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1000回振られても君が好き  作者: 千子


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7/20

体育祭

放課後の教室で、陸上部に行く準備をしながら新井と他愛ない話をする。

「そういえば、もうすぐ体育祭だね」

「そうだな。なんの競技に出ようか」

俺が腕を組んで考えると、新井が促す。

「陸上部が陸上競技に出なくてどうするの!」

「そうは言っても、俺は高跳びの選手だしなぁ」

そう。体育祭の季節がやってきた。

毎日体育祭の練習と飾り付けの準備に追われている。

忙しいけれど、楽しい。

陸上部は運動部の名に賭けて負けるわけにはいかないと特に精を出していた。


そして訪れた体育祭当日。

俺は借り物競走、新井は短距離走に出場することになっていた。

新井は堂々の一位!

メダルを得意気に俺に見せて「飯田くんの応援のおかげだよ」って言ってくれた。

「新井の努力の成果だよ。俺たちに混じって走ったりしてたじゃん」

「陸上部のマネージャーだもん。恥ずかしいところは見せられないよ」

笑いながら言う新井に、俺も負けていられないなと決意を新たにする。

「俺も頑張らないとな」

「うん!精一杯応援するね!」

「ありがとう」

それから何種目か進むと、アナウンスで借り物競走に出場する選手が呼ばれた。

「行ってくるな」

「うん!頑張って!」

クラスのためにも、新井のためにも、負けるわけにはいかないな。

集合場所に集まり、順番を待つ。

少しドキドキしてきた。

あまり変なお題が当たりませんように。

そう願いながらスタートした。

走って五十メートルくらいのところに各所のお題がある。

俺のお題は……。

「好きな人」

思わず言葉に出た。

紙に書かれたその文字を見て、思い浮かんだのはどちらだったか。

俺は新井を探してクラスの団体に目を向けた。

新井より先に高塚と目が合った。

首を振って頭から追い払い新井の元まで走って行った。

「新井!来てくれ!」

「あっ、うん!」

手に手を取り合って、全力で走る。

他の連中は苦戦しているみたいだ。

探し物を叫ぶ声が聞こえる。

すべてを振り切って、新井と二人、手を繋いでゴールを目指した。

あともう少し。

そんなところへ他のクラスの生徒が追い掛けて来た。

新井の方を見ると、息切れしている。

仕方がない。

「新井、ごめん!」

「えっ、きゃ!」

新井を抱き抱えて一人で走る。

俺は、新井と走ることより一人で走ることを選んだ。

姫抱き状態の新井は揺れるのが怖いのか恥ずかしいのか俺にしがみついて顔を埋めていた。

そのままゴール!

一着でゴールテープを切った感触は清々しい。

新井を下ろすと、すぐに実行委員会が駆け寄って来た。

「お題の中身は?」

「好きな人です」

「おおーーー!!!今年の大当たりですね!!!」

放送機からも告げられて、場内が盛り上がる。

新井は恥ずかしそうに俺の服の裾を握って俯いていた。

俺も少し恥ずかしい。

新井と一緒にクラスの方へと戻ると、散々野次を飛ばされた。

「おめでとう」

「ありがとう」

高塚からも祝福された。

「あの時、一瞬私と目が合ったから私が選ばれるかと思っちゃった」

笑いながら言うけれど、新井がまた悲しそうな顔をするしクラスに微妙な空気が流れる。

「悪いけど、俺が好きなのは新井なんだ。高塚を選ぶことはない」

「ふぅん、中学の時はあんなに情熱的だったのに」

「過去は過去だ」

俺はそう言うと、新井とクラスの奥の方へと向かった。

座り込むと、新井がお礼を言って来た。

「私を選んでくれて、ありがとう」

「俺の方こそ、俺を選んでくれてありがとう」

新井が俺に告白してくれなかったら、俺は不毛な思いを持ったまま未練たらしく生きていただろう。

それを断ち切ってくれたのは新井だ。

「新井、好きだよ」

「何よ、急に……私もだよ、飯田くん」

歓声が遠くに聞こえる。

クラスの一番奥、みんなに見えない場所で手を繋いでクラスの勝敗を眺めていた。

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