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1000回振られても君が好き  作者: 千子


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10/20

高塚の言動

「おはよう、新井」

「おはよう、飯田くん」

昨日の甘い雰囲気を引き摺ったまま、朝の挨拶をする。

恋ってこんなに幸せなものなのか。

高塚に振られ続けた三年間は苦しくて、悲しくて、半ば意地になっていた。

俺に笑い掛ける新井が可愛。

守りたいと思う。

俺の席で話をしていると、高塚がふらっと寄ってきた。

「おはよう、飯田くん。新井さん」

「……おはよう」

「おはよう」

高塚は、新井に打たれてから時折ちょっかいを出すようになっていた。

今日も二人の時間を潰されるのかと思うと、中学三年間好きだった相手なのに憎くなってくる。

「何か用か?」

少し冷たい声になってしまう。

「やだな、朝の挨拶をしただけでしょう」

微笑まれてもその美しさは毒にしかならないことを俺は身をもって知っている。

「そうか」

それだけ言って、不安気な新井に向き返って話の続きをする。

新井は一瞬高塚を見て複雑そうな表情をしたが、すぐに俺の話に乗ってきた。

「また、うちに遊びにきてね」

「もちろん」

「お母さんも飯田くんのこと、気に入っちゃって」

これは新井による高塚への牽制だ。

それがわかっているから、新井に合わせる。

「ああ。また遊びに行くよ。今度は俺の部屋にも遊びに来てくれよ」

「えっ!?いいの!?もちろん!今すぐにでも行きたい!」

「まだ一限も始まってないよ」

笑い合う俺達を尻目に高塚は自席へと戻って行った。

高塚は、中学も今も一人だ。

高嶺の花に近付く虫は身の程を弁えている。

弁えていなかったのは俺だけだ。

その俺が新井と一緒にいると、高塚に寄る人はいなくなっていった。

……そういう寂しそうな後ろ姿に惹かれたんだよな。

昔を振り返って今の彼女を見る。

新井は俺が中学三年間好きだったことを知っているから少しでも高塚に関心を持つと不安になる。

だから俺は何度も言って聞かせる。

「俺が好きなのは新井だけだから」

「飯田くん……ありがとう!」

やっぱり新井は笑っている姿が可愛い。

「朝から惚気ないでくださーい!」

なんて、クラスメイトの野次がなんだ。

俺には新井が一番大切なんだ。

それでも、チラチラ見える寂しそうな後ろ姿が気になるのは、習性になってしまったせいだろう。

ずっと後ろを追い掛けていたら女性より、笑い合える彼女の方がいいに決まっている。

新井を不安にさせないように。

大切にするように。

高校は振られるまで新井を愛そう。

そう決めていた。

新井との未来は、今より楽しいだろう。

そう予感して、一限が始まるので新井は自分の席に戻った。

どうせ休み時間は毎回会いにくるのに寂しそうになるのが可愛い。


けれど、その日の昼休みは違った。

「私も一緒に食べていい?」

高塚の一言で教室内が凍りついた。

校内に認められるカップルの昼休みに、高嶺の花が一輪寄ってきて混じろうと言うのだ。

「ほら、同じ陸上部だし」

「陸上部なら他にもいるだろ」

そいつに目を遣ると、厄介ごとには巻き込まれたくないのか目を逸らされた。

こんちくしょう。

そう思っている間に、高塚は三つ目の机と椅子を俺の席にくっつけて、悠々とパンを食べ始めた。

俺と新井は困惑して何も喋れないまま新井から弁当を受け取って食べ始めた。

「飯田くんのお弁当、美味しそうね」

「新井が作ってくれるからな」

「私も本当は作れるんだ。今度、持ってこようか?」

そう言って笑う高塚の意図がわからない。

「いいよ。俺には新井の弁当がある」

「そうだよ。高塚さんは無理しないで」

「無理じゃないよ。明日、持ってくるね」

一人で決めてパンを食べ進める。

高塚、お前は何をしたいんだ?


その日の放課後は練習に身が入らなかった。

高塚が甲斐甲斐しく俺に世話を焼いてきたからだ。

新井の機嫌は大変に悪い。

「高塚、やめてくれないか」

「マネージャーの仕事の一環だよ」

清水先輩を見る。

清水先輩はすぐにきて、他の部員にも平等に接するように言った。

「高塚さん、どうしたんだろう」

「さあ?」

俺と新井は首を傾げた。

そんな俺たちを見て、高塚は静かに笑った。

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