10,試験当日
第1章です。お願いいたします。
ーーー果てしなく続く曇天に、そこら中に転がる魔の者の死体。俺はその手に禍々しい剣を握っていた。
目の前には一際大きな肉塊がある。まだ斬られた直後なのだろう、そのピンクの断面からは勢いよく血が吹き出している。
『繧「繧帙j繧ャ縺ィ縺�√h繧ャ繝�◆』
この肉塊のどこに発声器官があるのか、それは俺に言葉を放った。これは異世界の言語だ。
(…)
そしてふと俺は、自身も体中から血を垂れ流していることに気づいた。浴びた返り血と自身の血液が混ざり、それが腕などを伝ってぽたぽた落ちる様に言いがたい不快感を覚える。
(…)
知っている。俺はこれを知っている。
『ごめん』
口を開く。日本語。一体何に謝っているのか。俺の目はどこも見ていなかった。ただ虚空を見つめてうわ言のように謝罪の言葉を述べる。
『名前…俺の、名前は…』
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ーーーーーーー
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ジリリリリ!!!カチッ…
「…朝か」
時刻は午前5時。まだ外は薄暗く、昇り始めた太陽が徐々に街を照らしていく。なんだか夢を見ていたような気がする。
俺は起きてすぐに洗面台へ向かうと、口をゆすいで顔を洗った。
ふと、鏡の中の自分と目が合う。
(…相変わらず暗い顔だ)
…そして朝ごはん。前日に予約炊飯しておいた白米に卵を割り入れて醤油をかける。そこに味噌汁と焼き鮭を添えて完成だ。
「いただきます」
食卓は1人だ。母さんは普通の人よりも睡眠時間が長いから、昼頃にならないと起きない。俺は黙々と食事をしながら今日のことを考える。
…今日はハンター試験当日か。
あの事件から2ヶ月程が経過し、今は4月となった。毎年4月と10月に行われるハンター試験。一般枠の人は1次試験と2次試験、そして最終試験という具合に進んでいくのだが、推薦枠の俺などは最終試験からの参加となっている。
1次試験の内容は基礎知識の筆記問題と面接。2次試験の内容は体力テストだと酒井さんから聞いた。しかし最終試験の内容だけは毎年違い、秘密なのだそうだ。
食事を終えた俺は歯を磨き、身支度を整える。
そしてリュックに受験票や本人確認書類、筆記用具などの荷物が入っていることを確認すると、それを背負って玄関の扉を開けた。
「…行ってきます」
誰もいなくても、返事がなくても必ず言う言葉。これは俺の決まりごとである。俺はまたここに帰ってくる、という意思表示だ。
(…行こう)
俺は酒井さんの指示通り、魔殺協会本部へと向かうのだった。
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久しぶりに見た青色のビル…魔殺協会本部に着いた。家からここまでは交通機関を使って2時間ほどだ。俺は出入口の自動ドアに近づくと、あらかじめ酒井さんから貰っていたキーカードで中に入る。
「確か受付は…」
俺は書類を今一度確認して受付へと向かう。しかし改めて思うがここは本当に広い。入口から受付までしばらく歩かなければならない施設などそうないだろう。魔人の侵入を防ぐために扉が三重になっているのに加えて、全館にセンサーの感知システムを導入している。他にも様々な襲撃対策がされていて、見ているだけで面白かったりする。
(ああそうだ、ここだ)
以前例の事件が起こった際に1度来ているので、あまり迷うこともなく受付まで着くことが出来た。
「すみません。本日最終試験を受けに来た八嶋透ですが、受付よろしいですか」
「八嶋透さんですね、お待ちしておりました!え〜っと、そしたらまずは…」
そして受付で受験票などの確認を済ませた後、番号札を貰い説明を受けた俺はとある部屋まで通された。
室内には既に十数人ほどの人が見える。
部屋の広さは学校の教室を一回り大きくした程度で、室内には10個の丸机、その机に各3つずつ椅子が設置されていた。机には立て札があり、それぞれ1~10の数字が書かれている。
俺が貰った番号札は7。聞いた説明によると同じ数字の机に集まれとのことだ。
(ああ、やっぱりグループになる感じなのか)
カタッ…
「よろしくお願いします」
俺は7の机に行くと、既に座っていた他の2人に声をかける。同じグループの人たちだろう。
「よろしくお願いします…!」
こちらは青年で、歳は高校生くらいに見える。黒紫色の髪の毛を少し長めに切りそろえていて、体は細いがしっかりと鍛えられている印象だ。
「よ、よろしくです…」
こちらは少女で、同じく高校生くらい。白髪のロングヘアーに、クマのキャラクターのピン留めを付けている。別に見ようと思ったわけではないが、彼女の大きく育った胸が視界に入る。
「…」
「…」
「…」
会話なんて続くわけもなく、すぐに無言になる。試験前のこの静かな空間…昔の俺は苦手だった気がするなとふと思った。
周りを見渡し、俺は他の受験生の様子を伺う。年齢的にはやはり10代が多い印象か、1人だけ20代後半である状況が少し気まずい。
ガチャ…
そんなことを考えていると、俺の後に続いて人が入ってきた。
根元が黒くなった金髪…いわゆるプリンと呼ばれる髪をロン毛にしている手ぶらの男。彼は室内を見渡すと大きくため息をついた。
「あーだる」
(ああ、そういうタイプか)
彼はその体格や見た目、言動からして不良なのだろうと思う。
「何これ、グループになんの?マジでだるいんだけどー!」
結構な声量で話す彼に対し、一部の人がビクッと反応する。それだけなら良かったが、なんとその中の1人が彼に対し舌打ちをしてしまった。
「は?お前何今の?」
「…いえ、別に」
「立てよ」
「は、はぁ?」
「立てよ早くよぉ!!!オラァ!!!」
そう言って彼はその人の胸ぐらを掴む。流石に声が大きすぎるのではないか。他の受験生もほとんどが彼を見ている。彼は本当にこれまでの試験を合格してきたのか。面接なんて受かるわけ…
(あ、推薦枠…)
それなら納得か。推薦枠であるなら試験はこれが初となるし、推薦されたという優越感からこういった言動をしてしまっているのだろう。とはいえあんな問題行動を起こしたとなると、試験前に不合格になるのではないだろうか。
と、その時だった。
「やめなさい」
1人の少女が彼に対し苦言を呈した。
美しく艶のある黒髪に、恐ろしいほど整った人形のような顔。そしてモデルのようなメリハリのあるスタイルの彼女は、彼に対し冷たい目線を向ける。
「あ?なにお前、文句あるの?てか舌打ちしたやつが悪くね?」
「確かに舌打ちは良くない行為だと思うわ。でもそれ以上に貴方の行いはもっと良くない」
「キモ、私正義感強いんですアピ?ウケるんだけどw」
「私はただ客観的事実を述べているだけよ。そこに私自身の主観的な感情などは関係していないわ。誰がどう見ても貴方の方が悪い、それが事実。」
「あーあーあー、わかったわかった、お前ボコされたい感じね。じゃあお望み通り…!」
そして彼が少女に腕を伸ばした時………その腕を掴んだ者がいた。
「人に手を上げるなんて…何考えてるんだお前…!」
俺と同じグループの青年であった。
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