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第7話 大雨の日、誓った事 後編

そして――喫茶店から

傘も持たずに外へと駆けて行った。



雨に濡れて、風に煽られて

乱れも気にせず、身なりも気にせず。

ただ、“あの場所へ”走る。


泥も跳ねるし、水溜りはズボンも靴も

全てを台無しにするけれど。

別にいい……。


いつもの彼女なら傘を刺さずに大雨の外を

駆け出すことなんて絶対と言っていいほど

あり得ない事である。


――何故、そこまで……彼女を突き動かしたのか。


あの時、見た頃には6件のメッセージが新着としてスマホのロック画面に表示されていた。

最新は3分前で止まっている。


《私ね!ステップ2、分かったんだよね……

いや正確には分かりそうなんだ!》

《そうですか。その感覚を忘れずに、明日どんな事か聞きますね。》

《ううん!なんか、あともう少しなんだ!》

《ですから。明日、聞きますね。》

《いや、今日!》

《は?今日……?何を言ってるんですか?》


コレを見て、カコは察した。


“サキは、あの公園でイマを……

ワタシを待っているんだと”




――――――

“あの公園”

練習トレーニングをする場所でもあり。

自分自身がサキを通して“アイドル”という存在を知る事となったキッカケの公園だ。


「いた……」


案の定、サキは待っていた。

傘も刺さず、自分と同じ様にずぶ濡れになって

ブランコを呑気に漕いでいた。


「あっ!!」


カコの存在に気づいたのか、サキは

ブランコの勢いを落とし、降りる。

そして、笑顔を振りまいた。


「カコ〜!会いたかったよ!待ってたんだよ!」


サキはいつも通りに、自分に接している。

その感覚がどうもカコは気持ちが悪くて


「怒ってないの……嫌ってないの?」


自分自身にも答えが出ている問いを

彼女に投げかけた。

それは答え合わせでもあり、寒さもあったのか

カコは身震いしていた。


「アハハハッ!怒ってないってば〜

嫌ってもないし〜」


そして続けた。


「むしろ、私がどれだけカコに救われていたのか分かったよ!カコの居ない昼も帰り道も、メールも」


雨は強い。

ただ、不確かだった物が明かされていく。


雨は強い。

ただ、確かに大切な存在なのだと互いに感じる。


「それは、まるでアタシが詰まらない人間みたいじゃないですか?」


遅れてやってきたのはイマだ。

手には3本の傘、そして合羽を着て雨風を完全防護。


「うわっ、イマじゃーん!

てかてか、イマもカコの居ない一昨日の帰り道は本当はつまんなかったんでしょ!ねえ?」



カコは胸に暖かいものを感じていた。

彼女は両手に雨を溜めて、顔にパシャッとかける。

もう既に、濡れていた顔に何をしようとも

関係のない事だ。


「私は、やっぱりこの3人じゃないと……

ダメなんだって思った……これはホント!」


サキの濡れた髪が重く頭に垂れていた。

カコは言葉を真剣に考えた。


久しぶりの2人との会話のテンポを忘れている様で

確かな焦りを覚え、静かに目を地面に逸らす。


「違いますね……この3人である必要なんて

 確かに必要であるとは限りません……」


カコはイマの想定外の指摘に、思わず

顔を上げた。


「――って言えば、下を向いた視線も

自然に上がるかなと……」


淡々とした彼女の顔を見るのが

随分と久しぶりに思えた。


「……イマちゃん……ったら」


カコはそのイマのブラックジョークの反動に

やっと自然に笑える事ができた。


「っぶなーい、私も騙される所だった!」


「アナタは対象外です……」


大雨に関わらず3人は笑い合える事ができた。

忽ち、イマが持っていた傘を差し出す。


「しかし……ホントに……

予想した通りに傘も刺さずに此処に

やってくるなんて風邪でも引きたいんですか?」


ありがとうと言わんばかりに、サキが苦笑いし

傘をパッと開いて差した。


「カコもですからね……

 服も台無しじゃないですか」


「あ、ご、ごめんね……2人とも……

本当に……色々と考え込み過ぎちゃったよ……」


カコはドキッとしつつ、傘を差す。


「まあ、戻ってきてよかったですよ」


「ホント、ホント!寂しかったよ〜」


カコは知っていた。ずっと知っていた。

彼女達は自分が思うよりも、自分よりも

自分を大切にしている事を。


不安に思っていた事は全部、本当は

存在し得ないという事を。


「そうそうエミィちゃんも猛省!してたよ!

なんであんな事、言ったんだろって……

もう一回、しっかりと謝りたいとも言ってたし!」


「うん……」

涙なのか雨なのか、最早分からない

その目元から雫が流れて落ちていく。


2人がカコに寄ると

体温の高い、そのイマの手とサキの冷たい手が

両肩にそれぞれ乗せて、小さく摩る。


「さあ今日は、もう早く帰りましょう……

本当に風邪引きますから」


イマが、カサカサと合羽を擦りながら

移動して去ろうとする。


「え、待って待って!ステップ2の事まだだよ!」


カコは、自分とサキのずぶ濡れの重い衣服を

見渡しながら、ニコッと頬を赤らめた。


「それ、本気で言っていたんですか?

カコさんを呼び寄せる口実じゃなく?」


「勿論っ!そんな酷い事しないよ!!」


サキは自信満々に言い放つと

滑り台に駆け足で寄っていく。


「いや、アナタがカコさんをびしょ濡れにしたと言っても過言じゃないですからね……」


サキは

「分かってる、分かってる〜」とだけ言って

滑り台の段を嬉々として登っていく。



――まるで、それはかつて

見ていた景色だ。


「何やってるんです?危ないですよ……サキ」


踊り場に立って折角、イマが貸してくれた傘を

締まって、その場に置くと両手を広げた。


「私は!どうしようもなくアイドルが好き!

だから沢山、真似た!だけど1人じゃ何にも出来なくて不安でどうしようもないし、歌もダンスもまだまだ!!」


カコとイマは、そのサキの滑り台からの

雄叫びの様子をお互い確かめ合う様にして


「だからこそ大好きな2人と、この3人で!

アイドルを目指して歌もダンスもぜーんぶ頑張って!色んな人に笑顔を届けたい……美鴨サキっ!」


交互に見て目で会話する。

それから、ヤレヤレと……その後は笑顔も自然に。


2人はサキに倣って、滑り台を駆け上がり

踊り場に叫んだ。


「アタシは、誰にも負けないアイドル知識と客観的に物事を見れる冷静さを持ってると自負します。

ただ、アタシは表現者としては技術も体力も未熟で不完全です」


サキとイマ、そしてカコは

ギュウギュウになりながら踊り場で

お互いの叫びを聞いては、はにかみ

微笑み合っている。


「だからこそ自分には無い物を持っている

2人に倣って成長し、一期一会、その瞬間の人々を大切にしていきたい……新岡イマ」


遂にイマも傘を差さずに

純粋に真っ直ぐに誓う。


「ワタシは、アイドルが大好きで憧れています……ただ心が弱くて何度も挫折や断念をしてきました!歌だって、ダンスだって体力もまだまだ……」


サキ、イマはカコの声を

大粒に打たれながら見守る。


それぞれステップ2の内容は即興。

そもそも、この様に滑り台の踊り場で宣言するなんてのも美鴨サキの即興だ。


「だからこそ……2人に支えられながらも

ワタシがワタシであるように自然体に、挫折した

この夢を絶対に叶えたい、櫟木カコ!!」


しかし、3人全員。

心の中にずっとステップ2の内容は

浮かんていたと言うのは証明された。


――――今回の叫びの宣言、それにより。

後日それぞれの合意の元、オーディション応募前の

自らを審査する0次審査

ステップ1:自分磨き

ステップ2:自分探し の突破を確定し

『Girls Storys!』の応募は決定した。

次回更新は来週金曜日17日20時!


感想コメント、♡、ブックマーク等々よろしくお願いいたします!


下記のYouTubeチャンネルにて

作中楽曲が実際に聴けます!


https://www.youtube.com/@%E7%A7%8B%E6%B5%A6%E3%83%A6%E3%82%A4

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