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第5話 立ち上がり! 後編

「あらあら……此方にいたのね」


公園の車止め。

その近くに黒光りの外車が止まるのが見えると

ゆっくりと近づくのは3人が今、まさに

話をしていた話題の中心人物である。


「随分と探しました……」


そう流暢に小言を挟みながら日光に照らされる。

3人はその場からは動かなかった。

ただ、ちょっとした修羅場に

サキは耳をピクり動かす。


「篠宮エミィ……アナタが何故ここに?」


イマが目を細めながら1番に突っ込む。


「なぜ……ね」


エミィは3人と同じ屋根の下に入ると

顎に手を添えて、サキを一瞥し

それからカコの顔をチラッと覗いた。


「な、なんですか……

ま、まだ何か言い足りなかったんですか?」


カコが上から見上げるエミィに強気に答えた。

メンタルはある程度、回復したかもしれないが

ただ、それも回復しただけであり傷跡は消えない。


「まずは……謝罪します……ごめんなさい」


突飛な行動であったが、エミィは彼女なりの

誠意として強く言葉を正すと

深く頭を下げる。


――またしても3人に何か、閃光が走った。

サキ達にはその頭下げは体感30秒。

それほど長く真意の伝わるものであった。


「き、急になんですか?

い、今更、謝罪なんて……」


カコが柄にもなく、瞬時に問いた。

手や足は軽く震えていて


「それに、何に謝ってるんですか……」


運動メニューで熱くなり過ぎた身体には

冷えて効いた。


「エミィが……アナタ方

3人に向けて放った言葉と行動の数々によ」


「どう言う、風の吹き回しですか?エミィさん」


イマが冷静に言い放つ。

実際、内心は驚愕が4割、疑心が6割である。


「そうよね……そうなるわよね……」


エミィは少し切なげに口元を暗く落とす。


整った綺麗な横顔が、ポニーテールが

瞳に映ったカコはふっと机に俯く。


「美鴨サキの一言に……エミィは腑に落ちたの」


「へ……私?」


サキが唐突に呼ばれた為に自身の

人差し指を胸に突き立てて

素っ頓狂に声を上げた。


『自分が成りたいアイドルは定義とか無くて

正真正銘のアイドルなんだよ?』


エミィの脳内に、この一言が強く

突き刺さったのだろうか。

どっちにしても、イマ、カコは

急な心代わりに裏を感じぜざる得なかった。


「思えばエミィは勝手に“アイドル”を定義していた……本当、いつからでしょうね」


エミィはどこか遠くを見る様に語って聞かせた

語ったと同時に、不安定な笑みを見せる。


「いつから、純粋にステージの上を……

目指さなくなったのかしらね」


「んで……それだけですか?」


静かなる苛立ちが込められていたイマの一言。

その一言で彼女は斜め右下を見ながら


「えぇ……」


カコが机を、強く叩いた。


サキが突然のカコの爆発に、眉を下げる。

イマは無表情に彼女の怒りを感じていた。


流石のエミィも驚いたのか半歩、後ろへと。


その場に立ち上がったカコは

エミィと同じ目線となり、目に涙を溜めた。

怒り慣れていない彼女の全身は震えていた


「……カコ」


イマがカコの名前を読んだ。

それは宥めるように静かに、包むように。


「ごめん……ワタシ……許せないや」


カコはそう言って音を立てずに

その場に、また座った。


エミィはその言葉を聞いて、顔を伏せる

まるで罪悪感を抱えるように。


サキとイマは、途切れなく

彼女の所作を見て

何も言えずに、その感情を知る。


「ごめん、サキちゃん、イマちゃん

ワタシ……もう帰るね」


と一言、声を落として荷物をまとめて帰ろうと

立ち上がったカコ。


「ええ!ちょ、ちょっと待ってカコ〜」


サキは間髪入れずに、彼女を止めようと

立ち上がり彼女の側に立った。


その姿をただ、何も言わずに

イマは深刻な面持ちで静止し、見ていた。


「ごめんね、ワタシ……

用事あるの思い出しちゃって」


カコは誰にでもわかる偽りの笑顔を見せると

止めに入るサキの手を優しく握った。


「……櫟木さん、不快にさせてしまって

本当にごめんなさい」


エミィは、この事態を重く受け止め

また一度、彼女に頭を下げた。

そして事態を引き起こした自身への戒めとして

唇を噛んだ。


「ううん……折角、エミィちゃん謝ってくれたのに……ごめんねワタシ、心が……狭いのかな……」


そう言って、カコは3人に背中を向けて

何も言わずにそして二度と

振り返る事なく去っていった。


残された3人は神妙な顔つきで

場は気詰まりしていた。


サキは、去っていく彼女が瞳に映らなくなった後

彼女が座っていた席に力無く座った。


「こんな筈じゃなかったんだけれどね

本当、ごめんなさい……私には非しかない……」


エミィが着ていた綺麗で清楚な白のワンピース。

そのウエスト端の生地をギッと強く掴んで

「どうすればよかった……のかしら……」

気詰まりした場に切り出した。


「ええ、アタシは取り敢えず謝罪は聞き入れました

ただ、許せるかどうかは個人の問題なので」


イマは淡々と返すと、エミィを一瞥。

すると足元に置いてあった自身のバックを漁り

水筒を手にして飲んだ。


ただ、イマにも感情はある。

カコの様に怒りは確かに感じているのか

ギラついた独特な雰囲気を醸し出していた。


だがしかし、この現状でその様な感情を曝け出す

メリットと言うのは彼女は見出さなかった。


「カコがエミィちゃんを許せなかったのは、きっと……誰よりも夢を諦める痛さを知ってるから……なんだよね」


サキがカコから、人知れず貰っていた

飴玉の個装袋を手の平に乗せて告げた。


「そう……ですね。」


イマは、春風を受けながら物静かに相槌。


エミィは、その場で立ち尽くしたまま

ただ噛み締める。


「ねぇ、エミィちゃん……」


名前を呼ばれた事にエミィは気付いていながら

サキ、イマの顔を直視する事が出来ずにいた。


「エミィちゃん、私の一言で腑に落ちた……

って言ってたよね」


サキは事実確認を行う様にエミィに。


「え、ええ……」


彼女はこの後、サキに何を言われるのか

どうするのか、見当も付かなかった。


「どうして、アイドル……エミィちゃんは

好きになったの?」


エミィは予期しなかった問いに、動揺したのか

遂に顔を上げて2人の顔を窺った。


そこには

なにも、眉間に皺を寄せている訳でもなく

呆れ返ってる訳でもなく


ただ、純粋に知りたがっているサキの表情が

エミィの目に大きく映ったのだった。


「ほら、“勝手に定義していた”〜とか

“いつからが純粋にステージを”〜って

言ってたから、知りたくなっちゃって」


サキが優しい目で話し掛けるので

エミィは動揺を隠せなかった。


「ど、どうして、そんなエミィの……

昔話とかに……興味あるの?エミィのせいで

櫟木さんは……エミィは最低な事をしたのに」


ここでサキは自身の

隣の余白の席をトントンと叩いて

“ここに来て、座って”と言わんばかりに

エミィに目配った。


エミィは恐る恐る、近寄り

申し訳なそうに席に着いた。

目の前にはイマが机に肘を突いて両手を組み

審査する様に見つめてきた。


「私は2人にキチンと謝ってくれたし

後はエミィちゃんがこの後

どう2人と変わっていくか楽しみなんだ」


サキは未来を見据えている

そんな風に思える様な落ち着いた発言だ。


「……どう変わっていくか……」


エミィは反芻し、頷く。


「そりゃ、屋上の時は絶交してやる!

とも思ったけど……よく考えたらエミィちゃんも

『Girls Storys』目指してる訳だから――」


ここでサキは手に持って弄っていた

個装袋をギュッと握りしめて言葉を少し溜めた。


「焦りとか熱とか、プレッシャーだとか

色々と背負っていたり、感じているのかなって」



エミィは、自身の抱えている事を伝えるべきか

または伝えないべきか葛藤していた。


「そう……ね」


話しをしたとて彼女達に情に訴えている様で

どこか許しを乞うための狡猾さに思えてしまう

実際、誓ってそんなつもりではない。


ただ、ここで話さなかったら

失礼だとも、話すべきだとも巡っていた。

折角、サキやイマが自身の為に聞く耳を持っている現状に泥を投け掛ける行為はしたくはない。


エミィは刻々と過ぎる時間を感じながら

少しの沈黙の末に


「……聞いて……くれる?

エミィと妹のエミナの話を……」

次回更新は明日20時!


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下記のYouTubeチャンネルにて

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