第9話 『Girls Storys!』詳細発表会
――――これは少し先の8月某日。
その大きな、施設の門を潜る少女達の姿。
人数は30人程のグループ。
その中にいつもの2人や篠宮エミィの姿は見えず
美鴨サキの姿のみ。
彼女は荷物を抱えて、1人、最後尾を歩く。
周囲の少女達らは門や辺りを見渡して口々に放つ。
「ここが……“ファーデン”……」
「思っていたよりも、大きな施設ね」
興奮しているようで
何処か緊張感のある美鴨サキの表情。
彼女は母から貰った御守りを握りしめ
呼吸を整え……
「よしっ……行こう……」
――現在 4月24日 放課後
今日はサキ、イマ、カコ。そしてエミィ達が
初めて帰路を共にしていた。
「エミィさんはこの道でも大丈夫なんですか?」
「ええ、もちろん。途中までですけど帰り道を共有するのも、偶にはいいわね」
エミィが何処か自信気に話す。
エミィ、サキが前方に
後方にはカコ、イマが
並んで歩いていた。
「初めて友達と一緒に帰るの!?」
「え、……えぇまあ」
「いいでしょ?こうやって友達と
一緒に帰ったり過ごしたりするの!」
サキの興奮に満ちた声と顔を彼女は見るや否や
微かに頬を赤らめて前髪を整えた。
「皆さん、応募する前に生配信の内容も
チェックしといた方がいいですよ」
イマが後ろで片手にメモ帳を取り出して
スケジュール等を確認していた。
「あっ28日のオーディションについての生配信?」
補足するようにカコ。
「そりゃ!見るに決まってるでしょ!
何が発表されるのかなぁ!」
「概ね想像は付くけれど、詳しい内容が発表されるのは視聴者としても応募者としても楽しみね……
まあ、どんな内容であれエミィは応募するけれど」
「それは私も!」
4人はこうして会話を繰り返しながら
エミィは途中のコンビニにて
黒光りの外車を発見すると
「では、エミィはここで……
送迎車が来ているので」
ここで別れを告げ、三人に軽くお辞儀をすると
「んじゃ、また明日!エミィちゃん!」
サキ、そしてカコ、イマが笑顔で彼女を送る。
彼女は少し照れた様に手を振り返すと
「ええ……また……明日ね」
残った三人は、そのまま店で
ホットスナック等を購入。
「イマって毎回、コッペパン買うよね?」
「好きなので……」
「そういうサキちゃんは毎回
アメリカンドックだけどねぇ〜」
食べ歩きしながらバスに乗ってそれぞれ帰宅する。
――4月28日 20時頃
以前、告知されていた『Girls Storys!』の詳細発表生放送が開始していた。
「皆様、こんにちはサンセット事務所の立浪です
まずは、コチラをご覧下さい」
画面には事前収録で取締役会長の立浪小次郎氏が
直々にVTRを振り画面が暗転。
バックには壮大な音楽。
「今、皆様がご覧になられているのは
なんと東京ドーム2個分の敷地面積を誇る」
軽快にナレーションにて明かされる。
今、オーディションの目玉と言っても
差し支えのない要素が発表される。
「大型総合施設“ファーデン”です。」
映像は上空で撮影されて“ファーデン”を真下に捉えると、施設の様子が確認できる。
中央にはドーム型の施設の中で一番目立ち大きな
建物として構えている。
そのサイドには左右対称に大きく六つの建物施設が
それぞれ同じ配置に設けられているのが窺える。
「中央に見えますのが、1万人を収容でき、実際にライブも行えるドーム型会場。」
映像は切り替わり、より臨場感と没入感のある
サイドビューに切り替わりドーム型会場を様々な視点と角度で映されていく。
「そして、左右には候補生達が宿泊する寮棟に
ダンス堂、歌唱堂、そして食堂……」
ナレーションが次々に明らかにしていくと
それぞれに対応する施設の外観と具体的な内観も同時に映されていく。
「その他にも候補生達が充実した環境で安心安全に過ごす為に多目的堂やジムも完備されています!」
映像がここで一旦、切り替わると
「『Girls Storys!』にて利用する大型総合施設“ファーデン”の紹介、如何だったでしょうか?」
画面に映るのは、サンセット事務所社長の立花藍。
彼女がこうしてメディアに露出するのは実に5年振りであった。
「さて、来月末の応募締め切り後を境に本格的に始まる『Girls Storys!』は他のオーディションとは一線を画す、規模感でお送りいたします」
立花藍は黒のスーツ姿で凛々しく逞しい風貌。
仰々しく笑顔と解説を交える彼女。
彼女は薄明かりの裏手を
悠々と移動し、カメラは追う。
辿り着いた大きなステージに
彼女が1人立つと
「書類審査で三美神に次ぐ人材を厳正に吟味し、一次審査は某所にて歌唱•ダンスの実技と自己紹介や志しを問う面接を致します――」
カメラが引きになり
スポットライトが彼女を照らす。
かつてステージに立つ彼女の姿と
現在が重なり合う様に呼吸は繊細だ。
「そして二次審査にて300名の候補生達が此処で互いにしのぎを削る事となります」
ステージは光と暗がりとの境界がはっきりと。
その後、ファーデンのドーム型会場が映り
また立花藍カメラに戻る。
「その後は三次審査、最終審査が行われ9人の合格者がサンセット事務所から華々しくデビュー!」
彼女は両手を大きく横に広げて、強調。
「そんな9人を選出する審査員の一員は皆様でもあり
二次審査から始まる300人全員に毎日『Adore』というポイントを1名だけに送付する事が可能でこざいます」
彼女は後方のスクリーンに手を差し出し
注目を誘う。スクリーンには『Adore』についての
説明が簡単に描かれていた。
端的に言えばこの制度は応援制度である。
毎日、視聴者は300名の候補生1人にポイントとなるAdoreを送る事ができる。
「Adoreは審査基準でもあり直接、彼女達の評価や合否に関わる事なので真摯に送付して下さる事を願っています」
――5月1日 昼
4人は先日の生配信をもう一度、視聴していた。
真剣な表情で見る者、胸をただ高鳴らす者。
軍師の様に数多の策を立てる者に
不安を微かに抱えながらも前向きに捉える者と
四者四様である。
『最後に私達は“夢を追い求める全ての人達を応援しております”ご視聴ありがとうございました』
「って事らしいですね……」
イマの決して見やすい大きさとは言えない
スマホ画面を通して見た世界から4人は現実に戻る。
「めっっっちゃ!楽しそうじゃん!」
サキが溜めに溜めて屋上の中央で
熱狂を張り上げた。
「うんうんうん!俄然、やる気が出てきたよ」
続いてカコが同じく興奮を
抑えられない高まったままの声で答える。
すると一拍置いて
眉を下げ、自身の頬を軽くペタっと叩き
「よしっ」と小さく呟く。
「まあエミィも大方、同感ね」
エミィとイマはというと2人と比べて達観的に
そして冷静であったのは事実。
常に強火であった中で更に薪を投下され
一層のプレッシャーの様な物も抱えていたのも事実
イマはいつものベンチの位置。
「アタシもです」
その隣にはエミィはカコの代わりに座っていたけれど淡々と、スマホで公式ページを閲覧し生放送で明かされた概要を整理していた。
「今すぐ!応募しよう!」
「うんうん、イマちゃん!オーディションの事も詳しく分かったしさ、もういいんじゃない!」
2人は情熱的にイマに迫り寄る。
「いえ、まだです……」
イマはそんな2人を諸共せずに
淡々とコッペパンを頬張る。
その横にいるエミィは不思議そうに3人の会話を聞いていた。
「ねぇ、ずっと気になっていたのだけど随分とアナタ達、応募に慎重だけれどどうしてかしら?
……確か0次審査と言ったかしら?」
「そう0次審査だよ〜エミィちゃん。
自分磨きとか自分探しとかするんだよ〜」
疑問符を付けた彼女に優しく答えたカコは
両手を後ろに組んで、ユラユラ揺れていた。
「イマが、これやった方が合格率上がるかも〜って言ってたやつだよ!エミィちゃんもやる?」
「そう……まあ生憎、エミィは答えを弁えてるから受けるまでもない事かしらね」
若干のプライドを見せる彼女は
その綺麗な金色のポニーテールを手で払う。
「実際、これは母親からの受け売りの様な物でありましたし……半ばサキの夢への見切りを付けさせる為の提案でもありましたがね」
イマが、その横で語った。
「勢いで直ぐに応募を確定していても、別に構わなかった訳ですが、準備運動無しで戦場に飛び立てば当然、泣きっ面に蜂ですよ」
エミィは頷きながら聞いていたのだが
正面にいる彼女は引っ掛かりに意識を削がれていた
「え?受け売り!?
イマ自分で考えたって言ってなかった?」
イマは淡白に答える。
「ですから“様な物”です。素となる物を母から教えてもらって、それを継ぎ接いで0次審査のステップを導き出したんですよ」
そんな会話を流す様に、イマは切り出した。
「では……満を持したという事で
0次審査の最後の“ステップ3”を発表します」
サキ、カコは驚嘆した。
まだ0次審査が終わっていなかったのかと。
エミィは逆に、次に彼女達は何をするのかと、客観的に3人を眺めて楽しんでいた。
次回更新は来週5月1日 金曜日20時!
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下記のYouTubeチャンネルにて
作中楽曲が実際に聴けます!
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