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第1話 Girls Storys!後編

「“アイドルに絶対になりたいってさ”」


2人の無言の真剣な眼差しは

サキの告白をしっかりと揺らめく事なく受け止める


隣のカコはただ固唾を呑み込み。

ソワソワと落ち着かず行く末を見守る瞳。


「私も別に……簡単だとは思ってないよ

だけど私、挑戦したくってさ」


イマはコッペパンの最後の一切れを上品に咀嚼し一言。


「アタシは別にサキの夢を否定していませんが……

ただ夢とぶつかる覚悟はあるのだろうかと」


2人の熾烈とした会話のキャッチボールの

間に入るのは少しカコは気が引けた。


「あ、えと……い、いかな?サキちゃん、イマちゃん」


だがしかし、カコは抑えきれず

制服のスカートをギュッと握りしめて

2人に割って入る。


「えと、まずワタシもサキちゃんの夢、凄く良いと思うし、こうやって告白する事すら凄いと思うの」


カコは前提を提示し

ベンチから風を切るように立ち上がる。

そのままサキの手を取り、同時にカコは目の奥を捉えた。


「でも、アイドル……ってさ……厳しい……よ?」


喉を通る空気や感情を声として消化する

それだけで彼女の手と声は小刻みに震えていた。


「大丈夫ちゃんと分かってるよ

でも私はアイドルを夢見たんだ

それに、夢を終わらせる事は私、出来ないや……」


その言葉一つ一つ、サキは自信持って発言する。

目泳がず、背筋はシュンと伸び切ったまま。


「サキ、それは同感です……

ですから覚悟はあるのかと問いました」


サキは悠然と座るイマの顔をまじまじと見つめ

カコの震える手を感じながらもサキは天を仰ぎ出す


青すぎる空に、眩しすぎる太陽が彼女の目を細めさせる。


「2人は……どう?アイドルは夢見た事ない?」


2人はほぼ同じ反応を示した。一瞬の戸惑いを見せ

コクリと静かに首を縦に下ろす。


「そりゃ、ありますよ……ただアタシには向いていない事は、サキでも単純明快ですよね」


「ううん、そんな事ないよ」


「いいえ、人には適材適所があるんです……

人はこうして挫折して身の丈を知って成長するんです」


サキの瞳は一瞬、潤んだ。


「わ、ワタシもね、本気でアイドル目指してたんだ……

隠れてオーディションとかも受けたりしたし

いっぱいダンスの練習とか頑張った……」


カコはいつの間にかサキから半歩下がって

呼吸が徐々に乱れて、脳に響き渡る。


制服に皺を作るようにして

自身の両腕をガシッと、掴むカコ。


「だけど……いつからかな、分かるようになったんだ

ワタシには到底、届かない夢だって……」


サキは目先をカコの下半身に定めて

屋上に降り注ぐ太陽の生暖かさを感じたままに思考。


数秒の沈黙が流れ

再び2人の顔を気まずそうに覗くことができた。


そこには笑顔はないが

確かな希望の明かりがサキの瞳と手の開き具合から

灯っていたのが分かった。


「私だって不安だし上手くいくとは正直、思えないけど

それでも……そこにどうしても飛び込んでみたいんだ!」


そよ風は彼女達の目には見えないが

静かに、確かに髪を揺らす。


首筋を通るそれは、くすぐるように一瞬にして消え去り

彼女達は少しの肌の違和感を覚えたままだった。


「そう……ですか、覚悟は十分のようですね」


「勿論!」


カコはゆっくりとサキに近寄り軽くハグをした。

尊敬を込めた体温を熱く感じると首元に纏わる

制服の布の上から、彼女の腕を指先で滑らす。


「サキちゃん……」


先ほどまでの重い空気がゆっくりと

軽くなるような感覚を3人は同じく感じていた。


ただ何処かイマとカコの顔には靄が掛かっており

サキはそれを見逃す事はなかった。


「サキ……今からアナタにステップを課します」


「へ?ステップ?」


サキ、カコはイマの唐突な提案に

目を丸くした。


――――キーンコーンカーンコーン

ここで昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴ると


「詳しくは放課後にしましょう」


「えっ!なんなのかっ気になるじゃん!」


イマがサキを一瞥してから、一番に屋上を後にする。

カコが、彼女に続くように動き出すと。


「サキちゃんは……ホントに凄いよ、ワタシなんて

言葉にするのも怖いぐらいなのに」


屋上のドアノブを回すタイミングで

捨て台詞の様に吐くと、屋上にサキだけが取り残される。


サキは脳内で、屋上での出来事を反芻するのか

天を向いて、その眩しさに目を細める。


――――そして不意に思い出す

アイドルという存在に憧れた、約10年前のあの時を


『ミライ姉〜コレからどこ行くの?』


『ライブだよ、ライブ!サキ、脳に刻み込んで

彼女達は伝説を巻き起こすから……』


あの時の衝撃(ライブ)は今も鮮明だ。

観客達の熱気、会場の派手やかさ


『ライブって……なにミライ姉?』


『見れば分かるよ、サキ』


何と言ってもそのステージに立つ

“アイドル”の登場。

その場の全員が、愛を注ぎ、好きを叫ぶ。


『目に焼き付けてサキ、これがアイドルって奴だ』


美鴨サキはその彼女達の汗の輝きから

全力のパフォーマンスの髄を全身に浴びた。


――――――放課後、3人は帰路を共にしていた。

彼女を横並びで歩行路を歩む。


「端的に言えば“0次審査”をします……」


イマが手帳を開いて何か、確認してから切り出した。


「ぜ、ゼロ次審査?…なにそれイマっ!」


「まあ、聞いてください……

これはサキの本気を証明する為の手段です」


食い入る様にサキが反応すると

宥める様にカコは彼女の肩に手を置く。


「0次審査、ステップ1は“自分磨き”ステップ2は“自分探し”それをサキには、こなしてもらいます」


サキは口をすぼめながら耳に通す。


「それって、本当に必要な事?」


「……イマちゃんが言いたいのは

 サキちゃんの本気度を理解したからだと思うよ」


カコは補足するように。


「その通りです」


3人は通りにあるコンビニを目にすると

何も言わずにそこへ向かう。


「話を進めていいですか?サキ」


サキは首をやや傾けつつ、渋りながら

「う、うん」と返事。


「分かりました……こんがらがらないように端的に分かりやすく言います――」


腕組みしながら注意深く耳をイマの声に傾ける。


「ステップ1は“理想とするアイドル像の明確化”そして

ステップ2は“自分自身の現在地の認知”です」


「あっ、意外と単純なんだね!!」


夕方の空が徐々に赤く染まると

彼女達の影を遠くへと伸ばしていく。


「それならステップ1私すぐに思い付いたよ!」


サキが嬉々として、一歩二歩と2人の前へ。


「そうだ、イマちゃんステップでどうすれば達成したってなるの?」


単純に捉え過ぎなサキを正面に据えながら

カコの問い掛けに淡々と回答していくイマ。


「達成条件はアタシ達に口頭で伝える事と

自身で客観視した時の“妥当性”と“自身の納得性”です」


不意に吹いた風を、目を閉じて感じるイマ。


「なんかよく分かんないけど、大丈夫しょ!」


達成条件を何となくで流したサキは一足先に

コンビニに入店していく。


そんな彼女を呆れつつ見守るイマ。


「ちゃんと、考えてあげてるんだねイマちゃん……」


「いえ……まあ、別にアタシは対した事言ってないです」


若干、頬を赤くしていることをカコが察知すると

フフッと笑って見せた。


「サキは凄いよ……あんなに夢見れてさ……」


2人は遅れて、ゆっくりと店内に入ると

コンビニスイーツをそれぞれ買う。

サキはプラスしてホットスナックのアメリカンドックを。


「やっぱり放課後の道草アメリカンドッグは至高!」


再び外に出る3人。

サキはアメリカンドッグを一口頬張り

美味しそうに表情を緩める。


「で、ステップ1思い付いたと言っていましたが

 聞いてもいいですか?」


イマのその一言を耳にするとサキが立ち止まる。


「まずその前に、2人はさ……

 アイドルの夢、本当は諦めたくないでしょ?」


2人を先程と打って変わって

真面目な雰囲気で見つめるサキ


イマ、カコは表情硬くし考え込むように。


「…………いやアタシは、そ、それほどですよ」

「あ……えとワ、ワタシは、えっっと……」


2人の態度を見て察すると、サキは苦笑い。


「……長く一緒にいて私だって気付くよ

 やっぱり2人も諦めきれてないみたいだね」


3人を照らすとオレンジ色の夕陽を揺らすように微風が。


「私は“この3人で一緒にアイドルを目指して、一緒に叶えて!色んな人に笑顔を届けるアイドル”になりたい」


2人は否定も何もせずに

ただ彼女の言葉一つ一つを飲み込んでいる。

喉の奥が、ジッと熱くなるサキは続けて放つ。


「それが私のステップ1の答え‥‥だから

 イマ、カコ!私に賭けて!」 


「か、賭けるって……無謀にも程があります」


ドクドクと鼓動が鳴り止まずにいたのはイマ。

珍しく、動揺が表情から窺える。


「今回ばかりはごめん……サキちゃん」


カコは手が少し震えてきて、声も弱々しい

思わずギュッとスカートの裾を握る。


表情暗く、2人は否定的な意見をぶつけるが

彼女は気にしない!と言わんばかりに勢い強く


「証明するよ!!2人が安心して私に賭けれるように!」





――美鴨サキの自宅。


「サキ〜お風呂、入りなさいよ〜?」


リビングではサキと

その姉のミライがテレビに熱中していた。


「分かった!分かった〜三美神の番終わったら!」


キッチンで皿洗いをしていた母に

サキは適当に返事を返す。


「あっ、オグっちゃん……」


姉のミライが呟くと、サキは目を輝がせながら

リモコンを手に取って音量を上げた。


「オグっちゃん!!うわ何々?この衣装……黒のドレスだ!綺麗だなあ〜」


そう毎週、木曜19時からの音楽番組『MTミュージックサーズデイ』に三美神が出演していた。


「てかヤバッ……シュネッチ、青に髪染めてんじゃ?かわいすぎ……」


サキは小栗華推しの通称『オグラー』

姉のミライは安喜シュネ推しの通称『シュネラー』

姉妹揃って、アイドルオタクでもある。


「ねね、ミライ姉〜昨日の見たよね!」


「あぁアレでしょ……オーディションでしょ?」


CMの合間、興奮冷まずまま

サキがミライに話しかけた。


「そうそう!凄いよねっ!」


「金掛かってるって話だけどね〜噂では大手芸能事務所が資金出し合って大型施設も作ってるって話、実際はどうかは分からないけどね〜」


ミライは携帯を片手に持ち

ふんわりとした物言いで話す。


彼女は中規模芸能事務所で事務員として働いている

業界では今回のサンセット事務所のオーディション開催発表は業界のこれからの未来の期待感や憂いが漂っていた。


「私ね、オーディション応募するんだ!」


――途端、美鴨家に静寂が訪れた。


キッチンの蛇口から流れる水の音も

テレビからの音も、実際は消えてはいないが

確かにその言葉を聞いた母とミライは

一瞬、動きを止める。


「あ、え……サキ、本気?」


母が水を止めて1番に言い出した。

次回更新は明日、20時!


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1話前編で言及された楽曲『トワイライト』は以下のYouTubeチャンネルから聞くことができます!


https://www.youtube.com/@%E7%A7%8B%E6%B5%A6%E3%83%A6%E3%82%A4

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