第12話 トモカラ 前編
――5月2日 カラオケ店「アルカトラズ」
入店する4人の内1人はソワソワしていたが
他3人は慣れたように受付場へ。
「エミィちゃ〜ん機種どれがいい?」
3人に隠れるように辺りを見渡していたエミィ。
突然とサキに尋ねられると、平然を装った。
「ん、な何かしら!え、えっと、き、機種でしたっけ?」
「そそ、エミィちゃん拘り強そうだからなあって
いっつも、どの機種選んでる?」
「え、えっと〜」
悪気なさそうに、純粋に尋ねるサキ。
目が泳ぐエミィ。
「エミィちゃん、エミィちゃん……」
カコがエミィの肩をトントンと
軽く撫でて耳打ちする。
「任せて……」
カコの大きな頷きに、エミィの動揺が薄れる。
一瞬の間の少しの空白時間、その後にエミィは
口で唇を覆って頷く。
「サキちゃん、エミィちゃんは
普通に最新機種の高性能のだと思うよ?
でしょエミィちゃん」
カコは至って自然と
エミィに負い目を感じさせないような物言いで
「え、ええ!当然でしょ!」
促されるがままに、話が進んで行く。
エミィは少し背伸びをして受付場に置いてあった
機種選択の表を確認して
1人コクコクと小さく首を縦に振る。
「そっか〜んじゃ、最新機種で取り敢えず二時間で〜」
イマはその隣でエミィに目線を映すと彼女と目が合う。
それから、イマがほんのりお辞儀をする。
その後、エミィの頬は少し赤くなって
過去のことを順次に思い出す。
『ごめん……ね……嘘を吐いてきて』
エミィはハッとした顔を無表情のまま浮かべると
「変わってない…………じゃん……」
誰にも聞こえない声で言い放った。
3人は前を歩くのだが、その距離が遠くなるみたいだ。
「てか〜1週間ぶりだなぁカラオケー」
「それほど経ってないじゃないですか……」
「でも、3人で来るのは結構、久しぶりじゃないかな?」
案内された個室に4人が順々に入室していく。
続くように部屋に入ったその時
エミィは入り込むようにスマホを片手に持つが
一瞬の躊躇いの中、文字を打っていく。
《エミナ個室に入ったわ》
《お姉様、まずは落ち着いて!それから何を歌うか決めて、尋ねられたら、しっかりと答えて、お姉様!》
《ええ、ありがとエミナ……だけど、この先はちゃんとやるわエミィがちゃんと変われたことを証明するわ》
《流石お姉様です!エミィお姉様!応援してるね!》
エミィは妹との連絡を終え
深呼吸をしながら個室を見渡す。
個室の配置は、扉を開けてすぐ横にモニター。
それを正面として真ん中に石机。
1番奥、左右に3人ほどが座れるソファの一般的な
カラオケボックス。
サキの隣にカコが自然と座り
右ソファにイマが当たり前のように座る。
エミィは扉の辺りで固まってスマホを凝視。
3人と少し遅れて、スマホを伏せて
誰もいない左ソファへ、平然であるかのように座る。
「そだ、何歌おうかなあ〜」
サキとカコが選曲機器に顔を近づけて
思案顔をしていた。
「それより、サキ……順番を決めましょう」
「あぁ、そだね〜」
イマはそれまで、メニュー表を眺めていたのたが
痺れを切らしたのか提案をした。
「アタシ、決まったので1番で
その次はエミィさんでも大丈夫ですか?」
エミィにバトンが渡ってくると
彼女は、いつもの調子で答える
「ええ、もちろん」
「それでは、3番にカコ、最後はサキです」
イマはサキが独占していた選曲機器を
しれっと奪っていく。
「え!最後?まあ、決まってないからいいけどー」
カコはその横でメニュー注文機器を今度は眺めて
ポチポチと操作していく。
それぞれの過ごし方を違和感ないように、
空気感を学ぶようにエミィは周囲を真剣に見つめていく。
「んじゃ、アタシ歌いますね……
皆さん、ちゃんと聞いてくださいね」
イマがマイクを持ち始め、立ち上がり
モニターを背に3人に向けて歌おうとする。
イントロが流れるとサキとポロリと呟く。
「あっ“危険な偶像”の『シャイナガール』じゃん!」
「イマちゃんの歌うこの曲、初めて聞くね〜」
サキとカコは彼女を応援するように
彼女にまるでライブステージに立つアイドルの様に
手を振り、楽しそうにワーキャー騒いでいた。
「言葉に詰まった♪君は何も動じない♪」
イマが歌い始まると2人は静かになる。
すると普段の彼女からは想像つかないほどに
伸び伸びとした少々の低音の効いた
透明感のある声と身振り手振りで歌っていく。
「弾け飛んだ笑顔までも照れ隠し♪
私はそうシャイナガール♪」
ただ――欠点として
彼女は高音が上手くでないという事であった。
イマを見守る3人は、最後まで何も言わずに
熱心に聞いていた。
この場はカラオケボックスというよりか
1人のステージに立つ少女と
それを眺める観客の図でもあった。
「……終わりです」
全力を出し切ったのか、いつもより顔色が良く
なっている気がする。
「イマ、よかったよ〜!」
「かっこよかった!イマちゃん!」
3人は拍手をするばかり
そして此処で、扉の奥からノックされると
カラオケ店員が飲食物を運んで置いていった。
「あっ、きたきた〜」
届いたのは、フライドポテトと4人分の飲み物。
種類は烏龍茶、オレンジジュース、緑茶、コーラ。
イマはその四種類の内の
烏龍茶をスーと手に取り飲んだ。
エミィは、先程の彼女の表現を思い浮かべていた。
あの新岡イマがあれ程の
伸びやかな表現をする事にエミィは微笑んだ
「アタシ……高音苦手なんですよね」
イマが少し落ち着いて、ワンクッション置いて告白した。
「聞いていて、分かったと思いますが……
ただアタシはこの曲で、そしてあのキーで歌いたかったので未熟ながら披露させてもらいました」
カコは口を噤んでいる、ただ目でイマを労うみたいだった
「それでも!イマ、凄いよ!あの曲って、リズムが難しいんだけど、それでも歌えてたし!」
サキが立ち上がり、目を輝かせて放った。
「うんうん……高音が苦手だったのは
昔から知ってたけど、頑張ったよイマちゃん……」
カコが感情が溢れたのか少し目に涙を溜めていた。
サキはアハハと陽気に笑いながら
そんなカコの肩をふんわり揺らす。
「ありがと……ございます」
イマは素直に受け止めると、また烏龍茶を飲んだ。
「でも、意外でしたわ……アナタって
それほど感情を表に出さない物だと思ったけれど……
“楽しさ”が“嬉しさ”が伝わってきましたわ」
エミィが口元に手を添えながら
しっかりとイマの目を見て感想を伝える。
「……はい……で、では次、エミィさんですよ」
イマは少し伏目になりながら
選曲機器をエミィの前へと移動させた。
「そう……ね、まずはその前に
告白することがあるのだけれど……いいかしら?」
彼女は強張りながら、慎重に言葉を紡ぐ。
その都度、サキ、カコ、イマの顔を伺いながら
「なになに〜?」
サキがニッコリ笑った。
他2人は沈黙していたが、その穏やかな目を
エミィは視認すると、自身の髪を軽く触る
「じ、実は!エミィカラオケに行ったことがないの!!」
目を閉じて、勢いで必死に告白した。
だが、しっかりと3人に伝えることが出来た。
そして、恐る恐る閉ざした目を開ける。
――反応は様々だった。
イマは淡々としていて、ただただエミィの瞳の奥を
見つめていて、悟ってるみたいだ。
カコもイマと同様に勘づいていたのは言うまでもなく
彼女はエミィへ賞賛を込めるように
胸の前で指と指の隙間を埋めるようにしていた。
「うへっ!!そうだったの、エミィちゃん!」
サキはしっかりと大きく何も知らない純粋無垢な
リアクションを取り続けて
「それなら、言ってくれればよかったじゃーん
全力でエスコートしてあげるよ!カラオケは私の
第二のお家なんだからさぁ〜」
エミィは耳に通すと、口元を緩めて
気品に声をあげて笑って見せた
「ンフフ本当に、最初から言えばよかったわ……
ありがと……アナタ達……」
「もう、ワタシ達は“友達”だからさ、信頼しても良いし
包み隠さなくても、大丈夫だよエミィちゃん」
カコがエミィの手を取って
その甲と彼女の瞳の視線を動かす
「ええ、そうね……」
続けてエミィは選曲機器を目にしていた。
「あっ、操作大丈夫?」
カコがエミィ側のソファに座り直して
人差し指で“楽曲名検索”の項目をタップ
「あ、ありがとカコ……さん」
2人は顔を見合うと、カコがフフっと笑う。
その健気な音を聞いた彼女は咳払いをしつつ
顔を逸らしていく。
「ここに入力すればいいのね……」
「うんうん!そうだよ!」
そして彼女は五十音がずらっと並んだ機械で
キビキビと自身が歌う楽曲名を入力した。
「あぁ、いい選曲だね……エミィちゃんらしい!」
そう言って隣のカコはポチポチと
流れるように、ワンボタン押したら
直ぐに曲が始まるようにセッティング。
「はい、エミィさん……」
「き、気遣い感謝するわ……みんな」
イマが腰を浮かせて彼女にマイクを手渡す。
それからサキと一緒にフライドポテトを食べ出す。
「まあまあまあ、気軽に行こうよ〜」
サキが手に持ったフライドポテトを口にパッと入れ
背中を押すように軽快に言い切った。
「そ、それじゃあ!歌うわよ!
これが篠宮エミィの歌声よ!耳に焼き付けなさい!」
エミィは片手にマイク。
それから勢い任せにボタンを押して
正面のモニターから音源が流れ出た。
――曲名は三美神の『I'm the KING』
次回更新は明日5月4日 20時!!
感想コメント、♡、ブックマーク等々よろしくお願いいたします!
下記のYouTubeチャンネルにて
作中楽曲が実際に聴けます!
https://www.youtube.com/@%E7%A7%8B%E6%B5%A6%E3%83%A6%E3%82%A4




