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1000回振られても君が好き  作者: 千子


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35/58

冬大会 中編

短距離走と長距離走が終わった。

鹿谷先輩達がいない二年生達ではあまりパッとしない成績だった。

俺も人のことを言えないけれど。

次はいよいよ高跳びの出番だ。

「慎太郎くん!頑張って!」

「ああ」

里子の声援を受けて集合場所に集まる。

順に跳んで行く途中で、榊がやってきた。

「いよいよだな」

「俺がお前を追い抜かす時がな」

「言ってろよ」

笑い合う俺達に、司会から名前を呼ばれた。

「それじゃあな。先に跳んでくる」

「おお!頑張れよ!」

ライバルを応援してどうするんだって思ったけれど、それが榊の良さだと思う。

それに、榊が先に跳ぶ時も俺は応援するだろう。

そういう関係が心地いい。

スタート地点に立つと気が引き締まる。

もう一度空を見て、息を吸って吐く。

合図とともに走り出して、軸足に軽く力を入れて跳び上がる。

バーは揺れなかった。

もう一度同じ高さを跳ぶけれど、それも楽々クリアした。

順に高くなっていくバーに、プレッシャーも高くなる。

とうとう秋大会の榊の記録まできた。

ちらりと榊を見ると、親指を上げられた。

苦笑して、今度は部の方を見る。

里子が力一杯応援してくれていて、その横で高塚がひとつ頷いていた。

バーを見据える。

覚悟を決めて走り出すと、バーは揺れることなく跳びきれた。

体を支えてくれるマットの冷たさが気持ちいい。

会場が騒ついている。

もう一度跳んでもバーは揺れることなく俺は空を見上げていた。

拍手が鳴り響く。

気持ちいい。

バーを高くしている間にまた榊を見ると、大きな声で叫ばれた。

「飯田!頑張れよー!」

途端にまた騒つかれる。

新記録を出した榊に応援される俺。

注目されているのがわかる。

視線が痛い。

でも、跳びたい。

上がったバーは、練習では飛べなかった。

それでも不思議と跳べる気がした。

思い返すと、いろんなことがあった一年だった。

それを全部背負って勢いよく跳ぶ。

バーは揺れることなく跳び切った。

しばらく間を置いて、まだらに拍手が鳴るかと思うと、一斉に大歓声が起きた。

榊の高校新記録を抜いた。

小さくガッツポーズをして里子を見る。

里子ももげるんじゃないかってくらい勢いよく拍手してくれて、高塚も静かに微笑みながら拍手をしてくれていた。

榊を見ると、こちらも拍手。

少しは悔しがってくれよ。

そんなことを思いながら、もう一度同じ位置を跳んだ。

今度も成功。

翼がなくても人は飛べる。

そう、証明したような気持ちだった。

空は天高く、息は白い。

鼓動は荒く、俺はそれを落ち着けるために一呼吸した。

どこまで跳べるか自分との勝負。

この瞬間、俺は確かに楽しんでいた。

数回跳んで、俺はとうとう落ちた。

バーが落ちる音は絶望に似ている。

もっと跳びたい。

高跳びは三回失敗で終わってしまう。

パスはしたくなかった。

なけなしのプライドが許さなかった。

それでも、観客も部員達も拍手で迎え入れてくれた。

俺が自分の部のところへ戻ると里子が抱き付いてきた。

「慎太郎くん!おめでとう!」

「おめでとう。よく跳べたわね」

高塚に続いて他の部員も口々に褒めてくれた。

褒めてもらうために跳んだわけじゃないけれど、やはり功績を認められると嬉しい。

「ありがとう」

少し照れながら感謝を述べる。

それから数人飛んで、俺の記録は破られなかった。

現状俺が高校一位。

あとは榊だ。

榊が俺よりも低ければ……。

そう思って首を振る。

他人の成績を気にしていたら駄目だ!

俺は俺で跳ぶんだ。

走行している間に榊の番になった。

じっと見ていると、榊がこちらを向いた。

目が合うと、余裕の笑み。

こんちきしょう。

もう一度太陽を見る。

太陽はどこまでも高く、輝いていた。

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