第4話 篠宮エミィ襲来!
――――美鴨サキ 自宅 4月9日 日曜日
サキは自身の部屋の中で
スマホを通して2人と会話を楽しんでいた。
《ねね、ステップ2ってさ飛ばしてもいいよね?》
《は?何を言ってるんですか。》
《だって全然ッ!思い付かないんだもん!!》
《ワタシとイマちゃんも、もう直ぐでステップ2だから、少し待ってよ〜サキちゃん!》
《んー……じゃあ、一緒に考えてくれる?カコ〜》
《うんうん!一緒に考えてみよ!》
現在、美鴨サキは0次審査 ステップ2の段階において、一番重要な“自分探し”を強いられていた。
サキは自室のベッドで力無く倒れ込むと
大きなため息。
「んはー、なになになに?自分探しって……」
サキは横になったまま自室の部屋全体を見渡すと
肩を重く落とす。
「私って…………」
1人呟くと、飾ってある三美神や他の好きなアイドルのグッズにすら、ヤケに虚しく思えてきたのか
抱き枕をギュッと握りしめた。
「1人じゃ何もできないや…………ダンスも歌も、真似して、やっと手に入れた物だし…………」
そのままサキは逃げる様に瞼を閉じて
眠りに落ちるのだった。
――――先日、3人が決意の表明をした日。
「んで〜ステップ1ってまだ
終わりじゃないんだっけ〜?」
放課後、いつも通り3人で帰路を共にしていた。
サキの手には、通りのコンビニで買った
アメリカンドッグ。
「はい。厳密には終わってません」
事務的に答えるイマ。
「だは〜」
サキは肩をすくめて
アメリカンドッグを咥えた。
「まあまあサキちゃん……」
カコは、そんな若干の不貞腐れ状態の
サキを宥める。
「ただ、まあ……サキの掲げるアイドル像の決定打は実質的に私達が関与していた事ですからね……」
そう、美鴨サキのステップ1にて掲げた
アイドル像はこうだ
『この3人で一緒にアイドルを目指して、一緒に叶えて!色んな人に笑顔を届けるアイドル!!』
「あぁ、確かにだね〜……
サキちゃんもまた意表を突いたというか、裏ルートを開拓したというべきか」
苦笑いにカコは言うと
サキは何のこと?と言わんばかりに
2人を見合わせた
「つまりですねサキ……アナタはステップ1において、すべき事は殆どやり尽くしたという事です」
「へ……どいう事?イマとカコ誘って終わり?
だってほら、“色んな人に笑顔を届ける”って言うのに関して、なんもしてないよ?」
またしてもイマはため息をつくと
「ナチュラルボーンエアヘッド……」
と一言ボソッと呟いて
呆れた顔をしたまま前を向いた。
「ほげ……?」
耐えずカコはサキの耳に口を近づけて
「イマちゃんはね、サキちゃんはそのままで
“良いんだよ”って事を伝えたいんだと思うよ」
と、ほんのり教える。
「え……ほんと?」
「うんうん!イマちゃんは“シャイ”だから
自分の口からは言えないんだって……」
「そっか〜」
カコは先を行くイマを
サキと見合ってクスクスと笑う。
すると茶化す様にイマの背中を突くサキ。
「は……?」
尽かさず、振り返るイマ。
その振り返り様に、悪い顔を浮かべるサキ。
「いやあ、まあイマは“シャイ”ですから!」
「なんですか、受け売りですか?
サキが“シャイ”なんて言葉、日常会話で使うなんて事はないでしょうから……」
突飛なことに眉を細め、イマは斜に構える。
「え?なんか酷くない……!?」
――――次の日
昼下がり、高校の屋上。
今日もまた3人がいつも通り集まる。
カコは弁当を膝に抱えて
ぼんやりと考え事をしているみたいだ。
「ね〜カコ〜?」
「ねーーカコ〜」
近くからサキが呼びかけているのに
カコは上の空……。
やっと、自分が呼ばれている事に気がつくと
愛想笑いをする。
「あー……ご、ごめん考え事してたの」
「考え事ってステップ1のこと?」
「う、うん……」
カコが座るベンチにはイマが隣にいるので
サキは、屋上の出入り口の扉にもたれて
話を聞いてみる事にした。
「感心ですが……抱え込むのは禁物ですね」
「そう、そう〜」
イマが、またしてもコッペパンを
手に持ちながら助言する。
「一応、ワタシにも理想のアイドル像は
あるんだ……だけど……ね……」
カコは弁当を置き、蓋をする。
「え?何々、言ってみせて!」
少し気ごちない間があると
カコは空を見上げた。
「『ワタシがワタシであるように自然体に』
……これがワタシの理想のアイドル像なんだ……」
他の2人は、その答えを耳に通す。
するとサキは扉から離れカコの隣に向かう
「カコ……」
――その時だった。
ドンッ!!
離れたばかりの屋上の扉が
何者かが、勢いよく……身体が、脳が
それを聞いて脊髄で音の方向を見るほどに。
3人が、その先を見ると
金髪のポニーテール。
道行く誰もが一目、二目と彼女に振り向く
青色の瞳に、鼻筋が通っていて色白肌。
服装は、この学校の制服だ。
「ちょっと……失礼?」
その端正な顔立ちから想像できないほどに
鋭く、刺々しい物言い、その獰猛な目線。
3人は時が止まったかのように
ただ、その姿を直視する。
「え、えと〜アナタは〜……B組の〜」
「2年B組の篠宮エミィさんです」
突然な事だが、サキは口走ると、咄嗟に
イマが情報を加えた。
「そう篠宮エミィよ」
まるで大昔のお嬢様かのような
その自信満々な立ち振る舞い。
「談笑中に……ごめんあそぼせ」
エミィは
一瞬、黙り込むと、半笑いで指を指した。
「いい?この篠宮エミィは!
『Girls Storys!』で1番になり
天下を取りますから!!覚えておくといいわ」
少女が口にした『Girls Storys』
その言葉を人聞きした3人に稲光が走った。
物1番に興奮を表したのは当然、美鴨サキ。
「へぇ!!マジ!?まさか自分達以外にも
この学校にいたなんて!!」
彼女は篠宮エミィの目の前に立ち
強引に手を握り、握手を交わす。
「ふっ!光栄に思う事ね……美鴨サキ!」
「わっ、名前知ってるの?」
「そりゃ勿論よ……」
イマは食べ掛けのコッペパンを食べ始めると
鋭い目つきで彼女に問いかけた。
「で……突然なんの様ですか?」
「あら、ごめんあそばせ……新岡イマ」
エミィが気品高く話すと
カコがイマの前に出て、意図的に視線を塞いだ。
「ご、ごめんね……屋上独占しちゃってたね」
カコは穏やかに、エミィが突然やってきた意図を
探る様に彼女に問いかけた
「アナタは櫟木カコね。いえ、屋上に用があった
訳じゃないわ……まあ簡潔に言えば」
――エミィは、そのポニーテールを揺らして
3人をまとめて目に捕えれるように移動する。
そして、また3人を指差す
「“品定め”です……」
サキはキョトンとする「品定め?」他2人は
鋭い目線でエミィから目を逸らさない。
「アナタ方もオーディションに挑む事は
リサーチ済みです、なのでライバル……として
同じ応募者としてのですわ」
「あ、ええと……エミィさん……
どうしてワタシ達がオーディションに
応募する事を知ってるの?」
カコが、しどろもどろと慣れない感じで
言葉に出すとエミィが被せて話し始めた。
「それは……昨日、廊下を歩いていた時に偶然、その微かな音楽を聞いたからよ」
サキが、口を大きく開けて
「あっ、私の……?」と小さく呟く。
「驚いたわ……まさか三美神の「トワイライト」が聞こえてくるのだもの……」
エミィは小さく頷いて
「音の発生源を探って
特定したのが“この屋上”だったって訳よ」
エミィがサキに近寄り
何か裏を含んだ笑みを作る。
「扉越しから見ていましたよ。アナタの演技、素直にとても素晴らしかったわ」
サキはパッと晴れやかになり
2人に目線を送るが、スルーされる。
「――その後、『Girls Storys』の話題があり調査の余地があると判断したので暫く、後を付かせてもらいました……」
すると、今まで静かに聞いていたイマが
ベンチから立ち上がり
浮かれていたサキの横に立つと
「つまり、アナタはストーカーという事ですね」
「あらあら、それは世間体が悪い事ね〜」
「何でもいいですが……エミィさんアナタは
アタシ達に何を言いにきたのですか?」
こう言うトラブル系の事はイマが強く出れる。
淡々と事実と論理立てて解決法を模索するからだ。
「そうね……端的に言うと、今のアナタ方達には『Girls Storys』は無謀って事よ」
「え、無謀って?それはエミィちゃん
なんか違くない?」
サキが必死に声立てると
エミィは人差し指を口に押し当てて
静かにと言わんばかりだ。
「美鴨サキの演技は確かに
歌のハリもダンスのキレも中級者並みなのは認か
しかし『Girls Storys!』では平凡に成り下がる」
イマが静かに問いかける。
「それはアナタの推測ですか?」
「ええ勿論……だけど新岡さんも理解してる通り
『Girls Storys!』は“三美神”と並び
そして超える人材を発掘するオーディション。
注目度も比にならないわ」
カコはイマの隣に立って、面と向かって
エミィの表情を確認して
「無謀でも……応募は自由だよ?」
弱々しく言う。
「ええ、当然です……
だからこそ警告をしているんですよ」
エミィが空を見上げて
静かにイマとカコを見つめた。
「美鴨サキさんはもしかしたら書類選考突破し得るかもしれませんが、お二人は兎に角“華”がない……書類選考すら通らないでしょうね」
真剣に顔色一つ変えずに捲し立てていくエミィ。
「別に今回の『Girls Storys!』でなくとも
“アイドル”ってのは成ろうと思えばいつでも
なれる物なんだから」
サキ、イマ、カコと順々に顔を一瞥する。
「アナタ達が、そこまで今回の件に拘る理由なんて、ないでしょ?」
3人はただ言葉の乱射を浴びるのみだった
止めようとする間に乱射に圧倒されるからだ。
「ああ、そうね……
挙句の果てに、そこの櫟木カコさん――」
エミィはカコを名指しし
彼女に鋭い視線を送る。
「『ワタシがワタシであるような自然体に』
って言ってました?笑止千万ですわね……」
「ちょっと!それ以上言ったらエミィちゃん
私、絶交するよ?謝ってよカコにもイマにも……」
我慢出来ず、尽かさずサキが
言葉の集中乱射を止めに入る。
「でも実際、自分達でも分かり切っていた事では?
これは単なる、仲良し同士の馴れ合いで突破出来る事柄ではないって――」
「っ、だから辞めてって言ってるでしょ?」
サキは強く止めに入る。
彼女にとってイマとカコを悪く言われるのが
どうしようもなく辛く、そして嫌な事だった。
「いいの……サキちゃん」
カコは何も言わず。エミィに近づく。
逃げずに、そのエミィの批判を浴びた。
「アイドルってのは“自然体”を偽る職業なのよ
それすら理解していないアナタに……
果たして“成れる”のかしらね?」
サキが膝が震えて、今にも砕けそうな彼女に
引き寄せられる様に近づくと彼女の肩を支えた。
「別にいいじゃん……」
――サキが今度はエミィの言葉に重く被せた。
「私、今日初めて知ったよ“ソレ”……
誰が、そんなの決めたのアイドルの定義とか」
エミィは言葉を濁す
「それは……」
すると、少しの沈黙の後、顎に手を添え始める。
「――自分が成りたいアイドルは定義とか無くて
正真正銘のアイドルなんだよ?」
サキが言い終える頃には
イマがカコに寄り添う形でベンチに腰掛けていた。
――キーンコーンカーンコーン
タイミング良いのか、悪いのか
昼休みを終えるチャイムが鳴った。
エミィは、そのまま顎に手を添えて
考え込む様にしてサキの言葉を反芻していた。
「取り敢えず…………」
サキが、加熱してしまった場に
静かに語り掛ける。
イマは静かに
涙を落とすカコの背中を優しく摩る。
「次の授業……始まるね」
次回更新は明日20時!
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