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異世界帰りの俺が魔王軍を殲滅するまで  作者: 霞犬
第1章 ハンター試験
13/21

12,王と仕える者




揺れの少ない快適な車内。この車はかなり大きく、7~8人程度なら余裕で乗れる広さだ。俺たちのチームは現在、対面式の後部座席に座って自己紹介をしている。



「では改めまして、俺の名前は楠木(くすのき) 蓮(れん)、18歳です!異能は炎属性魔法や身体強化が使えます。よろしくお願いします!」



今名乗ったのは同じチームの青年だ。



「わ、私の名前は坂田(さかた) 綾音(あやね)です…。同じく18歳、です。異能は、えっと、回復魔法が得意です!よ、よろしくお願いしましゅ!」



こちらも同じく、名を坂田と言うらしい。



「楠木さんに坂田さん、こちらこそよろしくお願いします。俺は八嶋透、26歳です。……異能は身体強化系です。」



そして最後、俺も2人に自己紹介をする。異能に関してだが、これは隠す人も一定数いるとのことで絶対ではないため、無難な身体強化系と答えておくことにした。ちなみに異能を隠す理由としては主に「自身の奥の手となる能力を公にしたくない」というものや、「持っている異能の数や力などで見下されたり、自身の評価を左右されたくない」というものがあるらしい。



「八嶋さんですね…覚えました!」



そう言ってはにかむ楠木さんは若々しいオーラを放っている。彼はとても元気で誠実な青年で、先程の出来事からもわかるように正義感が強いようだ。



「…覚えまし…た」



対して坂田さんの方はというと、楠木さんとは対照的に引っ込み思案なようだ。自己紹介の際に噛んでしまったのが恥ずかしかったのだろう、顔を真っ赤にして下を向いている。


俺は2人に気になっていたことを聞いてみることにした。



「そういえば2人は知り合いなんですか?」


「あっはい!実は俺たち幼馴染なんです…!」


「ああ、なるほど…」



幼馴染…アニメや漫画などではよく聞く設定であるが、実際にそういった関係性の人間を見るのは初めてだ。18歳の男女で未だに仲がいいというのはかなり珍しいのではないだろうか。



(さて…)



説明が遅れたが…俺たち受験生は現在、それぞれのチームに分かれて試験会場へと移動している。協会の人が車を運転してくれていて、道中の車内で自己紹介や作戦会議などを済ませるように指示されたのだ。


1チームの人数は3人、計10チームだ。



「じゃあ2人とも、早速作戦決めましょう」



自己紹介も終わったので作戦会議を始めることにする。まず初めにしなければいけないのは…



「まずは魔道具の確認ですね…!」



そう言って楠木さんは試験官…望月さんからチームに配られた魔道具を取り出す。


大きなカバンから取り出した魔道具は3つあった。1つは赤色の王冠の形をしたもので、あとの2つは刀身が青色に輝く剣だ。



「えっと、説明書きがあるので読みますね…。」



付属していた1枚の紙を手に取り、楠木さんが読み上げる。



「この魔道具は3つで1つの効果を発揮するものとなります。故にこれら全てを含めて1つの魔道具とします。また、『魔道具を破壊される』というのは『効果を発揮できなくなる』とは違う意味ですので、これら3つが全て壊された時に魔道具の破壊を認めます」


(…3つで1つ)


「では、この魔道具についてです。この魔道具は王冠を付けている人に魔力を供給する効果があります。王冠を付けた人…すなわち『王』がいる場合のみ、この剣は触れたものから魔力を吸収できます。そして吸収された魔力は王へと送られます。自分の保有する魔力量だけでは使えない大規模な異能を駆使し、勝利を勝ち取ってください…とのことです」


「なるほど。つまり基本的な戦い方としては、前衛2人に剣を持たせて後衛に王を配置し、タイミングを見て強力な魔法などを放つ…といったところでしょうか」


「はい、八嶋さんの言う通りだと思います」


「…人選がかなり大事ですね」



この魔道具を使うとすると、前衛の2人は剣を用いた戦闘を安定して行わなくてはならず、後衛の王は異能や魔法に特化していなければならない。と、そうなると…


俺と楠木さんは坂田さんを見つめる。



「へ…な、ななな何っ!」


「綾音、さっきから黙ったままだけど大丈夫か?」


「ちょ…ちょっとまだ緊張しちゃってて。その、現実感がようやく湧いてきたというか…」


「なるほど…、でもそんなに考えすぎなくていいと思うぞ。やることは単純なんだからパパっと勝って終わろうぜ」


「蓮くん…ありがとう」


「ってことで綾音、1つ頼みたいんだけどいいか?」


「う、うん…何?」


「俺たちの王になって欲しいんだ」


「へっ!?」



まさか自分に頼まれるとは思っていなかったのだろう、坂田さんは驚いて変な声を出す。



「わ、私が…?私に王なんてできるかな…」


「少なくとも、綾音がこのチームの中で最も王に適してると思う」


「…う、うぅ…。で、でもそうだよね…私前に出て戦うとかできないし…」


「確かにそれもあるよ。けど消去法だけで綾音に頼んでるわけじゃないんだ。自分では気付いてないかもしれないけど、綾音の使う魔法はかなりレベルが高い。魔力量が多くないからそれを実感できてないだけで、この魔道具があればかなり化けると思うんだ」


「そ、そうかな…?そんなに…?」


「ああ、綾音に王を任せたいんだ。お願いできるか?」


「………うん、わかった。それなら私、足引っ張らないように頑張るね…!」


「ありがとう、綾音」



ということで、俺たちの王は坂田さんに決定した。



「や、八嶋さん…も、私なんかが王で大丈夫ですか?」


「坂田さんな(・)ん(・)か(・)じゃないですよ。坂田さんだからこそお願いしたいです。先程あの不良にかけた『付与』魔法は持続時間がかなり長く、実際望月さんが来てもしばらく解ける様子はありませんでした。普通1~2分も持てば十分な魔法ですので、坂田さんの魔法のレベルはかなり高いと俺も思います」


「あ、あぁあ…ありがとうございます…」



褒められることに慣れていないのか、再び顔を真っ赤にして俯いてしまった。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーー




その後は肝心な作戦について話し合いをし、しばらくして車は会場に到着した。


俺たちは魔道具をカバンにしまうと、それぞれの荷物を持って車を降りる。


他のチームも続々と到着し、全員が揃う頃に望月さんが姿を現した。



「はい皆さん、長時間の移動お疲れ様です。チームでの話し合いは済んだでしょうか。ここが本日試験を行う会場になります」



そう話す望月さんの後ろには、東京ドーム数個分かと思われるほどのドーム状の建造物があった。



「では早速中に入りましょう」



望月さんの後に続き、そのドームへと入っていく。

ドームに入ってすぐの場所には開けたスペースがあり、そこから繋がる更衣室に通された俺たちはそれぞれ支給されたジャージに着替えるのであった。ジャージはチーム毎に色が違うようで、俺たち7番チームは黒色である。



「…八嶋さん」


「…どうしました?」


「き、筋肉…すごいですね…!?」



隣で着替えている楠木さんに話しかけられる。



「ありがとうございます」


「やっぱり毎日鍛えてるんですか?」


「…そんな感じです」


「俺も頑張らなきゃなあ…筋量が全然違う…」



トホホ…という表情でそう話す彼の体はというと、別にそれほど悪いわけでもなかった。一般人より確実に筋肉がついているし、無駄な脂肪もしっかり削ぎ落とされている。



「楠木さんこそいい体してますね。普段から食事や運動を意識している感じですか?」


「あ、ありがとうございます…!はい…でも頑張ってるんですけど、ここから中々筋肉増えなくて…」


「…そうなんですね」



と、そんな雑談をして着替え終わった俺と楠木さんは先程の入口スペースまで戻る。既に坂田さんは戻っていて、ジャージ姿の俺たちはお互いを見合った。



「…何だかこうして見ると、チームの団結力が生まれた気がしますね!」


「そ、そうだね!が、頑張れ、私…皆のために…!」


「楠木さんに坂田さん、改めてよろしくお願いします」



いよいよ始まる最終試験。


数分後には他のチームも集まり、俺たちは会場内へと足を踏み入れた。


…会場内には自然があった。森林や草原、川や海などがエリア毎に分かれていて、それぞれ人工的に作られているのがわかる。建物に入ったのに外に出たような不思議な感覚だ。


各チームは開始時に離れた位置からスタートするとのことで、俺たちもその場所まで歩みを進める。7番チームのスタート位置は森林エリアであった。俺たちはそこに着くと、先程カバンにしまった魔道具を取り出しそれぞれ装備する。



5…



4…



3…



各チームがどのような戦いを見せるのか、それぞれの思惑が交差する激しい90分間…



2…



各々が真剣な面持ちで迎える…



1…




ピーーーー!




ーーー最終試験、開始。




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