯成美の話を聞いて改めて痛感した。第一に人との利害関係、第二に物の制約である。今回の場合、第一が事柄の性質を極端に苦しいものにしている。その点で人の上に立って物事を指導しようとするときは、非常に難しい選択を迫られるのである。


彼女の声が止まった。小生は少し迷いながら聞く。

「あ、あのさ、なんでこの話をしてくれたの?」

この質問は失礼かもしれない。ただ、彼女が小生に過去を打ち明ける理由が、「ここまで見られてしまったから」というものだけでは、小生は理解できないし、なんともできない。ここまで話すのならその先にきっとある、解決に結びつけて考えたい。

「え、それは…」

彼女が答えを渋る。確かに、彼女からしたらその質問はもう答えたからだ。

ただ、彼女は涙をハンカチでぬぐい、そして小生のほうに向き直った。


「そうね…あなたのその瞳が、委員長になったときの兄に似ていたから、かしら。」


彼女は小生の目を見て頬を赤らめて言った。そして、廊下から見える空に向き直ってこう続ける。

「だから、一昨日も入学式の後に、あなたに声をかけたの。入学式の時、私は見えていたのよ。あなたが前のステージで話す校長先生や、生徒会長の発言、いえ、言動に対して何か考えているのを。でも、式から教室に帰ってみれば、あなた、意気消沈してたじゃない。」

小生は目を丸くする。まさか芦湯成美に見られていたとは、想像してなかった。

「ま、まあ…確かに意気消沈はしてたけど…」

小生が言葉に困る。すると彼女はその艶やかな黒髪を右耳にかけて言う。

「私は、直感的に、入学式前に教室で隣の席にあなたが座った時に感じたの。ああ、こんな目をしてたなあって。この人なら、兄のことを…その…完全でなくても理解してくれるんじゃないかって。だから、あのまま進んでほしかった。そして陰ってほしくなかったの、あの瞳に。」

芦湯成美は少し早口になりながら言い終える。その顔立ちは、彼女のバックの青空と相まって、明るく、美しく見えた。


ここまで話されて、小生は意外にも冷静だった。

無論、途中で芦湯成美のしぐさに、少し目線のやり場やら、心をドキドキさせたことがなかったといえば嘘になる。それでも、彼女の、普通に言えば無礼に見える、あの声掛けの意味を理解して、小生はすっきりしている。


「それで?生徒会長さんとは、いつ会えるのかしら?」

彼女の問いかけが小生の耳に入ってこない。聞くならば、今しかない。

「芦湯さん、あのさ…」

もしかしたら…から始まる不安が渦巻いて小生は逡巡する。

彼女は小生の真剣なまなざしから察する。

「はいはい、何でもいいから言ってみなさい?笑」

微笑みながら話す彼女の言葉に、リードされる形で、小生は続きの言葉を真心で絞り出す。


「一緒に、やりませんか、青春、いや。リア充の応援を。」


主人公の物語が、また一つ綴られた瞬間だった。

最後までお読みいただきありがとうございました。

前話と今話では、主人公と芦湯成美と彼女のお兄さんについて書いてまいりました。書きながら、胸が締め付けられるような思いで書いていました。今後、彼女と主人公の関係、そしてほかの女の子たちとの関係も含めて目が離せないところです。

さて、二週にわたって三連休なわけですが、皆さんはいかがお過ごしでしょうか。東京ゲームショウやら、お祭りやら、いろいろな催しが各地で行われています。秋、といえば、食欲、運動、読書などなどいろいろな修飾があります。小生も、今しがた、知識、技量不足で執筆が滞ってまして、読書を始めようかなと思っている次第です。

さて、最後になりますが、本日より学業が再開となり、ますます忙しさが増します。そんな中ではありますが、今後とも精一杯書いてまいりますので、応援のほど、よろしくお願いします。

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