表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ーUntil the Daybreakー  作者: Lauro
序章 ーin the Duskー
51/114

第8章 ーFeel Grabbed is…ー

「実はセリエは………暗殺された……」

グレイドの口から告げられた真実はセレンの時を凍りつかせた

「う…そ?……嘘…でしょう…?ねぇ…嘘でしょうエルシア?」

セレンの表情は凍りついたまま涙が溢れる瞳でその言葉を繰り返す

「実は…セレン様が城を抜け出される前の日に……」

エルシアは真実の刃が心に突き刺さったセレンの様子を直視出来ずに眼を逸らす

「ねぇ…!?嘘でしょう…?!お父様っ……!!嘘だと言って…お願いだから……っ!!」

セレンはグレイドの服を握りしめその場に崩れ落ちた

「すまないセレン……私に力がなかったばかりに……!」

グレイドは自分の妻を失い

また、その真実を娘に伝えてまた娘の悲しむ姿を見なければならないという

二重の苦しみに奥歯を噛みしめるしか出来なかった

誰もこの牢獄のような光も差さない喪失感の中に囚われた少女に声をかける事は出来なかった

「アルト、メリッサ…セレン達を頼む……」

ラルクはそう言って凍りついた時から脱け出す

まだラルクにはやらねばならない事がある

今は彼女達と歩みを止めて悲しみを共有する時間はラルクには与えられない

城内を城門へと急いでいると

謀反軍の騎士に遭遇する事はある程度覚悟していたが

不思議な事に謀反軍の騎士の姿が見当たらない

その事にラルクの心はますます不安に煽られ城門へと急いだ


城門前の広場へと出てくると

まず眼に入ったのが開かれた巨大な城の扉

そして、次に眼に入ったのが

「シルヴィアっ!!ライカっ!!」

ラルクは開かれた城門の前に鮮血の中に横たわるシルヴィアとライカに駆け寄った

「よぉ…ラルク……そっちは終わったか……?」

無理はしているが喋れる所を見るとどうやら2人とも無事のようだ

それだけでも冷や汗が少しひいていく

「少ししくじってしまいました……」

シルヴィアは血にまみれた体を起こそうとするがラルクが優しく体を抑えて寝かせておく

「お前達大丈夫なのかよ?!」

傷を拡げないように気をつけて傷口の場所を確認すると

上手い具合に急所は外されているようだ

「大丈夫…大丈夫…っつぅ…!…あぁ…門開けといたぜ……」

ライカは乾いて固まった血が付いた指で城門を指差す

「あぁ…よくやってくれたよ…!それよりこの傷誰にやられた?」

傷口の広さからするに多分剣で斬られたものだろう

しかもギリギリの所で急所が外されている

聞いてはみたがもう誰の太刀筋であるか予想はついている

強く記憶に刻まれているからだ

「セルシウスが……時間は稼げたと…この城は囮です……!」

シルヴィアがその名を口にした途端

分かってはいたがラルクの心臓は苦しくなるくらいに大きく高鳴った

「多分今頃は…レギオン王城に向けて…戦いおっ始めてるよ……」

ライカは小さく喉の奥で呻き声をあげて上体を起こした

「分かった…メリッサ呼んで来るから待ってろ……」

ラルクは立ち上がりメリッサの元へと急いだ

連合軍が到着したのはそれから間もなくの事だった


その夜のルシア王国と黒獅子の牙の合同軍議でシルヴィアの見立通り

ダンケルク城は謀反軍の陽動作戦の囮だった事が改めてはっきりした

連合軍はそのままダンケルク城を占拠し救出したグレイドとエルシアを迎えたが

手放しでは皆喜べないまま軍議が開かれる事となった

「今回は貴殿らのお陰でご両人を救出する事が出来たが……うしなったものはあまりにも大きいな……」

自らの主君を失ったシリウス、クラウディアはラルク達と同じく声にいつもの覇気がない様子だ

「実はセリエ様は謀反の事は何もかもご存知で誰にも告げる事なく自らを犠牲に……すみません…私がもっと早くに気づいて差し上げていれば……!」

エルシアの白い肌が悲しみに陰る

この場にいるルシア人は全員同じ様子だ

「いや…責めを負うべきは私だ……セリエの夫でありながら守ってやれなかった…!」

グレイドもエルシアと同じように俯いた

「いいえ…それなら私達が責めを負うべきですわ…」

「オイオイ!手前ぇらの仕事は過ぎた事を嘆く事じゃねぇだろぉが!しっかりしろよグレイドよぉ!」

その状況を見兼ねたゲルダがルシアの者たちを一喝する

俯いていた背筋がピンと伸びるような一声だった

「……確かにそうかもしれんなゲルダ。今はセリエが残してくれた者たちと共に戦うべきだな…私達の国を取り戻すために皆力を貸してくれ…!!」

グレイドの言葉に皆が決意を胸に頷いた

ただ俯いた1人を覗いて……

その後、話し合いはまとまり明朝謀反軍を追ってガルシア王都レギオンへ向かう事になった

会議が終わるとラルクはライカとシルヴィアが看病を受けている部屋へと向かった

「あ、ラルク!今さっき2人とも寝ちゃったよ」

2人のベッドの両脇に座るメリッサに言われて2人を見ると

心地良さそうな寝息を立てて眠っている

「こうして見てるとシルヴィア君の寝顔ってかわいいね!いつもはあんなに険しい顔してるのにさ…」

メリッサはシルヴィアの白くて柔らかそうな頬を人差し指でツンツンと突ついてみる

確かに言われてみればこうして寝顔を見るとまだまだ幼い子供だ

「そうだな…2人の傷の具合は?」

聞かれるとメリッサはどことなく安心した様子で頬を緩ませる

「うん、さっきエルシア宰相が来て手伝ってくれたお陰でほとんど良くなったんだ。やっぱ宰相ともなるとすごい魔術使うんだね~。アタシも頑張らないと!」

拳を作り小さく脇を締め気合を入れるメリッサをよそに2人の傷のあった場所を見ると

傷跡が分からないくらいに完璧に治癒している

「そうか、じゃあ2人を頼んだぞ…」

ラルクはメリッサに背を向けて部屋の扉の取手に手をかけると

「ねぇラルク、アルト…大丈夫かな……?」

多分それとなくメリッサもアルトの変化に気づいていたのだろう

「じゃあ、今度アルトの話しでも聞いてやってくれよ。俺じゃ話してくれない事もあるだろうからな…」

多分アルトはまだ自分にも話していない事を沢山持っているだろう

「そだね!じゃあ今度そうするよ、おやすみラルク!」

ラルクの背中に手を振るメリッサにラルクも同じように返し部屋を出た

「さて…アルト姐さんを探すか……」

ラルクはそう呟きながら出てきた部屋の扉にもたれかかった


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ