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1000回振られても君が好き  作者: 千子


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11/20

高塚の本心

高塚はそれからも俺に構ってきた。

あの中学三年間はなんだったのか。

今更だ。

俺には新井がいる。

高塚はもう過去の思い出だ。

高塚がちょっかいを出す度に、中学三年間高塚に告白をしていた俺が高塚に靡かないか不安になる新井のケアも大切だ。

「新井、好きだよ」

「うん、私も」

それが段々力がなくなるのを俺はどうすればいい?

みんなの前で高塚にやめて欲しいと言えばいいんだろうか。

でも、中学からずっと一人きりな高塚に突き放す言葉を言ってしまっていいものか。傷つけていいのか。

高塚を気遣うことは、新井に不誠実じゃないのか。

そんなことをぐるぐる回って、高塚ファンの男子も敵に回して、俺はそれでも新井を好きだという気持ちで新井の側にいた。


それなのに。

「飯田くんって後悔したこと、ある?」

「なんだよ、急に」

部活が休みの日、日直のノートを担任に渡しに行った新井を見送った放課後、高塚が近付いて尋ねてきた。

「私はあるよ。ずっと私だけを好きだと思っていたのに、そうじゃなかった時、ああ、私はこの人のことを好きだったんだって思い知った」

「それって……」

「ねぇ、今からじゃ遅いのかな?」

高塚が潤んだ瞳で見上げてくる。

中学時代の俺なら泣いて喜んで頷いていただろう。

だけど、俺にはもう新井がいる。

新井との幸せな日々は、高塚の後ろ姿を追い掛けていた時より楽しかった。

「もう、遅いんだ。高塚」

「……そっか」

「ああ……ごめん」

俺が頭を下げると、高塚が笑った。

「なら、奪えばいいだけだよね。……奪ってでも、取り戻したいんだもん。あの時間を」

「え?」

「だって、飯田くんは中学の三年間も私のこと好きだったんだもん。飯田くんの好きな期間は私の方が長いし、これからのことを考えればチャンスだってある」

それは、そうかもしれないけれど。

「俺が新井以外を選ぶことはない」

「それはどうかな?」

高塚が背伸びをしてキスをしてきた。

「覚悟していてね、飯田くん」

それだけ言うと、高塚はさっさと帰って行った。

唇に触れた高塚は柔らかかったしいい匂いがした。

それでも、その感触を拭い去るように必死に擦る。

高塚の唇の感触を思い出す度、頭の中の新井の笑顔に罪悪感が刺さった。

新井に見られなくてよかった。

そう思っていたけれど、俺には教室に入れなかった新井と、そんな新井にすれ違い様に高塚が不敵な笑みを浮かべていたことには気付かなかった。

しばらくして、新井がやってきた。

「お待たせ!」

いつもの笑みなのに、少し違う。

「どうかしたか?」

罪悪感もあって余計に気になる。

「なんでもないよ」

元気に笑う新井に気のせいかと思い直して、俺達は帰宅した。

いつものように新井を送って帰る途中、俺は考えていた。

もし、もしも高塚の言うことが本当なら……。

高塚と新井の顔が交互に浮かぶ。

それでも、俺の心はもう新井にあった。

信じよう。

自分の気持ちを。

「会いたいな……」

さっき送ったばかりなのに、もう会いたい。

少し切なくなって、しんみりした。

これからは高塚の誘惑に負けないようにしよう。

キスとかされないように気をつけよう。

それが俺に出来る新井への誠意だと思った。

「新井、好きだ」

言葉にすればするほど、想いが深くなる。


しかし、翌日。

「おはよう、飯田くん。新井さん」

高塚が挨拶をしてきた。

クラスメイトの前で無視をするわけにもいかない。

「……おはよう」

「おはよう、高塚さん」

「今日もお昼ご飯、一緒に食べていい?私、飯田くんの分も作ってきたんだ」

その言葉に教室内が騒ついた。

「いや、俺には新井の弁当があるから」

「もう一食ぐらい食べれるでしょう」

「高塚、やめてくれ」

教室内は突如始まった三角関係に興味津々だ。

「高塚さん。飯田くんは私の彼氏なの。ちょっかい出さないで」

新井が警告すると、高塚は笑った。

「私と飯田くんがキスしても何も出来なかったのに?」

教室が一瞬、息を呑んだ。

するりと高塚の細い腕が俺の腕に絡まる。

「やめてくれ!」

咄嗟に振り払うけれど、新井は悲しそうな顔をしていた。

でも、それは一瞬ですぐに高塚に対峙して宣告した。

「でも、飯田くんが好きなのは私だもん」

「ああ。俺も新井が好きだ」

俺達の甘い雰囲気にも高塚は怯まない。

「でも、飯田くんは三年も私を好きだったんだよ?後から出てきた新井さんより、私の方が飯田くんが私のことを好きだった時間は長い」

「それは過去のことだ。俺はこれからずっと新井が好きだ」

「飯田くん……!私も、飯田くんがずっと好きだよ!」

「ふぅん……」

高塚は薄っすらと笑うと、予鈴と共に自分の席へと戻っていた。

「それがどこまで続くか、私に見せてね」

教室内の騒つきは、やがて校内にも広がった。

俺たち三人の関係は、学校内の噂になっていった。

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