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1000回振られても君が好き  作者: 千子


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3/20

未練と今と

昼休みは新井と昼食を摂っている。

いいって遠慮したのに新井の手作り弁当だ。

彼女からの手作り弁当を嫌がる罰当たりがいたら罰が当たって欲しい。

今日も賑わう教室で新井と机を寄せ合って弁当を食べている。

「美味しい?」

「美味いよ」

「飯田くんはすぐにそう言う。好き嫌いとかあったらちゃんと言ってね」

「分かった」

ちらりと高塚の方を見ると今日もパンをもそもそ食べていた。

毎日、昼メシはパンだ。

作ってくれる人がいないのか作れないのか。

「飯田くん?」

俺には関係ないか。

「なんでもないよ」

そのまま食べ終わっても談笑して、他愛無い話が楽しくて、笑う新井が可愛くて、毎日こうならいいのにって思っていた。


夕方、新井を家まで送ってから自分の家に帰る途中、高塚を見掛けた。

俺もちょうど朝に母親にスーパーでネギを買って帰るように言われていたからこれは後をつけたんじゃない。

心のどこかで言い訳しながら、スーパーに足を踏み入れた。

高塚は何種類かの野菜を買っていたようだ。

ネギを片手に持った俺は、なんだ、食事はちゃんと取れているんだ、なんて感想を抱いた。

「飯田くん?」

「よぉ」

「飯田くんも買い物?」

「ああ、母さんにネギを買ってくるように言われてさ」

片手に持っていたネギを上げて見せる。

「ふふっ、なんだか飯田くんとネギって合わないね」

「そうか?」

「飯田くんと結婚したらいい旦那さんになりそう」

それはどう言う意味で言ったのか分かりかねて、沈黙が落ちる。

「飯田くんのお嫁さんが羨ましいってことだよ」

高塚がフォローをして、俺は自分のお嫁さんというイメージがまだ掴めなかった。

ここは新井が出てくるところなのに、目の前の高塚に引き摺られてエプロンを付けた高塚が想像されて、俺は慌てて首を横に振った。

新井がいるのに何を考えているんだ。

「どうしたの?」

「なんでもない」

「……そう」

高塚が瞳を伏せる。

「新井さんのお弁当は美味しそうね」

「ああ。美味いよ」

「そっか」

また沈黙。

よくよく考えたら俺は高塚のことが好きだった割には彼女の表面的なことしか見てこなかったのかもしれない。

もっと知りたい。

いや、だめだ。

心の中で無邪気に笑う新井を思い出す。

けれど、目の前の少し寂し気な高塚も放って置けない。

俺はどうしたらいいかわからず、ネギを握りしめたまま、高塚に声を掛けた。

「高塚は、彼氏はつくらないのか?」

中学三年間振られ続けて何を言っているのか。

友人と食べないのか、でも良かったのではないのか。

でも、俺は知っている。

高嶺の花として、女子からは隣に並びたくないと、男子からは気位が高そうだと敬遠されている高塚を。

「今は、いいかな。失恋しちゃったばかりだし」

笑っていたが、声が少し震えていた。

「えっ!?高塚って好きな奴いたの!?」

スーパー内で大声を出した俺は周囲から目立ってしまった。

「ごめん」

好きな奴がいたなら断られ続けるよな。

でも、高塚も振られるんだな。

俺が知っている奴だろうか?

「ごめん、もう行かないと」

「あ、ああ。ごめんな、引き留めて」

「ううん。飯田くんと話せて楽しかった」

ふわりと微笑まれたのは初めてだった。

いつも告白してはすまなそうに頭を下げていた高塚しか知らない。

ドキリとしたのは事実だ。

だけど、これは新井への裏切りだ。

ごめん、新井。

明日、新井に謝罪として渡す用にちょっと高めのお菓子を一緒に購入して俺も帰路についた。

高塚の好きな奴。

好みの相手。

中学三年間、ずっと追いかけていたのになにもわからない。

俺は、本当に高塚を好きだったんだろうか。

高塚を好きだったのは、誰にも振り向かれなかった中学の俺自身だったのかもしれない。

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