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63 暴走!?

 フェリが城壁へ向かった直後、第4波の光線が城壁を直撃した。


 城壁にぽっかりと大穴を開け、瓦礫や人、あらゆる物体が周囲へ飛散し、なおも光線の勢いは止まらず地面を焼いた。


「フェリちー、大丈夫かなー」


「フェリならあれくらいの状況は潜り抜けられる。本陣のムッサー隊長たちは、ここで起きている状況がわからない、向こうの事を考えれば伝令は必要だ」


(フェリ、可哀そうな言い方をしたな。でも、おそらくここにいるよりは安全だ……)


 ジールは眉間にしわをよせ、エスタと光玉を睨みつけた。


「ピオ司祭、アレを止める方法はないんですか」


「起動した本人が意識を失っている今、止めるには魔素のエネルギー切れを待つか、同等の兵器で応戦するかないのじゃ」


「同等の兵器なんてここにはない。エネルギー切れったって、どれだけの時間を待てば……」


(いっそ俺たちも逃げるか、いやしかし、領民を見捨てて逃げるわけにはっ……)


 ずっと応戦する方法を考えていたジールだが、その頭には撤退の2文字が浮かび上がった。すぐにその選択肢を振り払うようにジールは首を振った。


「ジールさん、俺もうジッとしてらんねーよっ。無駄でもなんでも動かなきゃっ!」


 ルジャンは1人飛び出すと、屋敷の急勾配な尖塔へジャンプしながら駆け上がっていった。


 ルジャンは見張り台の最上階へ駆け上がると、その勢いのまま尖塔の端を蹴って、宙に浮くエスタへ向かって大きく飛び跳ねた。


「俺の魔導剣をぉっ! 食らいやがれぇっ!!」


 ルジャンが剣の柄のトリガーを引くと魔石は赤く光り、大きな炎が刀身を包んだ。


 夜の闇を切り裂くように、真っ赤に燃えた一閃がエスタに振り下ろされる。


 キィィンッ! 


 甲高い音を立て、エスタは自身の剣でルジャンの攻撃を受け止めたが、その威力に押され、リフレクトの光の膜が一瞬飛散した。


「くぅっ、落ちるっ」


 落下する寸前、ルジャンは態勢を立て直すべく空中で一回転した。その動きの流れで、エスタの顎へ蹴りを入れた。


 カクン。 首が傾く程度のダメージだったが、エスタはその直撃後、奇声のような雄叫びを上げた。


「悪いジールさん、やっぱ考えなしに特攻しても意味ない。また無駄に暴れるだけだった」


「今回ばかりはその無鉄砲さが実を結んだみたいだぞ。見ろっ、光線が止まった!」


「おそらく、エスタの意識が僅かに残っておるのじゃ。戦意がルジャンへ向き、光玉をコントロールする意識が乱れたのじゃ」


「あれで意識が残ってるんですか?」


「自身の戦闘と光玉、両方をコントロールするには相当な修練が必要。未熟なエスタには不可能なのじゃ」


「有利な上空からわざわざ降りてきたのも、意識が残ってるなら納得できるか。すぐムキになって相手に突っかかってく感じ、あいつらしい」


 エスタは闘技場に降り立つと、射抜くような光の目でルジャンを睨みつけた。


「へへっ、俺にターゲットロックオンってことか。だがこれで街の被害は減らせるな!」


「アーシらでアレの相手してれば、被害は防げるってことかい!」


 ルジャンとセイビアは可能性が見えたことで、拳を強く握りしめた。


「攻撃が届くなら止める算段もつく。ピオ司祭、鎧の破壊でも術式は止められますね」


「……もしくは、兵器の核となっておるエスタの生命を止めるのじゃ」


「どっちにしろあの鎧をぶっ壊せばいいんだな。俺に任せてくれっ」


 ルジャンは剣の束に新しいカートリッジを装填し、闘技場へ降りてきたエスタと対峙した。


 その時だった。エスタの背後に人影が現れ、エスタに向かって石粒を投げつけた。


「ぱ、パパの仇ぃっ!! 死ね死ね死ねぇっ!」


 ベインジャーはヒステリックにわめきながら、何度も石を投げつけた。


 しかしリフレクトではじき返された石粒は、ベインジャーへ飛んでいき、その1つが頭部をかすると、ベインジャーは意識を失いぐったりと倒れた。


「あぶしっ……」


「な、何しに出てきたんだあの女……」


「ルジャンっ、集中っ!」


 あきれ顔のルジャンにセイビアの檄が飛んだ。


「リフレクトも強力だな。鎧の破壊は骨が折れそうだ」


 ジールもベインジャーにさほど興味を示さず、苦い顔を漏らしていたが、ピオには一筋の光が見えていた。


「しかし先ほどのルジャンの攻撃、リフレクトの膜が一瞬割れておったのじゃ」


「ってことは物理攻撃も、強力なら効果はあるってことですねっ!」


 ジールは剣を抜きながら2階の屋根を蹴り飛ばし、その勢いのまま、闘技場に立つエスタへ切りかかった。


 全体重を乗せた一振りは、鈍い金属音を上げてエスタの背中へ直撃するが、リフレクトの効果で、攻撃をしたジールの方が後方に跳ね飛ばされた。


「くっ、腕がしびれる。想定よりリフレクトが強めだな。普通の剣じゃパワー負けするか」


 エスタの目がジールを捉えると、その目の光は一層激しく瞬き、声高に咆哮を上げた。


「クォオオオオオっ!!」


「ジールさん見てスイッチ入っちゃった感じ? 俺を忘れるなよっ!」


 ジールに気を取られたエスタの背中を、ルジャンの重い一撃が捉えると、リフレクトの光の膜が一瞬飛散した。


 そのままエスタは態勢を崩すが、またすぐに光の膜が現れ、瞬時に再構成された。


「かってぇ、鎧まで刃が通らない。ジールさんどうすればいい、バカな俺にわかるように教えてくれっ!」


 エスタの反撃に刀身を交え、ルジャンはつばぜり合いをしながら態勢を膠着させた。


「リフレクトを発動させ続けて、魔素のエネルギー切れを狙う。同時に、リフレクトが切れた瞬間を狙って鎧の破壊も狙え!」


 ジールは刀身を横にし、剣先一点に自身の力を束ねて、槍をつくように突進した。


 鎧の隙間を狙った一撃は、エスタ本体までは届かなかったが、リフレクトの膜を薄く剥がした。


「くぅっ、硬いなっ」


「えっと、つまり?」


「叩きまくれって事っ、打ち続けてればそのうち勝てる!」


(魔導兵器の魔素と、こっちの体力とカートリッジ、どっちがもつかって問題はあるが……)


 ジールは逡巡しながらも、剣を振り続けた。


 ルジャンも呼応するように剣を押し込み、手数の上ではジールとルジャンの剣技が勝っていたが、装備の性能差がエスタの技量を埋め、両者は互角の打ち合いとなっていた。


「アーシも加勢するよっ、マイネも杖で援護してくれっ!」


「まっかせてぇー!」


 セイビアとマイネも闘技場に降り立ったが、ジールは2人に向けて手の平を向けた。


「セイビアとマイネは蔵に行って魔導装備を探してくれっ。そっちも相当貯めこんでる。戦況を有利に進められる武器があるかもしれない」


「あるかもってー、どれが有利なのかわかんないよー」


「蔵だっていくつもある。探している余裕あるのかい」


「屋敷の事なら、そこで寝転んでる女が知ってる。ピオ司祭なら魔導兵器も詳しい、一緒に行ってくれますね」


「任せるのじゃ、年の功を見せつけるとするかのう。さぁセイビア、マイネよ、こっちなのじゃ!」


 ピオは屋根からピョンと飛び降りると、人差し指をクイっと動かし行き先を示した。


「……ルジャン、死ぬなよっ、すぐ戻るからっ!」


「ジルちーもー! 怪我したらフェリちー泣くよー!」


 セイビアはベインジャーを肩に担いで、屋敷の中へ走っていき、マイネもその後を追っていった。


「ルジャン。2人で時間を稼ぐぞ、できるな」


「ジールさんと共闘なんてな! こんな状況なのに、テンション上がってきたぜ!」


 2人は態勢を立て直すべく、一度エスタと距離を取った。


 お互い軽く息が上がっているものの、ルジャンはニカっと笑いジールに拳を向け、ジールはフッと笑って応えた。


「カートリッジは足りてるか」


「あぁ、まだ何発か残ってる」


「ならガントレットのリミッターを解除しろ。やり方はわかるな」


「あぁ、いつもの装填場所の隣に、もう一本入れればいいんだろっ」


「そうだ。これで身体能力は4倍、リフレクトの強度も上がる」


 ジールがガントレットのスロットルに追加のカートリッジを装填させると、身体が強化された反動で、心臓がドクンと大きく鼓動した。


「ふぅ、リフレクトが上がっても、あの光線は食らったら一発でお終いだと思え」


「4倍か、戦闘後の反動がヤバそうだ」


「1週間は立てないかもな。まぁ、生き残れればの話だが」


「ハハ……。笑えない話だ!」


「ホントに笑えなくなってきたっ、光線が来る、避けろっ!」


 エスタの目がギロリと光ると、ジールへめがけて光線が放たれた。


 寸での所でジールたちは避け切るが、元居た闘技場は一瞬で崩壊し、瓦礫と砂煙を辺りにまき散らした後、大きなクレーターを残した。


「光線を撃つ余裕を与えたらダメだな」


「俺、頭だけじゃなくて目も悪いのかな。心なしか、あの光の玉が近づいてきてるような……」


 遥か上空にあった光玉はゆっくりと下降し、その姿を大きくさせた。


 次の瞬間、甲高い破裂音をさせて、数十本の細い光線が地上へ放たれた。


「くぅっ、そんなパターンもあるのかっ。しかも結構精密に狙ってくるなっ」


「でもこれくらいならっ、潜り抜けて一撃入れられるっ!」


 ルジャンは光線の網をかいくぐり、エスタへ徐々に近づくも、エスタはフワリと上昇して、その剣をかわした。


「ってぇっ、飛ぶなっ! ずるいぞっ」


「エスタが頭を使うとはな。意識がほとんどない方が頭が働くなんて皮肉だな」


 ジールはルジャンの反対に回り、大きく跳躍すると、エスタが浮いた瞬間を真上から狙った。


 鈍い金属音をさせるも、大きなダメージにはならず、エスタはジールを睨みつけ、その足元へ光線を放った。


「ルジャンっ、セイビアたちがいる蔵を背にするな! 光線の流れ弾が蔵に行かないように戦えっ」


「わかった! 浮く前に上から叩いてやるっ」


 ルジャンが2階の屋根に飛び移ると、光線がその足場を狙った。


 ルジャンは蔵を視界の端に捉え、光線を避けながら屋根の斜面を滑走し、エスタに飛びかかっていった。

 

「セイビアたちは、俺が守るっ!」



毎日18時更新を予定しています。

よろしければ、お付き合いいただけると幸いです。

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