ダブルデート 前編
どこに行くかは決めてあった。
里子と行く予定だった改装したばかりの遊園地!
大人数で行っても楽しいから、榊と高塚も親しくなれるだろう。
チケット売り場に並んで、購入すると今度は入り口へ。
中に入るとそこはもう異世界にでも来たような華やかさだった。
「は〜。すごいな。数年前に来たきりだけどかなり変わってないか?」
「ああ。ジェットコースターなんてニュースになったくらいだぜ」
「私、絶叫系はちょっと……」
高塚が言うと、榊が華麗に手のひらを返した。
「だよな!絶叫アトラクションは飯田と新井に任せて俺達はベンチで話でもしていようぜ!」
「おい!」
あまりの変わりように思わず突っ込んでしまった。
「私は平気!慎太郎くん!二人で楽しもうね!」
二人でのあたりに圧を感じたのは気のせいだろうか。
ダブルデートなら、上手くいくと思ったんだけどなぁ。
そういや、友人とずっと好きだった元カノと今カノと俺の組み合わせなんだよな……。
榊に至っては俺と同じく中学から高塚のことを好きだったみたいだし。
改めて考えると人選ミスってないか?
里子が言っていた地獄絵図の意味がわかってきて冷や汗が出てくる。
「行こう、慎太郎くん」
体を密着させて、里子が俺をエスコートしてくる。
「俺達も行こうか、高塚さん」
榊の声に、高塚は少しツンとした声音で答えた。
「……別にいいけど」
そう言って四人で行動する。
最初はどれにするか悩んだ末に四人で楽しめるように観覧車に乗った。
最後に乗るようなものだろうと思ったけれど、楽しかったら最後も乗るつもりだ。
「すごい、思ったより高いね」
「学校まであんなに小さく見える」
「そうだな。景色も綺麗でいいな、これ」
「最後も乗るか?夕方からの景色も違って楽しそうだ」
飯田の提案に高塚が乗った。
「いいわね、それ」
「そうだろ。そのためには今日一日中楽しもうな!」
ニカっと笑う裏表のない榊。
高塚も、そんな榊に慣れてきて柔和な表情だ。
このままいい感じならいいのにな。
そんな思いは隣に座る里子にも通じたようだ。
「あの二人、いい感じだね」
こそっと話されたセリフに頷く。
やっぱり、四人で会ってよかったな。
そう思い直して空からの景色を楽しむ。
ゆっくり回るゴンドラは、穏やかに過ぎていった。
その次はジェットコースターだった。
里子のだっての希望だ。
「私、絶叫アトラクション好きなんだよね!」
「俺も!」
「……三人で楽しんできて」
高塚がそう言うと、榊がすかさずベンチに誘った。
「高塚さん!俺達はベンチに座って待っていよぜ!」
「別にいいけど……」
さっきよりは優しい声音だった。
ベンチに座って休憩する二人を置いて、里子と二人でジェットコースターの列に並ぶ。
「あの二人、うまくいくかな?」
「さあ?……高塚さん、まだ慎太郎くんのこと好きみたいだし?」
「そうか?」
「そうだよ!」
里子が怒るのでこの会話はこれで終了した。
高塚は、普段通りだと思うんだけどな。
……いや、普段通りで無自覚に俺のことを好きだったんだった。
ジェットコースターに揺られなが、猛スピードで駆け抜けるのは体か俺の思考か。
風が強く吹いて心地いい。危険な場所だと忘れそうになる。
スリルは四人の関係でもあり、ジェットコースターでもあった。
散々絶叫しながら回転しては急降下、急上昇!
息つく暇もなく揺られ続ける。
やっと終わった時は、爽快感があった。
「お待たせ!」
「おう、どうだった?」
「最高だった!」
里子の満面の笑顔に榊もうずうずしている。
そういえば、絶叫系好きだったよな。
高塚が一人にならないように我慢していたのか。
そう思うとますますこの友人には幸せになってもらいたい。
「ちょっと小腹が空いたわね」
高塚のその言葉にすかさず榊が動いた。
「あそこにポップコーンが売られてるよ、高塚さん!」
榊が見付けて声を掛ける。
「俺、キャラメル味!」
榊が元気よく注文する横で、高塚は少し腕を組み、くすっと笑った。
「私は塩味」
高塚は涼しい表情で答える。
「じゃあ塩味二つ!」
慌てて変更する榊に、高塚は軽く目を細めてうんざりとした表情になる。
「無理に合わせなくていいから。榊くんは榊くんの好きなの食べて」
「無理じゃないよ!好きな子の好きなものが知りたいんだ」
その言葉に、俺は高塚の好きなものを知ろうとしていた中学時代を思い出した。
なにで笑って、なにで悲しむか、今でも覚えている。
でも、それよりも今は。
「すみません、バター醤油二つ」
「やっぱり、ポップコーンっていったらこれだよね!」
ご満悦の里子が可愛い。
「ああ、そうだな」
四人で食べ歩きながら、いろんなアトラクションに乗ったりお土産を見て過ごした。
高塚は、最初は榊を邪険にしていたけれど、いつの間にか少しずつ心を開いているようだ。
時折笑い声も聞こえてくる。
このまま二人がくっついて幸せになってくれたらいいな、なんて思っていた。




