四人での日々
夏休みが終わり、秋真っ只中、少し寒気を感じつつも表面上は平和を保っていた。
平和……というか、慣れだな。
里子と高塚に挟まれ、部活の休みが被ったら榊と四人で遊ぶ。
この四角関係を保ったまま、それなりに過ごしていた。
……俺としては、里子と二人がいいけど。
里子もそう思っているようで、こっそり言われている。
「榊。早く高塚と付き合えよ」
「お前、新井さんと付き合いながら高塚さんと付き合っていたくせによくそんなこと言えるな」
「それは……」
それを言われると痛い。
「ねぇ、二人して何を話しているの?」
「なんでもないよ」
「ふぅん」
高塚の目が鋭くなる。
そして榊の前で宣告した。
「榊くんには何度も言っているけど、何度言われても私は飯田くんのことが好きだから。それこそ、千回言われてもね」
「それなら千一回目で振り向いてもらえるように頑張るよ!」
榊の情熱に高塚も少し揺らいだのか、目が動いた。
「勝手にすれば」
そう言って、新井とショッピングを続けた。
なんと、何度かやり合っているうちに共通の敵という俺に関して意気投合して仲良くなっていったのだ。
女心って分からん。
ていうか、敵ってなんだ。
二人とも、俺のこと好きじゃないのか?
自意識過剰とも思われることだけれど、事実だから仕方がない。
じゃなきゃ、こんな面倒なことにはなっていなかったのに。
「里子」
「ん?」
近付いて片手を握る。
「……手袋でも見に行くか」
「慎太郎くんがいればあったかいよ」
笑って言う里子は可愛い。
「なら、私はマフラーかな」
高塚がするりとやってくる。
「任せてください、高塚さん!高塚さんに似合うマフラー、俺が見繕ってきます!」
榊は無駄にやる気だ。
「早くこの騒ぎから解放されて二人でゆっくりしたいな」
「……慎太郎くんのせいだけどね」
「ごめんて」
素直に謝ると、頭を撫でられる。
精一杯背伸びをする里子に俺は屈んで好きにさせた。
「夏の大会が終わっても、秋にも小さいけど大会があるんだからね。慎太郎くんも榊くんも怪我には気をつけてよ」
里子の言葉に俺たちは頷いた。
「前より跳べるようになっきたからな。今度の優勝は俺がもらうぜ、榊」
「どうだかな。今度も俺の優勝だ。ですよね、高塚さん!」
「飯田くん、頑張ってね」
見事に榊を無視して俺を応援する高塚。
複雑な心境だけど、応援には変わりない。
「頑張るぞー!」
「俺だって!」
そう言いながら、ショッピングモールを歩いていく。
秋の大会まで日がまだあるとはいえ、今日は帰ったら練習量を増やすか。
なんて考えながら今日も四人の歪で平和な関係は過ぎていく。
そうして、秋の大会を目指して高跳びの練習に精を出す。
部長達は卒業まで辞めないと言った通り、辞めずにずっと陸上部にいてくれていて、それが励みになっている。
「鹿谷部長に怒られてると、なんか安心するんだよなぁ。あ、もう部長じゃないんだ」
「分かる。私もまだまだ清水先輩にマネージャーとして教わることあるもん」
バーを上げている最中、思う。
俺はまだ夏の大会の榊の記録を破れていない。
秋こそは、と思うけれど榊だって練習を頑張っているはずだ。
もっと高く、跳びたい。
あの太陽に届くぐらい。
思わず手を伸ばす。
秋晴れに優しい光を落とす太陽は、なんだか里子に似ていた。
ずっと太陽はイカロスの羽を落とすものだと思っていたけれど、こんな柔らかい陽の光を感じたのはいつ振りだろう。
「慎太郎くん?」
俺の太陽は、一つとは限らないかもしれない。
そう思って里子に微笑んだ。




