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三蛇華姫

 部屋に案内してくれるメイドさんについていくと途中の階層から魔石を利用したエレベーターみたいなもので城の真ん中あたりの高さまで上がってきた。

 リアさんはオレたちに3部屋用意してくれてそれぞれにメイドさんがついてくれる。オレのところにはアドレアさんというエルフの方がついてくれている。


「ひ、ヒーロ様、ミコ様、こ、こちらの部屋になります」


 アドレアさんはミコを見てかなりビビってしまっているようだ。


「ありがとうございます。あの、ミコは別に何もしませんので安心してくださいね」

「い、いえ。……あ、あの私、男性とあまり、お話したことがなくて、緊張しておりまして……」


 オレかい! オレが原因だったのか……ちょっと恥ずかしい。


「そうなんですね。しばらくここにはいると思うので、無理はしないでくださいね」

「は、はい! ありがとうございます!」


 アドレアさんとは部屋の入口で別れ、オレたちは部屋に入った。


「おぉ、ひろっ! ――――風呂もトイレもあるからこの部屋だけですべて済むな」

『この姿のままでも十分動けますね』


 ウィネとヘルミーも同じフロアの部屋だが、おそらくこのフロアはお客さん専用のフロアだろう。部屋の大きさはさきほどリアさんたちと話をしていたぐらいの大きさである。

 オレはソファに座ってゆっくりしていると、ウィネがノックもせず部屋に入ってきた。


「ヒーロ、この広さなら分ける必要がないと思って一緒にしてもらったぞ」

『マスターの許可なく何を勝手に決めてるんですか!』

「ふん、すぐ隣におるのに離れ離れになってる意味がわからんだろ」

『今日は私が独り占めするんですよ』

「なんだ? この前一緒にしたときに我に怖気づいたのか」

『何を言ってるんですか、先に倒れていたのはあなたでしょ』


 お前たちはこんなところまできて何の話で盛り上がってるんだ。


「はいはい、もうウィネも一緒でいいから。メイドさんには伝えたんだろ」

「うむ。我のほうのメイドは必要ないと伝えたぞ」


 さて、それはそうと何をして過ごすか。ヘルミーは鍛えないとダメだが今日はさすがにゆっくりさせるとして、とりあえずやることないしウロウロするか。

 そんなことを考えているとノックする音がしたが、気配からヘルミーということはわかったので部屋に入ってもらった。


「ヘルミーはどう、こういう部屋は?」

「わたくしでも広いですわ。こんな部屋貴族でもそうそうありませんわ」


 さすがにスケールが違うよな。


「とりあえずまだ昼前だしこの城をウロウロするか」


 ということで1階部分からウロウロするために、オレたちは窓から飛び降りようとしている。途中まではエレベーターがあるのでそれでいいがそこからは階段で降りるため飛び降りたほうが早い。


「あわわわ、ひ、ヒーロさん。ダメですわ、ダメですわ、ダメでぇぇぇいぃぃあぁぁぁ」


 オレはヘルミーをお姫様抱っこしてそのまま飛び降りた。そして徐々に落ちるスピードを落とし地面に着く。


「はぁ、はぁ……全然慣れませんわ」

「そろそろヘルミーも単独でできるようになってもらわないとな」

「む、無理ですわ。さすがにまだ無理ですわ」


 ヘルミーを下ろしてあたりを見渡しているとシーさんが同じく上から降りてきた。


「ん? どうかされました?」

「いえ、悲鳴が聞こえて見てみると飛び降りておられたので」

「すいません、1階に降りるのにショートカットしたかったので」

「はは、大丈夫です。そんなことをするお客様は今までおられませんでしたが」


 でしょうね。でも、トレーニングとかでない限り階段とかを降りるのは面倒だからな。


「ところで、どこかに行かれるのですか?」

「いえ、暇だったので城の中をウロウロしようかなと」

「もしよければ我々の訓練にお付き合いいただくとかは可能ですか?」

「いいですよ」


 むしろそのほうが助かる。体を動かしてるほうが時間が過ぎるのも早いからね。

 さっそくオレたちはシーさんに案内され屋外にある訓練場に来た。そこは運動場何個分かの広さをしており、いろんな方が訓練をしている。


「今日は良い天気ですので、我々の部下も訓練をしております」

「部下さんは何人ぐらいいるんですか?」

「この城で外に出せる戦力に限ると、ロリアデラ様の下に我々三蛇華姫の3人がおり、その下にそれぞれ100人ぐらいがおります」


 多いのか少ないのかいまいちわからない。国の大きさを考えるとこの城だけにいるのが全てというわけでもないんだろうな。

 そしてシーさんについていくとそこには三蛇華姫の2人がいた。


「ヒーロさんたちです」

「さっそくヒーロさんたちにお付き合いしていただくことになりました」

「ところでどんなトレーニングをするんですか?」

「まずは実戦形式でもよろしいですか?」

「いいですよ」


 三蛇華姫との実戦を行うことになったが、まず最初にミコとラーさんが戦う運びになった。

 ヘルミーにはこれから行われる実戦を見ながら基礎を鍛えるように伝えてあり、絶賛オレの隣でがんばっている。


「死ぬです、絶対死ぬです!」

「ミコ、死なない程度に手加減してあげて」

『承知しました』

「えっ!? 死なない程度ってなんですか!? そんなギリギリ責めるですか!?」


 戦闘が開始するとすぐにラーさんが動けなくなった。ミコが瞬時にラーさんの背後に周り尻尾部分を踏みつけて動けなくしたためだった。


「えっ!? 動けないです! 尻尾がびくともしないです!」


 するとミコが口を開き尻尾を噛みながら持ち上げた。


「いやぁぁ! 痛いです! ダメです! 動かせないです!」


 そしてミコは顔を上下左右に振りラーさんをブンブンしだす。


「いぃやぁぁ! 死ぬです! 死ぬです!」


 ラーさん、ミコを相手に選んでごめん。ただ、ラーさんと出会ってから一度も側近らしいところ見てないけどこの人本当に大丈夫なのかな……。


「ミコ、その辺でやめてあげて」

『承知しました』


 ミコはブンブンしたままラーさんの尻尾を放したためにラーさんが20mぐらい先まで飛んでいってしまった。


「――ぴぎゃぁ…………」


 受け身も取らず顔からズサッーって行ったけど大丈夫かな。


「シーさん、すいません。トレーニングにもならなくて」

「はは、いえいえ。初手に反応できなかったラーが悪いわけなので大丈夫ですよ。――――ラー! いつまで寝てるの、さっさと戻ってきなさい!」


 シーさんがそういうと、ラーさんが起き上がり、顔や上半身がボロボロ、ミコの牙のせいで尻尾に穴があいた状態で泣きながら戻ってきた。


「うぅ、うぇぇん、死ぬかと思ったです!」


 オレは申し訳なくなってラーさんに生活魔術の治癒を使うことにした。


「うぅ、ありがとうです」

「ヒーロさん、それって生活魔術ですよね?」

「そうですよ」

「すごい威力をしてますね」


 やっぱりそうなんだ。リアさんならおなじぐらいの威力だせるような気がするけど。


「次は我が相手してやろう」

「では、私が出ます」


 あれっ、クーさんが出ると思ったけど、シーさんなのか。


「少しは楽しませてみよ」

「ロリアデラ様を呼び捨てにすることを私はまだ認めていませんからね」

「しつこい女は嫌われるぞ」

「ッ!?」


 やっぱり自分の王が呼び捨てにされるのはさすがに気に食わないか。


 2人が向かい合うとすぐにウィネとシーさんの戦闘が始まったが、ウィネはその場で最小限の動きでシーさんの攻撃を避けることだけをしている。シーさんの攻撃は打撃が中心で、上半身と尻尾をうまく組み合わせた攻撃に見える。


「シーさんの能力って格闘術なんですか?」

「私たちが使うのは蛇型格闘術です、通常の格闘術とは少し違うです」


 下半身が尻尾だから通常とは異なるのかな。尻尾の使い方が鞭のように使うときもあれば槍のように使うときもあり、初めて見る種族の戦い方なので見ていて楽しい。


「なぜ攻撃してこないのですか?」

「これは訓練なのだろう、我が攻撃すれば終わってしまうぞ」

「舐めないでください!」


 ウィネの言葉を聞いたシーさんが攻撃パターンを変え、打撃に加えて衝撃波を追加してきた。ただ、それでもウィネはその攻撃を避けたり弾いたりするだけだった。

 しばらくそのような攻防が続いていると、ウィネがシーさんに話し始めた。


「シーはリアの一番の側近なのだろ」

「それがどうかしたのですか!」

「リアに比べて実力が全然足りないのではないか」

「ッ!?」

「その様子だと自分でも気づいておるのだろ」

「うるさいっ!」


 さらにシーさんは攻撃の勢いを強めたが、やはりウィネは避けることだけをしており話を続ける。


「我は愛する男の一番の側近になりたかった」

「!?」

「しかし、すでに我よりも強い者がそこにはいた。しかも、我がどれだけがんばっても届かない所に」


 ウィネはミコのことを言っているのだろう。

 すると、ここでウィネが一瞬で間合いを詰めシーさんのお腹を殴りシーさんを倒した。


「くっ……ごほっ……」

「我はお前が羨ましいぞ。その程度で一番の側近で居られることが」


 戦いを終えたウィネが物思いにふけた顔をして戻ってくる。


『ウィネは一生私の次です』

「おぉい、今の空気的にヒーロが慰めてくれる感じだっただろ!」

『揺るがない事実なので仕方ありません』

「お前はもう少し空気を読んでくれ!」


 ははっ、このコンビはやっぱりいいな。


「オレはウィネもミコと同じぐらい大事に思ってるから」

「ヒーロ……『マスター!』――おいっ! キスの流れを邪魔するな!」


 ウィネがオレに近づきキスをしようとしたところでミコが間に入って顔をこすりつけてきた。


「はは、まぁまぁ。いまはトレーニング中だから」

「ふん、仕方ない。あとでいっぱいしてもらうからな」

「あ、あの……わ、わたくし、蚊帳の外なんですが……」

「ヘルミーもそんなことないよ。ほらっ、いっぱい圧かけとくから」

「ふぁっ!?」


 倒れていたシーさんがしばらくして起き上がり自分で治癒を使いこちらに歩いてきた。


「ウィネさん、失礼しました。私も自分の位置に驕って訓練が不足していたのかもしれません」

「気づけたから良いのではないか」

「はは、そうですね。ただ、ロリアデラ様のことを呼び捨てにするのはまだ認めていませんからね」


 シーさんは口ではそう言っているが、ウィネのことをそこまで憎んでいる感じはしない。


『ウィネには私が気づかせましたからね』

「あれはただ殺しに来ていただけだろ!」


 そして、次の実戦は自ずと最後に残ったオレとクーさんになった。


「ヒーロさぁん、尻尾触り放題ですよぉ」


 いや見ていただけで触りたいとは言ってないんですけどね。


「クーさん、好きに来ていただいてかまいませんよ」

「それでは行きますねぇ」


 クーさんはシーさんと同じような攻撃を仕掛けてきたがオレは避けずに打撃が当たる前にカードを出し防ぐ。


「それはなんですかぁ?」

「これはオレの気力ですよ」

「へぇ、そんな使い方ができるのですねぇ」


 ちょっとアースターの力も入ってるけど、素でも似たようなことはできる。

 ただ、さきほどからクーさんに攻撃され続けているが、尻尾で攻撃をされると周りに毒が撒かれているっぽい。


「これは毒ですか?」

「そうですぅ。今回は麻痺毒にしましたぁ」

「え? 毒の種類を選べるんですか?」

「はいぃ、私のは麻痺、盲目、衰弱、沈黙、睡眠から選べますぅ」


 へぇ、5種類から選べるのってすごいな。

 

「あのぉ、なぜさきほどから毒が効かないのですかぁ」

「周りの毒はもちろんですが、自分の体の中の毒であれば消せるからです」


 以前毒に侵されたときはアースターの短剣を使って対処したが、今は自分の体の中であれば短剣を使わずに異物を消滅することができる。


「うぅ、これだとどうしようもないですぅ」


 オレはせっかくなので尻尾からどういう風に毒が撒かれているのが確認するために攻撃をしてきた尻尾を掴んだ。


「はうぅ……あぁ……」


 色は毒々しいけど、普通の蛇と変わらないような気がする。クーさんの能力は選択した毒を体から発生させるという能力なのかな。


「あぁ……、ヒーロさん、そこはちょっとぉ、はうぅ……」

「えっ?」 

「ヒーロさんが掴んでいるところぉ、私の弱いところですぅ」


 オレは先端より少し上のほうを掴んでいたが、クーさんの反応を見て慌てて手を放す。


「す、すいません」

「ふぅ…………あのぉ、もしお時間がありましたら個別にお願いしてもよろしいですかぁ」


 えっ、トレーニングの話だよね。なんかクーさんの表情がちょっと艶のある感じがするんですが。


「クー! 何を言ってるんですか、ダメですよ!」

「うぅ、ヒーロさんなら何も気にせず触れあえることができるのにぃ」


 やっぱりそっちの話だった。


「ヒーロよ、少し戦っただけで女を落とすとはさすがだな」

『マスター、さすがです』


 ただ毒に効かないってだけな気もするけど。クーさんのことはよくわからないのでとりあえずそっとしておこう。


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