第8章 ーReached the Truthー
「ラルク…アレ…!!」
メリッサが小声でラルクを呼ぶ
「セレン、あの2人でいいんだな?」
薄暗い廊下に並ぶ牢獄を見張りの視覚から覗き込みながら
ラルクはセレンに確認を取る
「お父様…エルシア…!!」
とセレンが叫ぼうとしたがラルクに口を抑えられた
叫びたい気持ちは分かるが今それをされては全てが水の泡だ
きっとこの手の空間では小さな声であっても響き渡ってしまう
「よし、んじゃアルトは何か見張りの動きを止める魔術を撃ち込んでくれ。見張りが怯んでる間に一気に俺が片付ける」
「分かった……」
ラルクが指示を出したがアルトからはどこか他の所にしているような返事が帰ってきた
「メリッサはセレンを頼んだぞ……じゃあアルト…」
メリッサに促しアルトが魔導書を開く
そして、詠唱が終わると
アルトの掌には強い光を放つ球が出現し
アルトはそれを見張りの騎士に向かって放つ
「うわっ…っ!?」
牢獄を見張る2人の騎士の内1人が
体を縄で吊られて引っ張られているかのように飛ばされていく
「て、敵しゅっ…!!」
残されたもう1人が言い終える前にラルクが剣で口を永遠に封じる
次にラルクは状況確認をしようと振り返ってアルトを探すと
先程アルトが彼女の魔術で吹き飛ばした筈の騎士が剣でアルトの槍を相手につばぜり合いを演じていた
どうやら体が飛ばされただけで運良く致命傷には至らなかったようだ
だが、アルトならどうという事はないだろうと思いながらしばらく眺めていると
アルトは相手の見張りの騎士剣にに押し切られそうになっている
「死ねぇっっ…!!」
ついにアルトの槍は押し切られ騎士が剣を高々と振りかぶる
「…ッ!!」
アルトは肩を竦めながら顔を背けて振り下ろされる刃に眼をギュウッと瞑る
「グハッ…!!」
だが、倒れたのは剣を振り下ろそうとした騎士の方だった
「アルト、大丈夫か?」
ラルクはゆっくりと肩の緊張を抜きながら眼を開けるアルトの肩を支えるように手を触れる
「すまない……」
またいつもの彼女の覇気が感じられない返事を返す
本当に先程からアルトの様子がおかしい
いつもの彼女なら押し返されたとしても致命傷を受けないように体を動かすはずだ
「お父様っ!エルシアっ!」
今度はセレンの叫びを邪魔する者はいなかった
「セレン…なぜここに…!?」
短い白髪頭に綺麗に切り揃えられた髭の男
こんな薄暗い牢獄にいても上等な服を身に纏いそれを纏うにふさわしい雰囲気を持つ
改めて言われなくともセレンの父
ルシア王国女王の夫君グレイドである事が分かる
「セレン様どうして…?」
自分の仕えている主が自分を助けに来たという事実に驚きを隠せない美しい女性は
淡いマロンペースト色の肘ぐらいまでの錦糸のような艶のある髪に
金色の月明かりのような色の瞳にセレンを映し
肌は柔らかい光のように白く
触れてしまえば消えてしまいそうな儚げな雰囲気を漂わせている
この牢獄の中に淡く光る儚い光がルシア王国宰相エルシアだ
「キレイな人……」
同性であるメリッサでさえもその姿に眼を奪われてしまう程だ
ラルクが倒れている騎士の身につけている物から鍵を探し出し
2人を牢獄からだすとセレンは2人に幼い子供のように抱きつき
再会して湧き上がる諸々の感情を噛みしめる
「2人とも無事で良かったです…!」
潤んだ彼女の声からは彼女がこの瞬間を迎えるまでどれだけの不安に苛まれていたかがよくわかる
「セレン…無事で良かった…!」
震えるセレンの背中をグレイドは優しく撫でる
「ご無事で何よりです…」
エルシアもセレンが幼い子供であるかのように頭を優しく撫でる
「感動の再会に水差して悪いんだけど、ひとつ聞いてもいいか?」
剣を鞘に収めながら声をかける
「君は信託の傭兵団の……」
「グレンの息子のラルクだよ」
「ガルシア王国軍衛生師団所属のメリッサです」
メリッサも続けて名乗りぎこちなく頭を下げる
いかにも緊張しなさそうなメリッサでも他国の王族を前にしては少し緊張しているようだ
「我が娘の護衛の任、感謝する…」
グレイドはその短い白髪頭を深々と下げた
「私からもお礼を言わせて下さい…」
エルシアも美しく儚げな声でそう言って頭を下げた
「アンタ達が無事に見つかってよかったんだけど、セレンの母さんのセリエ女王は別の部屋かなんかに囚われてんのか?」
本当はセレンが聞くべき事なのだろうが
一刻も早く早くセリエ女王を救出しなければいけないためあえてラルクが聞いた
「……………」
だが、聞かれた2人はしばらく眼をうつむかせて黙っている
2人のその瞳からは悲しみとも取れるような感情を感じた
「セレン……落ち着いて聞きなさい………」
グレイドはセレンの両肩に手を添えて真っ直ぐ彼女の瞳を見た




