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第10話 仁・華・芸・心・運

――5月1日 屋上

「ステップ3の内容は

『実行に伴う事柄の対処』です」


イマが静かに説く、屋上の春の日差しの中。

花信風(かしんふう)が制服の袖や髪を揺らすと、それを合図に

サキ、カコの2人が顔を見合い吹き出す。


「なぁーんだ!!そんな事かあ〜」


「イマちゃん“応募する事”をカッコ良く

言い過ぎじゃない?」


イマは高笑う2人に、ムスッとした表情。

眉を細めながら「何ですか?」と一蹴。


「だって、そうじゃん!」


サキは彼女の肩に手を軽く置いてニコッと笑った。

それがイマには煽りにしか見えなかったらしく

余計に拗ねたように口を膨らませる。


「ただ、重要な事ですが……?」


「まあまあ、イマちゃんの事なら深い意味とか

色々とあるんでしょ?」


カコが一旦、落ち着いて

彼女の立場側に寄り添っていく。


「勿論です……応募の為のそれぞれの自己PRや志し、後は写真撮影など色々と準備することがありますので」


イマは調子を戻した様に述べていくが会話の尾になっていくに連れてサキが放った

「やっぱり、普通に応募の為の手順じゃんー」という声に少しの正論を喰らう。



「じゃあ、新岡さんのは当然としてエミィからの

特別な理論の提示は如何かしら?」


それまで傍で3人の会話を

人知れず楽しんでいたエミィが間に入る。


「興味深いですね……」


イマが白々しい咳払いをしつつ

何事もなかった様に。

サキ、カコも同様に聞き耳を立てていた。


「いいわね……まずアイドルをアイドル垂らしめる要素って何があると思うかしら。」


エミィが3人を1人ずつ、ゆっくり見渡すと

「そうね、サキさん分かるかしら?」


まるで授業中に教師が生徒に

問いを投げかける様に彼女は形式的に。


「ん?んん〜めちゃくちゃに可愛かったり!凄そうだったり、歌もダンスも上手でぇ、色々と頑張ってるから応援したり好きになれる!みたいな?」


サキが複雑に思考回路を回しながら

語彙なんて物は気にせずにフィーリングとパッションで

伝えていく。


イマとカコは小さく苦笑いをしつつ

エミィは顎に手を添えて頷く。


「えぇ、急な質問にありがとサキさん……

 ニュアンスや根本は相違はないわ」


サキはその言葉を聞いて安心したのか胸を撫で下ろし、イマやカコにドヤッ!と顔を見せつけた。


「エミィの考えは先程サキさんが言っていたことをより単純に表した物でコレはアイドルを構成する五つの要素『仁・華・芸・心・運』とエミィは呼んでいるわ」


ここでイマがボソッと呟く。


「“五常の徳”のような事ですね」


「流石ですね、イマさん……まあここでは

五要の心得(ごようのこころえ)』とでも言っておきましょうかしらね」


サキが目を瞑ってゆく。


「“仁”は人柄、人格や愛想(ファンサ)もここに該当するわ」


「な、なるほど……じゃあ“華”っていうのは?

オーラ的な物のこと言うの?」


サキが何とかついていくと、質問。


「ええ、流石ね……詳細には存在感(オーラ)や貫禄性、後は視覚的の有無よ」


横で、サキがカコにコソコソと耳打ち。


「なんか、エミィちゃんイマみたいだね」


「アハハ……多分、真剣にアイドルの事を考えているからだよ、きっとね」


――キーンコーンカーンコーン

屋上にも響いた昼休みの終わりを告げる鐘が鳴る。

突然のチャイムの響きに

4人は気づくと、ハッとした顔へ。


「あっ!あれ〜もう昼休み終わりかぁ」


サキがまだ聞き足りない様子で

カコの肩に抱きつく。


「まあ、続きは今度また分かりやすいように

 空き教室を使って説明するわ」


エミィが立ち上がると、颯爽と屋上の扉。

開閉樣に振り向くと彼女は思案顔で


「ね、ねぇ……今日も……一緒に帰れる……かしら?」


「当たり前ですよ、友達なのだから……

 さあ、行きますよ」


イマが一瞬の沈黙も作らずに答えると

彼女の横に割り入って横を歩く。

エミィは思案顔から徐々に確信的な安堵を経ていた


「ほらほら、サキちゃん授業遅れちゃうよ」


「へーい〜」


サキ、カコは2人の後に続く様に

ゆったりと屋上を後にしていく。


屋上に誰もいなくなると

一つのベンチがポツンと佇たずむ。

それまで日光に照らされていた、それが

太陽が雲に隠れることによって陰に包まれた。


――その日の夜 篠宮邸

エミィは妹の部屋の前で

重い顔で扉の色を見つめ脳内で今日や

ここ数日の昼時のことを思い返していた。


『よかったらさ……

“仲間”として“友達”として……

ワタシ達と一緒に目指さない?

――オーディションの“頂点”へとさ』


『当たり前ですよ、友達なのだから……

 さあ、行きますよ』



意を決したのか、ノックを2度してから

もう一度目を閉じ


『ワタシもエミィちゃんの妹ちゃんに会いたいなぁ〜良い子でアイドルに物凄い愛がある子だって

聞いて楽しみなんだ〜』


そして目を開き、握った手を強くして

言葉を放った。


「ね、ねぇエミナ……少し話したい事があるの」


要件を妹のエミナに扉越しに伝えると


「入っていいよ〜エミィお姉様?」


伸びやかな声を聞いて、ドアノブに手をかける。

一瞬の躊躇いはあったものの。


「どうしたのエミィお姉様?」


神妙な面持ちの姉エミィを視認した彼女は

デスクで勉強をしていたのだろうか

その手を止めてエミィに歩み寄る。


「え、えぇ少し……打ち明けないといけない事が」


神妙な面持ちは変わらず。

エミナは彼女を自身の寝床に誘導して

互いに腰を下ろす。


「実は……」


エミィが言葉を紡ぐと、小さく相槌するエミナ。


「嘘を付いていたの……ずっと」


思い切って言い放ったエミィは

妹の機微をしっかりと読み取った。


「それって“新入部員”……の事だよね?」


その回答はエミィは想定外だったのか

唾を飲みこむ音を聞くなりエミナは俯いた。


「き、気づいてたのね……」


「うん、気づいてた……そしてそれを看過してたんだ

実際は私の勝手な我儘みたいな物だったし」


場の雰囲気は淀んでいた。


「でも、サキさんとイマさんは本当だったし

それまで私の我儘をエミィお姉様は叶えてくれたよね……」 


エミナは一つ一つ振り返るように伝えると

「私、とっても嬉しかったよエミィお姉様」

ニコッと静かに笑んだ。


「でも、あの2人は最初は……」


その先を言おうとした時

エミナは微笑みながら首を横に振って

温かく答えた。


「バレバレ、だったよエミィお姉様……

でも、それでも私は嬉しかったよ」


エミィは彼女が自分の犯してきた殆どの事を

ゆっくりと解されていく感覚を振り払う……

してきたことは全て消えないのだから。


嘘に嘘を重ねてきた事実。

そして嘘をつかれていた事

それを見抜いていながら事実を伏せてきた事。


全部を背負う様に言い放った。


「ごめん……ね……嘘を吐いてきて」


その対流が複雑に混ざってしまった。

数秒の沈黙が訪れる。


どちらかの固唾を飲み込む音が

静寂の中で異質に鳴る。


「エミィお姉様は謝らないで……

それにこれは別に対した問題じゃない……よね」


エミナが穏和に繰り返すが、それが

逆にエミィには罪悪感を覚える羽目になる。


「もしかしたらエミナにとったら対した事じゃないかもしれない……でもエミィは違うの」


エミィは、丁寧に言葉を紡ぐ。

部屋の時計の秒針がヤケに響いている。


「だから、謝りに来たの?エミィお姉様……」


エミナは彼女の手にそっと触れると

その体温が生温いのを知る。


「ええ、それがエミィなりのケジメでもあるの」


「ケジメ……?」


「新しく気持ちを切り替える為の

そしてアナタの為に全部を賭ける決意証明よ」


エミィの直向きなその眼差しはエミナの胸を突いた

確かな覚悟は絢爛なこの部屋の空気を逆撫でる様だ


「エミィお姉様……」


エミナは肩を硬くしたままに姉の体温を

ジッと感じていた。


その脳裏に流れるは一瞬の


『エミィが“アイドル研究部”第一号でしょ?』


『なら、エミィが見つけてあげる……』


――過去(キッカケ)



「お姉様……どうして、そこまで私を気遣うの?」


ふと、疑問を投げ掛ける彼女。

瞳の奥で何かを訴えていた。


「私がエミィお姉様の妹……だから?

 私ったら本当に我儘なのに、ごめんねお姉様」


そんな後ろ向きな感情ごと“笑い飛ばした”

それは紛れもない、彼女の姉だ。


「ンフフ何を言ってるの……

アナタの“アイドル”だからに決まってるわ」


エミナは、口をポカンと開けたまま

頬を赤く染めた。


「1番近くにいるファンに一流に夢を見せれなくて

アイドルなんて務まりませんわ……

貴女(ファン)は我儘でいいし、我儘がいいの――」


彼女は、煮え切らなかった此処、数年を

全て払拭する様にエミナに向けて


「エミィはそんな

 貴女(ファン)が大好きだから――」


最大限の“笑み”を浮かべた。


その日、今まで言えなかった互いの

共通の暗黙の了解の様な物が晴れていき

澄み渡る様に明らかになっていく

それは夜の帳が朝色に徐々に移り変わり行く様に。

明日から6日までのGW期間中、毎日投稿いたします!

明日5月2日 20時!


感想コメント、♡、ブックマーク等々よろしくお願いいたします!


下記のYouTubeチャンネルにて

作中楽曲が実際に聴けます!


https://www.youtube.com/@%E7%A7%8B%E6%B5%A6%E3%83%A6%E3%82%A4

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