第242話:鬱陶しき
「さあ、突入さね。」
《フェニックス》
任意の物体を焼き払いながら進む、炎の鳥。
空想上の存在が覇闘級火魔術で発動される。その燃える体の上にエミル・ミグルは乗った。
空高く飛び上がり、上からその場所を見下ろす。目視により、救助するべき相手のいない場所を一瞬で判断する。
《インタディクト》
中にいる人々は何が起こったのか分かっていない様子だ。
それもその筈。壁が全て塵となったのだ。
インタディクト。己の魔力をぶつける魔術.....ディスマジックパワーに近い。
ただし、その技術とは一線を画す。
魔力を、物体の内側へ込め、内部から破壊する。
故に、割れるのではなく、内部から粉々に砕かれる。
また、魔術の発生点が内側のため、魔術を使用されたことにすら気付きにくい。
「っ.....て、敵襲!!!」
混乱した敵のボス.....だろうか。辛うじてそう叫んだ。
だが、敵が動くことは許さない。
《スノーリング》
大多数の兵士。それを氷の輪っかで瞬時に固定する。
壁が壊れてからの一瞬。数秒すらない状況で、兵士とそれ以外を見分ける。
「さてと.....」
そこまでしてから、エミル・ミグルは一息ついた。
「いくぜ.....!!」
と同時にフローハットの面々。そして、ミアも動き始める。
目標は一つ。
「探せ.....!!」
兵士でない姿で、奴隷になりすます者。
外部と連絡を取ろうとする者。
俺たちを恐怖の目ではなく、希望の目ではなく。
「敵意の対象として捉えている者だ。」
エミル・ミグルはそう告げる。上空にいる彼女にそれを知る術はない。角度的に無理なのだ。
「聖なる息吹は空前の灯火。光を求めし勝者の前に全てを見通す眼を開かん。」
《透眼》
移動しながら。半径50メートルでこの敷地.....半径500メートル程だろうか。
それをルアは調べる。
思ったより、多い。
「13人。」
『位置共有します。』
フローハットの面々はそれぞれ、向かう。
ただ、人数が足りない。
仕方ない。
これは、外部からの応援が来ると考えた方がいいだろう。
「例えば.....そうさね。魔術師に強い。剣士。」
声と共に魔法陣が浮かび上がった。
「少し、面倒そうな物も持っているさね。」
漆黒の煙に包まれ、転移してきたそいつを見て鬱陶しそうな目をする。
ただ、一つ言えるのは、そいつは熟練の剣士であること。そして、熟練の魔術師でもあること。
そして、もう一つ。そいつは、恐らく死んでいるのと同じだということ。
あの煙は.....
「死者の力の抽出、及び召喚。」
《バリア》
エミル・ミグルが呟けば、彼女の正面には、それがもう貼られている。
《雷砲》
それは、敵から放たれた水覇闘級魔術を軽々と防いだ。
防ぐと同時に、彼女は地上へ降りた。
「さあ、来るさね。指導してあげようさ。」




