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第1話 Girls Storys!前編

――――その晩、1人の少女を熱狂させた夜、21時。


美鴨(みかも)サキはベッドに横たわり

スマートフォンのその液晶を注視

鼻息が呼吸が小刻みになっていく。


その枕元の壁に飾られた和紙には『絶対アイドルへ!』

と毛筆で力強く書かれていた。


スマホ画面は真っ白な白背景に壮大なBGMと同時に

『サンセット事務所、超重大発表!!』


「あぁ!!キタキタっ!!」


映像が切り変わると、彼女の興奮で甲高い声が漏れる。


画面には3人の煌びやかな女性。

彼女達は『三美神』というアイドルユニットであり

サンセット事務所が誇る大人気アイドルだ。


3人は落ち着いていながらも

彼女らの端麗を際立たせるスーツを着こなし

重苦しい空気を美鴨サキは感じる。


画面を注視する集中力は衰えず

喉からゴギュと唾が流れる。


『サンセット事務所、超重大発表生配信を

ご覧の皆様こんにちは三美神のオグっちゃんこと

小栗華(オグリ ハナ)です――』


だが、そんな雰囲気を一瞬にして塗り替えたのは


「オグっちゃん!!ヤバっカワイ!!」


サキは抱き枕に自身の口元を圧迫する。


3人がそれぞれ自己紹介をすると戯ける訳でも

重苦しくする訳でもなく粛々と続けていた。


『皆んなも、重大発表が何なのか気になってると思うので……早速、発表させて頂きます!』


目力を強くし、身構えるサキ。


『では、どうぞ!』


小栗華が合図をすると同時に

画面を見守るサキの鼓動は


ドク……ドク……と大きくなっていく。



『超大型ガールズアイドルオーディション

『Girls Storys!』始動!』


――――春の日。

「うあぁぁぁぁ!!」


ベッドから飛び起き上がったのは美鴨サキだ。


「やばいって!ヤバイヤバイ!!」


彼女は焦り喚きながら

縒れたパジャマから瞬く間に高校の制服に着替える。


「なんで、起こしてくれなかったのぉ〜

 お母さんもミライ姉も!」


そんな愚痴を漏らしながら姿見鏡が制服姿の彼女を写すと

手でボサボサの髪を直す。


部屋は綺麗に整頓されていたが

机の上や壁の所々には彼女が溺愛する先程の

アイドルグループ『三美神』のグッズが飾られている。


「でも、まあ今日も頑張りますか……」


アクリルスタンドにライブポスター。

ライブTシャツそれからペンライト。


そんなグッズに目を通して笑顔を見せる美鴨サキ。


床にドスンと置いてあったバッグを手に持ち

ドタバタと足音を立て、顔を洗い、歯を磨くと


「お母さん!なんで起こしてくれなかったの?てかミライ姉も仕事行く前に起こしてくれてもいいのに!」


「何度も何度も起こしたわよー……ミライもね」


リビングの母に責め入るように

または慈悲を訴えるかのようにサキは駆ける。


「20分寝坊!後少しでバス乗り過ごす所だった!」


母も母で、その会話を慣れたように吐きながら

ゆっくりと母は近付くと、乱れたサキの髪を優しく撫でた


「でも、ちゃんと起きたじゃない……

女の子なんだから、少しは落ち着きなさいよ」


母の手元には弁当袋。

彼女に手渡すと、彼女はバックの中に優しく詰め込んだ。


「それでも寝坊はしたくなかったっし!!

まあ……私も昨日は、夜更かししちゃったんだけどね」


アハハと苦笑いしつつ、高揚感に溢れていた美鴨サキ。


――――その時、脳内では昨夜の生放送が

再び猛スピードで蘇っていた。


『なお、今月4月28日にオーディションについての概要をより詳しく説明、より分かりやすく発信する生配信も実施予定ですのでお楽しみに』


美鴨サキは正面に掛けていたカレンダーをチラリと覗く。

そして深呼吸を震えながら続ける。


『最後に私達、三美神は夢を追い求める皆さんを心から応援しています……奮ってご応募待っています』


3人が手を振りお辞儀を深々として配信は終了となる。


だが、配信終了となった後も

美鴨サキは電気を消しても直ぐには眠れなかった。


――


母は知らず知らずのうちに、キッチンへ。


「んで!生放送に発表されたのがね!!」


サキは早口で何やら話していたらしいが――


「ヘェ〜……んで急がなくていいのサキ?」


母は興味なんてないと言わんばかりに話を遮ると

それまで恍惚とした表情だったサキの顔が一変した。


「うわ、ヤバいって!!」


先程までのドタバタがまた再び動き出す。

それからはいつも通り時間が進んでいく。


いつも通りにバスに乗ると

バスでは“三美神”の楽曲を聴いて過ごす。

そんな風にしているとあっという間に目的地だ。


――サキは一刻も早く逢いたい人達がいたので

校門へとなりふり構わず、駆け走っていく。


「おーはーよーう!!イマ!!カコ!」


彼女の真っ直ぐとした視線で捉えたのは

2人の並んで歩く女子生徒。


「……おはようございます」「おはよう、サキちゃん」


「それより朝から元気ですね」


2人の女子生徒の内1人はショートカットが似合っていて、静かな落ち着いたトーンで応えた、新岡イマ(にいおか いま)



「これでも抑え気味!私の全力の元気は

推しアイドルちゃん達の為に取ってるんだ!」


「あぁ、そうですか……じゃあ、もっと抑えてください」


「まあまあイマちゃん、それがサキちゃんだからさ〜」


もう1人はウェーブの掛かった胸丈辺りまでの髪。

それでいて暖かで優しい雰囲気の櫟木カコ(いちのき かこ)


3人はゆっくりと校舎へ

靴箱で靴を履き替え、3人は並んで廊下を歩く。


「あの、狭いんですけど……」


「え?なんでそんな事言うのさあ〜幼馴染でしょ!?」


サキがイマに寄りすぎていた。


「それ、関係あるのかなーサキちゃん〜」


2階への階段でも他愛のない

冗談の言い合いっこをしながら歩いていた。


「そだ!お昼休みっ!いつも通り集合ね!」


「朝からテンション高いですね……サキ」


ヤケにキラキラとした瞳に、イマは呆れた様に放つ。

苦笑いもせず、淡々とカコはイマの背中を摩る。


「あのね、2人に話したいことがあるんだ!!」


「まあ大方、想像は出来ますがね……」


イマは耳に髪をかけ、制服のスカートを揺らめかせながら

階段の最後の段まで淡々と登る。


――彼女は踊り場で呆然とするサキを覗いて一言。


「……では、また」


ニッコリ笑顔のサキ、その脳内では伝えたい事が

山の様に存在していて上の空気味。


「ほらほら、サキちゃんホントに遅れちゃうよ?」


それを存分に感じ取ったのかカコは彼女の手を引いて

温和な調子でサキに伝える。


「おおっ、おお!」


2人は同時に階段の最後の段を踏み締める


「また屋上でねぇ〜」


と言い放ち、カコは

笑顔で手を振って一足先に教室へ向かった。


サキは気持ちを切り替え、いつも通りに

ガラッと扉を開けて入ったのは2年C組。 


「おっはよう〜」


クラスメイト数名と挨拶と会話を軽く交わしながら

自分の机に荷物を置き


「あっ……超ギリギリッセーフっ!」


机に座った途端にチャイムが鳴り出した。



――美鴨サキ幼少期にて


「イマちゃん!カコちゃん!みてみて!!」


公園の滑り台。

その踊り場に当時5歳の美鴨サキの姿。

彼女はその場で雄大にまるでライブパフォーマンスをしているかのように身振り手振りを振りかざす。


「あぶないですよ、サキちゃん」


「アハハ、なにしてるの〜」


サキのその姿を見上げる2人の姿。

新岡イマ、櫟木カコがいた。


「しってる?アイドルはみ〜んなこうしてるんだ!」


上から2人に向かって手を振るサキ。

イマとカコはその姿に魅入ると同時に不思議な感覚に陥っていた。

胸の騒めき、はたまた好奇心だ。


「アイ……ドル?」 

「サキちゃん、アイドルってなに?」


サキは太陽のような明るい笑顔になり

滑り台を勢いよく滑り降りて、こう言い放った。


「アイドルってゆうのはね!このせかいで、いっちばんキラキラピカピカでかわいくて!みーんなをニコニコにするひとだよ!」


――遥か昔、幼き頃の3人が此処で共通の好きな物を見つける事となったキッカケであった。



――そして話は現代へ。 昼休み高校の屋上

高校生活において昼食時に3人が屋上で集まる

密かに、それが彼女達にとっては定番となっていた。


「てな訳で、私!オーディション応募しまーす!」


2人が座る屋上の出入り口付近のベンチの前で

サキは興奮を隠せずに宣言をする。


ただ、それを軽くあしらって

コッペパンを頬張るイマ。


手作り弁当箱を太ももに置き始めたカコは

目を丸くしながら宣言する彼女を見つめる。


「た、大変だよ……イマちゃん……

三美神の御三方のオーディションにサキちゃんが……」


そのイマの横で平穏と秩序をもたらす調和役なはずの

カコが低く声を響かせる。


「まずサキ……アナタのアイドル熱は確かに認めますが……それはこれとは別です」


「私っ本気だよ!」


コッペパンを咀嚼し、その後。

ギラリとサキに問い掛けるイマ。


「…………そうですか」


するとイマはハッとした表情を見せ

わざとらしく咳払いをした。


そこでサキは漏れていた笑みを残しながらも

真剣に、真っ直ぐと2人を見つめて述べていく。


「私、ずっと考えていた事が……

ううん、昔からずっと叶えたい憧れの夢があるんだ!

二人は、もう多分知ってると思うけどさ」


2人は言葉のその続きを待つ。

サキは深く息を吸い込む。


サキは、春の冷たい尖りを吐き出すように

慎重に言葉を紡ぐ。


「“アイドルに絶対になりたいってさ”」


2人の無言の真剣な眼差しは

サキの告白をしっかりと揺らめく事なく受け止める


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