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1000回振られても君が好き  作者: 千子


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21/45

大会前

大会まであと一週間になった。

俺と里子が元に戻ったことで、また校内を騒がせていたけれど、人の噂もすぐに消えた。

みんな、人の色恋より自分のことが楽しい時間なんだろう。

さっぱりした気持ちで跳ぶと、心地良い。

「すごいよ、慎太郎くん!新記録!」

「本当か!?」

「実はこっそり高めに設定しておいたんだ。でも、それでも跳べたの、すごいよ!」

「教えてくれたっていいのに」

「ふふふ、私を泣かせた罰だよ」

そんなもの、可愛い罰だ。

もっと詰って怒って話しかけられないものだと思っていた。

「里子、ごめんな」

「また謝る。もういいって。でも、次はないから」

最後の語尾は本気だった。

俺は絶対に他の女に靡かないと誓って、里子に再度許しをもらう。

そして日課の帰り道。

「そうだ、飯田くん。これ、あげるね」

里子から紙袋を渡された。

「ありがとう。開けてみてもいいか?」

「うん!」

袋を開けてみると、靴紐だった。

「験担ぎ!今月の飯田くんのラッキーカラーだよ!」

「里子もそういうの信じるんだな。ありがとう。これをつけていい成績を出してみせるよ」

「頑張って!飯田くん!」

にこりと笑う里子に、俺はなんでこの子を悲しませたのかわからなくなった。

験担ぎか……。

そこで高塚から渡されたお守りも思い出した。

机にしまっていたけれど、あれも大会当日には持っていこうかな。

……いや、それはやめて高塚の好意だけ貰っておこう。

要らぬ火種を持つ必要はない。

ごめん、高塚。

「俺、精一杯跳ぶから」

「うん。見てるからね」

二人で笑って手を繋いで帰る。

それだけで幸せだと思うのも、里子がいるからだ。

怪我ももう治っていると医者から太鼓判を押されている。

あとは練習を重ねて、大会当日により良い成績を残すだけ……出来れば優勝を目指すだけ。

「里子からも応援されたし、頑張るしかないよな」

「そうだよ、頑張れ!」

やっぱり里子には笑顔が似合う。

鹿谷部長に三ツ谷先輩も応援してくれている。

「清水先輩も、最近の飯田くん頑張ってるって褒めていたよ」

「そっか」

褒められてると知ると、素直に嬉しい。

「大会、頑張ろうね!」

「ああ!」

二人で繋いだ手をぶんぶん振り回して、楽しく歩む。

「大会まで、一週間か……」

待ち遠しいような、そうでもないような。

俺は、みんなの期待に応えられるんだろうか。

でも、里子の笑顔のためなら。

頑張って跳びたい。

跳んで、里子の笑顔を見たい。

貰った靴紐を大切に握りしめて、決意を新たにした。

翌日からは練習に里子がくれた靴紐に付け替えた。

少し派手かと思ったけれど、里子を思い出してこちらも笑顔になり、少しずつ、跳ぶ高さも上がってくる。

視線を感じて顔を上げると、高塚がこちらに歩いてきていた。

「すごいね、飯田くん!」

何事もなかったような笑顔。

「……ああ」

周囲がまた騒つく。

俺が憧れた笑顔。

「靴紐を変えたんだね」

「里子がくれたんだ」

「私が渡したお守りは?」

「……」

俺が黙ると、高塚はまた笑った。

「分かっているよ、困らせてごめんね」

「いや、俺の方こそごめん」

「でも、捨てはしないで欲しいな。私なりの想いなんだからさ」

「捨てたりしないよ」

俺は神妙に頷いた。

元から捨てる気なんてなかったけれど、そう言われたら余計に気を遣う。

「何を話しているの」

里子が慌ててやってきた。

「新井さんが心配することじゃないよ。靴紐を新しくしたんだねって話をしていただけ」

「里子からのプレゼントなんだ」

一瞬、高塚の顔が曇った。

それからまた微笑んで「仲が良くて羨ましいな」と言って去っていった。

本当にごめん、高塚。

「本当に、何もなかったの?」

無くなった信頼を取り戻すのは難しい。

「何もないよ」

里子の指に俺の指を絡める。

暑いけれど、関係なかった。

触れ合うと、落ち着く。

「大会、楽しみになってきた」

「頑張るじゃなくて?」

「里子の笑顔を見るために頑張るのが楽しみ」

ニカっと笑って里子に言う。

里子は顔を赤くして、頷いた。

「応援、頑張るね」

「俺も頑張るよ!」

また笑い合って、鹿谷部長に「いちゃつくなバカップルー!」と怒鳴られた。

試合は明日に迫っていた。

夏の風が気持ちいい。

明日はいい日になりそうだ。

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