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1000回振られても君が好き  作者: 千子


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20/40

再生

翌日の放課後の教室。

誰もいない静かな空間で、飯田は一人で考える。

そろそろ部活に行くべきだ。

だけど、部活には二人がいる。

「あ、居た」

「高塚……」

「鹿谷部長が飯田はまだかって呼んでいたよ」

「そっか、悪いな」

「昨日のこと、考えてた?」

「……ああ。俺が二人に取った不誠実な態度にどう詫びればいいのか」

「そんなこと、いいのに。飯田くんの優しさに付け込んだ私が悪いんだし」

「……そんなことさせて、ごめん」

高塚は一瞬、笑ってから言う。

「そういう愚直さが好きだよ」

笑ってるのに、泣いてるような声だった。

高塚もまた、飯田との関係で何かを失っていたのかもしれない。

それを悟った瞬間、飯田の胸に重く後悔が沈んでいく。

「でも、そうだな。飯田くんが高校三年間、新井さんとよりが戻らなかったら私と付き合わない?」

「俺はどっちとも付き合わないよ」

「どうだか」

こんなに軽口を叩く高塚は初めてだった。

もしかしたら太陽と崇めていたのは俺だけで、高塚も普通の女子高生なのかもしれない。

「まあ、部活行こうか」

「うん」

俺たちが二人揃って部活に現れたことで、噂はより大きくなっていった。

里子がそんな俺たちを見て、悲し気に俯いていたところを見て、やっぱり里子への誤解だけは解いた方がいいんじゃないかと思った。


翌日から、俺はますます孤立した。

でも、逃げなかった。

噂が消えない中でも、部活では真面目に動き、練習にも休まず出る。

「俺が悪い。だから、せめて逃げずにいたい」

そう言って黙々と練習に精を出す俺を、部長たちが静かに見守っている。

今日も高く跳んだ。

太陽はもう怖くない。

チリチリとした音も聞こえない。

そこで、清水先輩に呼び出されて告げられる。

「人は、間違える。けど、向き合えるかどうかで変わるんだよ」

その言葉が、俺の胸に灯をともす。

その日の帰りに、忘れ物を取りに来た里子と鉢合わせた。

気まずい沈黙のあと、飯田が言う。

「……あのとき、ごめん」

短く、けれど真っ直ぐな言葉。

里子は目を伏せて、小さく息を吐く。

「今さら謝られても、何も戻らないよ」

そう言いながらも、声が震えていた。

その背中に、飯田は思わず言葉を重ねる。

「戻らなくてもいい。……でも、ちゃんと向き合いたい」

俺の言葉に、里子が初めて顔を上げて振り返った。

その目の奥にあるものは、怒りでも哀しみでもなく――まだ、微かに残った“想い”だった。

「……大会、もうすぐだよね」

「えっ、あ、うん」

「特等席で見ているから!」

それが里子の答えだと分かった時、言いようのない感情で涙が溢れてきた。

「ちょっと、こういう時は逆じゃないの?」

「里子だって泣いているじゃん」

「これはいいの!」

泣かせたのは俺だもんな。

「ごめんな、里子」

「……うん」

「俺、高塚のことも里子のことも悲しませたくなかったのに、二人とも悲しませていた」

「……うん」

潤んだままの瞳で顔をむき合わせる。

そっとキスをしたら応えてくれた。

「俺は、やっぱり里子が好きだよ」

「私も、慎太郎くんが好き」

ふふふ、と二人で笑い合って里子を家に送って俺も自宅へ帰った。

高塚が言った通りになったなぁ。

これからは里子を悲しませないようにしよう。

ぐっと手を握り誓う。

中学三年間は、高塚に捧げていたけれど、これからの人生は里子に捧げよう。

そう決めて、これからの将来に思いを馳せた。

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